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私の世界にようこそ  作者: てけと
番外編『異世界旅行と罪滅ぼし』
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シンの異世界訪問 中編

お久しぶりです。更新が遅く、しかも拙い小説ですが、ちゃんと最後まで書いて行きたいと思っております。よろしくお願いします。

 俺の通った穴はすぐに消え、裏路地にポツンと一人立ち尽くす。時間は朝早いのか、まだ周辺は薄暗い。肌寒くはないので季節は夏なのか?


「流石に菓子折りは持たないとかな・・・まずツバサの家に行って・・・それからマオご両親にご挨拶ってとこか・・・」


 懐かしい世界に特に何の感情も抱くことなく、菓子折りを買いにフラフラと町に繰り出した。





 


 

「・・・ふぅ・・・なんかいろいろ目移りして買い込み過ぎたか・・・金があれば何でも買えるなんて、いい世界だよなぁ・・・」


 ツバサの実家まで約3時間くらいかかった。ここからマオの実家までは6時間くらいはかかるのか。 

 わざわざこの世界まで来てやりたいことは・・・この世界で死んだマオとツバサ。そのご家族に別の世界で生きてると知らせるため。

 そして・・・その姿を一目見せて、自分たちの子供にへのメッセージをもらおうと思っている。

 

 生きるきっかけをもらった俺からのせめてものお返しのつもりで・・・。

 

「こんなに荷物を持って訪問するのも・・・まあいっか」


 具現化した大きなキャリーバックを片手に、ツバサの実家の前に立ち尽くす。

 というか、こっちの世界で買ったものは持って帰れないからこんなに買っても意味ないんだけどなぁ・・・。



 もう100万ほど散財したな・・・。

 思ったより俺ははしゃいでるのかもな・・・。



 特に何も考えず三日月家のチャイムを鳴らす。 


「はーい。どちら様ですか?」

「俺・・・いや。僕の名前は御門慎二と言います。三日月翼君のお宅でよろしかったでしょうか?」

「・・・ええ。翼とはどういう関係で?」

「友人ですね」

「その翼の御友人さんが、今更どのようなご用件で?」

「それは・・・」


 実は翼は生きてます。と喋ろうとした瞬間、空からカッターナイフが俺めがけて飛んでくる。


「!?」


 咄嗟に柄の部分をキャッチする。あと数センチで目がえぐれてたぞ・・・。風も強くないのになぜ飛んでくる?


「・・・兄を失って妹の未空が荒れてしまって・・・あまり翼の名前を出さないほうがいいわ。死にたくなかったらね」


 今更命なんて惜しいわけじゃない。今俺がやろうとしていることは、俺が命を張るにふさわしい事だ。ならば・・・。


「実は翼君は生きてるんです」


 自分の眼前に物干しざおが刺さる。ビィーンと音を立てて。


「彼はこの世界で死にました」


 後ろから後頭部に向かって飛んでくる包丁をしゃがんで躱す。


「しかしへんてこな女神に魂を拾われ、この世界とは別の世界で生きてるんです」


 首に向かって回りながら飛んでくる鉈を蹴りで弾き飛ばす。


「それを伝える為に、俺はこの世界に帰ってきました」


 俺の周りにだけ何故か酸性雨が降り出す。服が少し溶ける。


「その証拠に・・・」


 鉄製の大きな傘を具現化する。それを地面に刺し、酸性雨をしのぐ。


「俺も少しだけこの世界の物ではない力を持ってます」


 どこから飛んできたのか、4丁の猟銃が偶然にも俺の方に銃口を向けて周りに落ちる。


 ガァン!ガァガァガァン!


「・・・俺の話をちゃんと聞いてくれますか?」


 撃たれる寸前に、銃口にコルクを具現化してつめたため、銃身がぶっ壊れている。


「・・・わかった・・・お兄ちゃんのこと聞かせて」


 いつの間にかインターフォンの向こう側の相手が変わっていた。この声の主が妹の未空なのだろうか?


 さっきまで降っていた雨はやみ、淀んでいた空はいつしか快晴になっていた。

 そして、三日月家の玄関が開き、ツバサの母親らしき人が出迎えてくれる。


「どうぞ。入って慎二君」

「お邪魔します。あっ・・これよかったらどうぞ」


 買っておいた超高級クッキーを渡す。普通のクッキーに見えるけど・・・これ一枚1500円もするんだぜ・・・。100枚入りで15万円だ。

 その分かなりうまかったけどな。


「あらあら。ありがとう。それじゃあこれでも食べながらお話を聞こうかしら」

「それでしたらいい紅茶の葉が手に入ったので、僕が紅茶の支度をしますよ」

「それじゃあお願いね~」


 台所をお借りし、使う道具はすべて具現化で作る。もちろんティーカップもだ。

 お湯を沸かし、お湯をポットに注いで温める。


「あんた・・何してんの?」


 ポットを温めたらお湯を捨て、茶葉を入れる。


「あの?聞こえてます?」


 茶葉を入れたらすぐお湯を入れる。そしてポットに蓋をして蒸らす。


「あれ?私は幻でも見てるの?おーい!」

「なんだよ・・ツバサ妹」

「聞こえてるなら返事くらいしてよね!」

「茶葉とお湯の比率が肝なんだよ。大事な時に話しかけるなよ」

「・・・あんたここに紅茶を入れに来たの?」

「せっかくなら出来るだけおいしくしたいだろ?何事においても、自分の出来る限りを尽くさないと、後悔するぞ?」


 3分ほど蒸したら、スプーンですこし混ぜ、茶漉しで茶殻をこしながらティーカップに入れていく。


「よし。リビングに行くぞ。そこでお前の聞きたい事は全部答えてやる」

「・・・わかった」



 リビングに入ると、既にクッキーをつまみ食いどころか、ハムスターのように頬を膨らませてもしゃもしゃ食べているツバサ母が座っていた。


「こへ。おひしいわへ~!」

「お気に召したようで何よりです。これ置いておきますね」


 ツバサ母の前に紅茶の入ったティーカップを置く。砂糖とミルクも机の上に置いておく。


「ママばっかりズルイ!・・・ってこれ本当においしいわね・・・」

「好きなだけ食べてくれ。俺はもう味見したからな。落ち着いたら話を始めるか・・・」


 値段が高けりゃうまい。というわけではないとは思うが・・・このクッキーは確かにそれだけの価値がある。そう思ったから買ってきたわけだが・・・。

 とにかく俺はクッキーが全て平らげられるまで、一人紅茶を啜るように飲むことにした。









「ふぅ~。あら?この紅茶もいい香りでおいしいわね~」

「だね~・・・。」

「そろそろ本題に入ってもいいですか?」


 ツバサ母はミルクと砂糖を少し入れ、ツバサ妹は砂糖だけ入れて紅茶を飲みだす。

 

「ええ。話してちょうだい。翼が生きてるとかそんな話だったかしら?」

「・・・」


 無言で刺すような目線で俺を見るツバサ妹。さっき幸せそうにクッキー頬張ってたくせに・・・・。


「簡単にいうと・・・ツバサはこの世界では死にました。きっと彼の死体も見たでしょうし、それを火葬なりなんなりしたはずです。はっきり言います。もう二度と会えることはありません。その体に触れる事すらできないでしょう」


 グッとツバサ妹の体に力が入る。


「でも・・ひょんなことから彼は別の世界で生き返りました。そして今、幸せに生きています。その証拠も今回持って来ています」


 そう言い、ポケットからツバサと書いたUSBメモリーを取り出す。


「・・・その証拠をくれる為の対価でもあるのかしらね~?」


 ツバサ母が目を細めてそう言う。


「ええ。俺はあなたたちの為に来たんじゃないんです。向こうでツバサに受けた恩を返すために・・・ツバサの為にやってます。だからあなた達家族に、ツバサの為にメッセージをお願いしたいんです」

「え?それだけでいいの?」とツバサ母が首を傾げる。

「この世界で何かもらっても、持ち帰れないですから」

「なんだ~。身構えて損したわ~」

「さっさと渡しなさいよ」と俺を睨むツバサ妹。


 さっきまでクッキーに夢中だった癖に・・・。

 ツバサとかいたUSBを渡し、ビデオカメラも渡しておく。


「これで撮ってください。このデータだけは持ち帰れるようにしていますから」


 渡すものを渡し、俺は席を立つ。また後日取りにくればいいだろう。


「慎二君。泊まって行ったらどうかしら?翼の話も聞きたいし。パパが帰ってきたら説明しないといけないでしょ~?部屋は翼の使ってた部屋を使えばいいわ」

「いや・・それはなんていうか・・・ほら!妹さんも嫌でしょうし・・・」


 何か嫌な予感がする。ここは断っておきたいところだが・・・。


「ママがそう言うなら私は別にいいよ。案内する」

「は?おい!ちょっと待て!」


 ツバサ妹に腕を掴まれ、ぐいぐいと引っ張られる。そしてそのまま翼の部屋だったところに押し込まれ・・・。


 ガチャっと鍵を閉められたような音がした。


「はぁ・・・翼母のあの目つきは・・・昔この世界で散々見たあれだよな・・・」

 

 俺を利用してた奴があんな目をしていた。やっぱりこの世界じゃ俺はそう言う特性を持ってたってことか・・・。


「久々に見たな・・・。気味の悪い目だ。しかし・・・ツバサの家族を傷つける訳にもいかんし・・・ギリギリまで傍観することにするか」


 ティアの言いたかったことはこれか。確かに丸腰だったらここでゲームオーバーだったわ。ツバサ妹は変な能力みたいなの持ってるし、ここは本当に俺のいた世界・・・だわな・・・。じゃないとこんなに嫌われないか。


 そう決めると俺はすぐ床に寝ころび、寝ることにした。起きてても、やれることはないしな。






「馬鹿かお前らはっ!!!」


 そんな怒鳴り声が家中に響き、俺は跳ねるように飛び起きる。何事だ!?

 窓の外は真っ暗だ。部屋にあった時計の針は九時を示していた。

 ドタドタドタと足音が聞こえ、俺の部屋の前で止まり、ガチャっとドアの鍵が開く音がした。


「・・・うちの家族が迷惑をかけた!すまない!」


 ドアが開くなり、頭を開さげる中年男性。翼の父親だ。あいつの面影がある。


「ほら。お前たちも謝れ」

「「すいませんでした!!」」


 ツバサ母と妹も同じように頭を下げる。若干体が震えている。


「いえ・・・別に慣れてるので。僕と言う息子さんの手がかりを、手放したくない気持ちもわかりますし、頭をあげてください。というか・・・あなたは大丈夫なんです?」


 生理的に嫌悪される性質の俺だ。ツバサ母と妹は悪くない。そもそも俺が悪いのだ。そして・・・ツバサの父親も例外ではないはずなんだが・・・。

 ツバサ父は頭をあげ、俺の目をじっと見つめる。


「正直君を見た瞬間納得したよ。うちの家族が軟禁のような真似をするなんてありえないと思ったからね。しかし・・・人間とは本能を理性でねじ伏せるものだ。それができない人間は猿と同じだ。私の本能は君を危険視している。しかしそんなものは、君と言葉を交わし、交流を経て、判断すべきことだ。人の外見やなんとなくで、人の本質を決めてはいけない」

「・・・あなたみたいな人が、俺のこっちの世界での人生に居れば良かったと、そう思いますね」

「生き辛かっただろうね・・・。さぁ。お腹空いただろう?晩御飯でも食べよう」

「飯はいいです。それより見てくれました?」


 部屋を出ようとしたツバサ父がぴたりと止まる。


「慎二君と言ったね・・・」

「はい」

「無理なお願いだとは重々承知している。しかし・・・どうにかツバサと話しできないだろうか・・・」

「・・・俺もそうしてあげたいのですが・・・なんせ違う世界です。こうして映像をお届けできたこと自体が奇跡です。俺が命を張ってやっていることなんです」


 実際この世界の管理者に見つかるとどうなるかわからない。俺はもちろん消されるだろうし、もう二度とティアもこの世界に来れないだろう。なにせこの世界の管理者は、とても気まぐれで、行動が読めないらしいからな。


「そうか・・・そうだよな。すまない慎二君。そしてありがとう。翼が幸せそうに生きてるってわかっただけでも良かったよ。本当に・・・ありがとう・・・」


 目に涙を溜め、頭を下げるツバサ父。どれだけあいつが愛されていたのか分かった気がした。






 俺はそのまま翼の実家を出ることにした。期限一日前にもう一度立ち寄ると言い伝えて・・・。

 今から向かえば、明日の朝にはマオの実家に着くだろう。しかし・・・。 


「出来れば何とかしてやりたいよなぁ・・・」


 俺はそう考え、少し寄り道をして、マオの実家に向かう事にしたのだった。

次の一話で一旦お話は終わります。ショートストーリーはどういう形で掲載するかは迷っておりますが・・・。今後第二期をのんびりと、僕の生が続く限りは書いて行きたいと思っております。

お読みいただき有難うございました。

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