シンの異世界訪問 前編
いつもお待たせして?すいません。
「さて・・・行くとするか・・・」
旅行から帰って二日後の真夜中。全裸で眠りこける嫁達を起こさないようにベットから這い出る。
寝室から出るとすぐそこにティアが立っていた。
「おう。待たせたか?」
「いや?私も今きたところだけど・・・。シン君?とりあえず服着よっか?なんで全裸で部屋から出てくるのさ」
「仕方ねえだろ?明かりをつけたらあいつらが起きるかもしれねえんだからな。服を一階に取りに行ってくる」
「具現化すればいいんじゃない?」
「俺は旅行が終わったらこの力を封印することにしてたんだよ。まあそもそも実はもうロクに使えなかったりするんだけどな」
「貯金を使い切っちゃったわけだ。ろくに魔物を狩ったりしてないからね~」
「まあ簡単な物なら創れるが、それなら俺が手で作ってもいいしな。っと・・・さっさと出掛けないとな」
「はい、これ着て」とティアがササッと服を具現化して出してくれる。
「おうありがとな・・・ってタキシード?なんで着るのがめんどくさい服を出すんだよ・・・ジャージとかでいいじゃねえか・・・」
「タキシード姿のシン君かっこよかったからさ~」
「まあ別にお前が着ろというなら着るけどな・・・」
そそくさとタキシードを身に着け、ティアの魔法で天人族の島へと向かう。
その前に・・・。
「置手紙くらい置いておかないとな。こいつ等ならまた無茶しかねないしな・・」
「『ちょっと出かけてくる』ってそれだけ?」
「充分だろ?んじゃあ行こうぜ・・・懐かしのあの世界に・・・」
天人族の島ディスピアードに着くと、なぜか純白のドレス姿の天人族が出迎えてくれた。
俺を見つけるや否や、わらわらと俺の元に集まってくる。
「ゆーしゃさま~こっちこっち!」
「ん?ああ・・・そう言えばそんなお願いもあったか。だからタキシードなんか着させるわけか・・・」
「準備しておくから、終わったら光の柱に来てね~」と少しにやけつつ、ティアは先に行ってしまった。
天人族たちに引っ張られ、彼女たちの住む宮殿の近くまで歩く。
「俺たちの結婚式みたいな衣装を着て、写真を撮りたいってやつだったよな?」
先日のご奉仕カードと共に、天人族のやってほしい事リストにあったやつだな。ご丁寧に99枚を添えてあった。
「うん!んじゃあみんな集まってー!」
99人にんが4列ほどに並び、何とか写真の枠に収まろうとする。
カメラは魔法で動かしてるのか、空中にふわふわと浮いている。
「撮るよー!ハイチーズ!」
パシャとっシャッターが切られる瞬間、横にいたセシルが俺の頬に軽くキスをする。
「「「「「「「「「「「「「「「「あーーーー!!!!!!ずるい!!」」」」」」」」」」」」」」」」」
「ふふーん!私はここの責任者なんだからこれくらい当然よねー」
「ダメだよセシル!ずるい!」
「私もそんな写真欲しいもん!!」
「ちょ・・お前ら落ち着・・・」
わらわらと俺を押し潰すように飛びかかってくる天人族。しかしまぁ・・・。
「いつも世話になってるし・・・今だけはこいつらの好きなようにさせてやろうか・・・」
俺はしばらく天人族たちにもみくちゃにされながら、シャッターの光を浴び続けたのだった。
「ありがとうゆーしゃさま!」
カメラを大事そうに胸に抱き、セシルが笑顔でこちらにお礼を言ってくる。
「お前らが仕事で得た報酬だからな。俺で良ければいくらでもこき使っていいぞ?もちろんカードが無くなるまでだがな」
「無くなったらまたゆーしゃさまのお手伝いして、またもらうからね~!これからもよろしくね!」
「あぁ・・そうだな。これからもよろしくな。じゃあちょっくら行って来る」
「いってらっしゃーい!!んじゃあみんなー!げんぞーしに行こう!!」
はーい!とセシルの言葉に返事し、ずらずらと全員が満足そうにどこかに消えて行った。
そして俺は、この宮殿にある光の柱に向かって歩いて行く。
「まったく・・愛されてるね~シン君」
「まったくだな・・・子供に好かれるのは昔からだけどな」
「子供って・・・彼女たちは容姿は幼いけど年齢は君より上の子が多いんだけどね~まあいっか・・・シン君の肉体は私が管理しておくからね。ここからは君の魂だけしか通れない。覚悟はいいかい?」
「そんなもんとっくにできてる。さっさと行って、そして帰ってくるだけだ。始めてくれ」
俺はティアによって魂を復元され、そしてティアの作った肉体にその魂を定着された。故に、肉体と魂が分離しやすい・・・らしい。
転生したツバサやマオ、それにこの世界に生きる生物は、魂自体が肉体を構成して生まれる為、魂が離れると、基本二度と肉体には戻れなくなるそうだ。
ココの場合は、俺の魂という不純物を織り交ぜることで、その俺の魂がまるで接着剤のようにココの肉体に張り付いたそうだ。今は同化して、問題ないとかティアが言ってはいたが、その辺は俺にもよくわかってない。
なお肉体まで構築できる魂を復元するとなると、あと100年はかかるからやめたそうだ。ココちゃん達が可哀想だしね~だそうだ。
「それじゃあシン君横になって目を閉じてねー」
ティアにそう言われ、近くにあったベットに横たわり目を瞑る。
(お父様!いらっしゃいませ!)
突然魂に響くような声?が聞こえる。聞こえるというか、感じるという方が正しいだろう。目を瞑ったかと思えば、匂いも触覚も突然消えた。五感の全てがなんにも感じない状態なのだ。
(!?ティシー?ってことはここは・・・)
(こらこら。あんまり大きな力を出すとシン君の魂が消えちゃうでしょ?)
(そうでした・・・ごめんなさいお母様)
(俺の魂はそんなことくらいで消えないだろ?)
俺が死ぬのにどんだけ苦労してると思ってるんだよ。そんな簡単に死ねたなら苦労して無かったと思うぞ?
(いやいや・・・普通の魂ならいざ知らず、シン君の魂は割とありあわせで治したようなものだからね?無茶すると割と簡単に死ぬよ?それより・・ティシー。準備できてる?)
(ばっちりです!お父さまの魂守る君装着!キュピーン!)
(ネーミングセンス・・・というか別にそんな効果音は出てないからね?)
(なんか少し窮屈な気がするな・・・気がするだけだが・・・)
(それくらいは我慢してね?これから無茶をする君の魂を守るものさ。向こうの世界に魂が定着したら、簡単には戻ってこれなくなるからね?)
(その時は自殺でもなんでもすればいいんじゃねえか?)
(普通魂は死んだらすぐに星の循環に巻き込まれて姿を消すからね・・・君たちを私の世界に連れてこれたのは、奇跡という名のイレギュラーなんだよ?いろいろな要因はあるだろうけど・・・またシン君の魂が私の元に訪れるかはわからないからね)
(意地でもお前の元に帰るけどな)
(ははは・・・それは嬉しいけどさ・・・そうならないための対策はしておいてもいいでしょ?私はまたシン君が自分で自分を殺すのも見たくないしさ・・・)
(お父様!お気をつけて・・・)
(おう。帰ってきたら少しだけティシーと遊んでもいいかもな)
(ほんとですか!?絶対帰ってきてくださいね!お待ちしてます!)
(こらこらシン君・・・ここでどうやって遊ぶというんだよ・・・)
(ん?ティアがここを見てたら、少しくらいティシーが下に降りても大丈夫だろ?)
(・・・まぁティシーには頑張ってもらってるし、少しくらいはいいかなぁ・・・)
(やったー!!ではお父さまお母様!すぐに行ってください!さぁさぁ今すぐ!!)
(はいはい・・・じゃあ行って来るよ~お留守番頼んだからね~)
(はーい!)
五感がないから今俺がどうなってるのかはわからないが・・・ティシーの気配が消えた気がする。多分移動してるのだろうか・・・?
(心配しなくてももう着いたよ。懐かしの・・・滅びに向かう星だね)
(え?そんなすぐ着くもんなのか?)
(空間を繋ぐものだからね~マオちゃんがやってる空間移動の上位版の様なものだよ)
(なるほどな・・・というか滅びに向かう星なのか・・・)
(あんまり詳しくは言えないけど・・・もうこの世界に神様・・・僕のような管理者がいないのさ。星の命が少しづつ枯れていってる。まあ今のとこだともって400年ってとこかな?)
(そうか・・・まあ400年先の事なんて俺には見当もつかないな・・・)
(このままいけば・・・だけどね。私たちといえど、確実な未来が分かるわけじゃない。数ある未来の中で確率が高いと思ってるだけさ・・・80%くらいかな?ココちゃんの予測みたいなものかな?私の場合情報量が桁違いだけどね。っと・・余談はこの辺りにしてっと)
(そうだな。さっさとやることを済ませて帰るぞ)
(んじゃあまずは・・・空間を作らないとか・・・そんで~・・・)
ティアがぶつぶつと何かを言いながら、何かを始める。少しすると視界が戻る。
「どう?何か問題ありそう?」
ティアが鏡をこちらに渡して聞いて来る。
「んー・・・まあ大丈夫かな・・・御門慎二の姿じゃなくてよかったくらいだな」
「あの姿だといろいろ面倒が起こりそうだしね。向こうの猫族の姿に耳と尻尾がないだけだね。具現化も使えるようにはしておいたよ」
「説明と挨拶するだけだろ?能力いるか?」
「あのね・・・死んだ娘息子が違う世界で生きてます。なんて戯言、誰が信じるのさ・・・詐欺かなんかだと思われたりすると思うよ?その証拠みたいなもんだよ」
「それもそうか・・・うまいことやらないとな」
「なるべくスムーズにね?説明するよ~これがシン君が編集した映像ね。こっちがマオちゃん。こっちがツバサちゃんね」
2つのUSBメモリを受け取る。ツバサ、マオとでかでかと書いてある。
「滞在期間は7日・・・つまり一週間だね。ツバサちゃんとマオちゃんの家はそこまで遠くないから3日滞在と移動に1日になるかな?最初に降りるところは大都市のとある裏路地だよ。一週間後にそこに帰ってきてね。そこでしか回収できないよ?ツバサちゃんの自宅とマオちゃんの自宅はこのスマートフォンにすべて入れておいたからちゃんと見てね?もちろん回収場所も入ってるから迷子にならない様に。私はシン君を送りだしたら一度向こうに帰るから連絡できない。私はこの世界にあまり干渉してはいけない決まりなんだよね・・・。お金は・・・これに300万円ほど入ってるから好きなだけ使いといいよ。まさか使い切ることはないと思いたいところだね。こんなもんだけど質問ある?」
ぽいぽいと俺にスマホと変なカードを寄越すティア。このカードに300万?現金降ろすのめんどいんだか・・・。現ナマじゃダメなのか?
「シン君。もうキャッシュレスって言うのになっててね。お金という概念は電子マネーというのに変わっちゃったんだよ。お店にそのカード見せれば大丈夫だからね。今の世界の基礎知識だけは強制的に送るね?」
ティアが俺のおでこに手を当て・・・。いろんな情報が一気に記憶されていく。
「なるほどな・・・何て言うんだろうな・・・管理社会?これもう家畜と変わんねぇな・・・」
すべての人間に識別番号があって、データ上で管理される。どうやらゆくゆくは、DNA鑑定で人の向き不向きがわかり、その人間に適した仕事をする。
「牛や豚は人間の食べ物として飼われ、人間は国や社会を生かすために飼われる。まあもともとはそう言うものなのかな~?人間なんて増えても害しかないんだけどね~今のところ・・・。さてさて。何のために人間は生きるんだろうね~」
「そりゃ~死ぬために生きるんだろう?死ぬときに答えが分かるもんなんだよ」
「へぇ~・・・で?シン君は二回死んでる訳だけど・・・どうだったの?」
「今見てる糞みたいな星で死んだときは・・・あいつらの餌として生きたんだろう。そして・・・ティアの世界で死んだときは・・・まだわかんねぇな」
「えー!シン君の恥ずかしがり屋さんめ~」
「うるせぇ!もう行くぞ!早く送ってくれ」
「はいはーい!いってらっしゃい!あなた」
ティアが手を翳すと、空間に穴が開く。ここを通れば・・・あの世界に・・・。
「ふふふ・・・シン君シン君。私の前じゃ隠し事は出来ないからね~。これからも大事にして・・・」
「行ってくる!!」
ティアが何かを言う前に俺は輪をくぐる。
元の世界でやることはシンプルだ。
ツバサの家族に結婚式の映像を渡す。マオの家族にご挨拶。それだけだ。
しかし・・・俺の大嫌いなこの世界にまた帰ってくるとはな・・・何もなければいいが・・・。
少しの不安と、緊張感を胸に、俺は再び・・・元の世界へと足を踏み入れたのだった。
いつもお読みいただき有難うございます。
挿絵とかも自分でいつか書いてみたいですねぇ~。




