学院編:第五十四話:徒労
空を覆う黒雲がゆっくりと散り、清らかな月光が店の屋根に降り注ぐ、まるで氷の霜を一枚張り付けたかのようだ。
次の瞬間、微かな光が一瞬閃き、レオンとジャスミンが屋根の上に現れた。
レオンは付近の街道を見渡し、多くの店の前にいる冒険者たちを見て、眉を微かにひそめた。
「こんなに多くの冒険者がここに集まっている、どうやらあの盗賊たちも慎重にならざるを得ないな。」
ジャスミンは一歩前に歩み出し、レオンの視線を追って街の冒険者たちを眺めた。
店の前の階段に座って武器を拭いている者もいれば、法杖を抱えて壁に寄りかかり居眠りしている者もいて、さらに机を囲んで酒を飲んでいる者もいる、杯の底が木の机に当たって鈍い音を立てている。
彼女は視線を戻し、傍らで両腕を組んで周囲を見渡しているレオンを見た。
「レオン様、わたくしが探査魔法で感知してみてはいかがでしょうか?」
レオンは手を上げて制止し、横を向いてジャスミンを見て、軽く首を振り、微かにひそめていた眉の力をそっと抜いた。
「探査魔法は聖騎士に気づかれる、これほど大げさな動きを起こす必要はない、この街は見張りが密すぎるが、他の場所も同じとは限らない、彼らはここを選ばないだろう、ならばもっと注意深く探せ。」
「分かりました。」
ジャスミンは微かにうなずき、指先で宙を軽く叩くと、転移魔法の光が再び広がり、二人はその場から消えた、残された魔力の欠片だけが風に巻き上げられ、やがてゆっくりと消えていった。
もう一つの街道で、セシリアはある店の前にしゃがみ込み、指先で扉の鍵に残る痕跡を調べていた、鍵はかなり古びて見え、触れた時、指先にひんやりとした冷たさが走る。
彼女は立ち上がって周囲を見回し、何気なく掌に付いた埃をはらい、傍らから物音がして、ハンナが路地の入り口から頭を半分出し、彼女に向かって首を振った。
「セシリア様、この街でも異常は見つかりませんでした、鍵はどれも無事で、怪しい痕跡もありません。」
ハンナは視線を戻し、口調には無念さが混じり、肩も力なく落とした、彼女は傍らの壁に寄りかかり、続けて尋ねた。
「セシリア様、私たちもう三本の通りを調べました、影も形も見当たりません、相手は出てきていないんじゃないでしょうか?」
セシリアは答えず、ただ顔を上げて空を一瞥した、月はまだ空の半ばに掛かり、街の路面を銀の屑を敷き詰めたかのように照らしている。
彼女は向きを変えて路地の入り口へ歩いていく、ブーツが石畳を踏む音は軽やかで、周囲に響き渡った。
「もう一周回る、なければ戻る。」
ハンナはため息をつき、仕方なさそうに両手を広げ、すぐに足早にセシリアに追いつき、小声で呟いた。
「今夜はあまりにも静かすぎます、あの盗賊たちは私たちが調べているのを知って、前もって服も顔も変えたんじゃないでしょうか?」
セシリアは相手にせず、しかしハンナの言葉を聞いて、思わず足を一瞬止め、目に一筋の光が閃き、足の速さはさらに増した……
鐘楼の下、ポンマは物陰にしゃがみ込み、背中を壁に預けていた、彼はクリムが路地の入り口から足早に歩いてくるのを見て、ようやくほっと息を吐いた。
ポンマはすぐにクリムへと歩み寄り、仕方なさそうに肩をすくめ、声を潜めて尋ねた。
「親分、そっちはどうでした?」
クリムは首を振り、懐から灰白色の骨の指を一節取り出し、視線をポンマに落とした。
「骨竜の断指は見つけた、そっちの幻石髄は?」
ポンマはうつむき、ため息を一つつき、自分が遭遇したことを全てクリムに打ち明け、最後に唇を引き結び、その声にはいくばくか苦さが混じっていた。
「大きい店は全部人に見張られていて、入り口には冒険者が座っていました、小さい店も何軒か探しましたが、しかし少しの進展もありませんでした。」
クリムは長いこと黙り込み、彼はその骨の指を空間魔法に収め、すぐには口を開かなかった。
彼は壁に寄りかかり、ポケットから半分に皺の寄った煙草を取り出し、口に銜えたまま火を点けず、ただ唇で軽く挟んでいるだけだった、唾液が吸い口に染み込んでも気づかなかった。
ポンマは顔を上げて彼を見て、その口調にはためらいが混じり、その多くはクリムのことを思ってのことだった。
「親分、これ以上もたもたしたらリスクが大きすぎます、こっちはもう……」
クリムは煙草を口から外し、結局火は点けず、ただそれを取り上げ、何気なく耳元に挟んだ。
「夜が明ける前に……必ず揃えなければならない。」
彼の声は平坦だったが、一語一語を重く噛みしめており、少しの譲歩の色もなかった。
「ベアンが与えた最後の期限は夜明けだ、ああいう人間は猶予なんてくれない、先に一部だけ払う? そんなのは夢物語だ、どの薬も互いに補い合うものだ、一つ欠けても駄目だ……」
ポンマは口を開き、何か言おうとしたが、結局また飲み込んでしまい、呆然とクリムの揺るぎない表情を見つめた、その表情には少しの妥協もなかった。
彼は煙草を耳元から取り上げ、再びポケットに押し込み、ポンマの肩を叩いた、手のひらは彼の肩の上で一瞬止まり、口調は沈んでいた。
「見張られていない店が我々にとって唯一のチャンスだ、今のところ、我々を調べている人間はいないはずだ、妨げになっているのは冒険者と法陣がほとんどだ。」
ポンマはうつむいて思案し、一枚一枚の顔が脳裏に浮かんだ。クリムは首を振り、彼のためらいを見抜いたかのように、そのまま遮った。
クリムはポンマを見て、その眼差しは月光の下でとりわけ明るく、眼底には白く揺らめく光が映っていた。
「夜が明ける前に揃わなければ、ベキは明日の夕陽まで生きられない。」
クリムは胸を張り、振り返って遠くの街道を見た、月光が石畳の上に降り注いでいる、彼はポンマを見返して言った。
「もう一度賭けよう、お前は東へ行け、俺は西へ行く、夜が明ける前に、やはり鐘楼で集合だ。」
「見つかっても見つからなくても戻ってこい、全力を尽くすのは我々の問題だ、そしてベキは……彼女自身の運命を見るしかない。」
ポンマは数秒間彼を見つめ、それから笑みを浮かべた、しかしその顔には決意が満ちていた。
「なら、もう一度やってみよう。」
二人は二手に分かれて路地の中へ消えていった、クリムは影の中へ入る前に、また振り返ってポンマの背中を一瞥し、低い声で一言呟いた。
「無理はするな、生きて帰れ。」
しかしポンマはもう遠くへ歩き去っており、彼に聞こえたのかどうかは誰にも分からない、クリムの足音は路地の中でますます小さくなり、最後には路地の入り口から吹き込む風の唸りだけが残った。
月は大きく西へ傾き、店の入り口の冒険者も大半が首を傾げて居眠りしている、だが警戒している者もいて、時折左右に顔を出しては観察していた。
ポンマは東へ二本の通りを歩いた、路地はますます狭くなり、両側の壁面には湿った苔がびっしりと生え、足元にはいくつかの水溜まりが残っている。
彼は壁際に張り付いてある店の裏へと辿り着き、耳を澄ませて長いこと聞いた、しばらくしても物音一つないのを確かめてから、そっと店の前へ回り込み、手で扉の鍵を確かめた。
この数日の鍵開けで、彼の手際はますます良くなり、数回呼吸するほどの後には扉の鍵を開けてしまった、しかし残念ながら、彼は長いこと探し回ってもやはり材料を見つけられなかった……
クリムは西へ三本の通りを歩き、ようやく冒険者も法陣もない店を一軒見つけた、近づいて見ると、扉の隙間から昏い黄色のろうそくの光が漏れている。
彼は扉に身を寄せて長いこと聞いていた、中では二人が話している、一人の声は太く、男のように聞こえ、一人の声は平静だが中性で、中性の声の主の口調は低かった。
「教団の聖女予選の件はどうなっている?」
太い声が扉板越しに伝わってきて、その口調には比類のない自信と確信が込められている。
「問題ない、我々が支持する聖女の候補はすでにガレンモへ布教に行かせた、試練の時機が熟せば、彼女は教団へ戻れる、その時は……主教の座が誰のものかはまだ分からんぞ。」
「それならいい、この件は重大だ、必ず誰かをつけて彼女に同行させてはならん、真の研鑽だけが、最も鋭い刃を鍛え上げるのだ。」
クリムは聞いて眉をぎゅっとひそめた、しかし最終的には首を振り、黙って立ち去ることを選んだ……
さらにしばらくして、月は静かに鐘楼の尖塔まで昇り、店の前に見張っていた冒険者たちも次々と夢の中へ入っていった。
ポンマは一本の路地から這い出てきた、身に着けた服は元々ボロボロだったが、彼が汚水口から這い出てきたせいで、体中に悪臭のする汚水がこびりついている。
彼は袖で額の汗を拭い、うつむいて鐘楼の方へ歩いていく、その歩みは急ぎながらも軽く、まるで何かに追われているかのようだった。
レオンは鐘楼の向かいの屋根の上に立ち、元々別の方向へ移ろうとしていたところ、視界が街の路面を掠めた時、ふと止まった。
汚水口から一人の人間が這い出てきた、ボロボロの服を着て、一歩歩くごとに地面へ汚水が滴り落ちていく。
彼は立ち上がるなり、慌ててわら帽子を頭に押し付け、そっと腰を曲げ、極めて怪しい様子で、数歩歩くごとに左右を見回している。
レオンの視線はその人影を追い、相手がさらに狭い路地へ曲がるまで、彼はようやく口を開き、口元に微かな弧を描いた。
「ジャスミン。」
ジャスミンは瞬時に彼の背後に現れ、レオンの視線を追って見ると、一つの人影が路地の入り口へ消えていくのが見えた。
「あのわら帽子の男、少し怪しい、セシリアに伝音して、鐘楼の方角へ向かうよう伝えろ。」
レオンの口調は淡々としていたが、視線はずっとポンマの背中から離れない、ジャスミンは微かにうなずき、すぐに緋色の瞳を閉じた。
耳元に細かな波紋が広がり、指の半分ほどの大きさの淡青色の法陣が彼女の耳元でゆっくりと回転し、彼女はレオンの指示を残らずセシリアに伝えた。
伝え終わると、ジャスミンはまぶたを上げ、レオンを見て微笑んだ。
「レオン様、お伝えしました、わたくしは引き続き伝音魔法を維持して、レオン様とセシリア様の連絡を保ちます。」
レオンはすぐには答えず、ただポンマの消えていった方向を見ていた、数息の後、彼は視線を戻し、ジャスミンに向かって微かにうなずいた。
「よくやった、次は、あいつが一体何をしようとしているのか、見てみよう。」
鐘楼の下の物陰で、ポンマは地面にしゃがみ込んで息を切らしていた、クリムは彼より一足先に着いており、鐘楼の冷たい石壁に寄りかかっている。
彼の口にはまたあの半分の煙草が銜えられていたが、今回ようやく火を点け、煙草の先が暗闇の中で明滅している。
ポンマはクリムを見て、しばらくしてからようやく口を開いて尋ねた。
「ど……どうでした……こっちはやっぱり……」
クリムは首を振り、彼は何も言わず、ただ手の中の煙草をもう一口吸い、白い煙が彼の顔を覆い隠すまでそうしていた。
煙草は燃え続け、指に近づくと、彼は苦々しく首を振り、それから一気に煙草の先を手のひらに押し付けて消した。
「どうやら……我々はやはり無駄な努力だったようだ……」
「親分……」
クリムの表情を見て、ポンマは思わず唇を引き結び、彼は顔の易容魔法を解き、その場に崩れ落ちるように座り込み、顔を上げて夜空を見た。
「なあ……俺たちが逃げ出してから、重傷を負って、アンダとフタに助けられて、ベキの治療を引き受けて、それから盗みをして……」
彼が再びうつむいた時、見たのはクリムが拳を壁に打ち付けた姿だった、右手からは絶えず血が溢れ、その刺すような痛みと痺れに、彼は歯を食いしばってギリギリと音を立てた。
やがて、クリムもまた易容術を解き、ポンマの隣にどっかりと座り込み、手を上げて相手の肩を叩き、苦笑いしながら言った。
「ああ……結局……人も救えなかった、元々ただの指名手配犯だったのに……今捕まったらそのまま死刑だ……」
二人が落胆していたまさにその時、遠くの屋根の上で、セシリアは手の中の手配書を見て、顔に冷たさが浮かんでいた。
「なるほど、この二人は、ずっと逃亡していた指名手配犯だったのね。」
ハンナは片手で顎をつつき、もう一方の手を背後に回し、顔に淡い微笑みを浮かべ、眉を上げてセシリアを一瞥して尋ねた。
「お嬢様、次はどうなさいますか? 彼らの話を聞く限り、どうやらこうせざるを得なかったようですが。」
セシリアは手の中の手配書を落とし、手配書は地面へゆっくりと舞い落ち、地面に触れようとしたその時、この手配書は炎に包まれて灰になった。
「もういい、からかわないで、レオンが来るまで待ちなさい。」
そう言って、彼女は白い指を上げて左の耳元に当て、そっと息を一つ吐き出した。
「レオン、目標はもう見つけた、この二人はずっと逃亡していた指名手配犯よ、ただ状況から見て、人を救うために盗みをしていたようね。」
その言葉が終わると、少女の耳元の伝音魔法からすぐにレオンの声が伝わってきた。
「分かった、すぐに行く、まずこの二人を見張っていてくれ。」
「分かってる。」
セシリアはうなずき、横を向いてハンナを見た、ハンナはすぐに少女の意図を理解し、音もなくクリムとポンマに追跡魔法の印を施した。
夜の闇の中の二人はしばらく話し込み、ついにゆっくりと立ち上がり、ある方向へと歩き出した……
漆黒の夜の中、印を付けられた二人はまるで二つの眩い光の塊のようで、一挙一動がハンナにしっかりと掌握されていた……
セシリアは鐘楼の頂に立ち、夜風が彼女の長袍を吹き上げ、ほつれた髪の毛を揺らしている、彼女がじっと見つめているまさにその時、背後から極めて微かな澄んだ音が伝わってきた。
次の瞬間、レオンとジャスミンの姿がすぐにセシリアの背後に現れ、レオンはハンナに向かってうなずき、それからセシリアを見た。
「追跡の状況はどうだ。」
セシリアは振り返り、耳元の髪の毛を耳の後ろへかき上げ、その声は淡々としていた。
「すべて監視下に置いているわ。」
レオンはしばし思案し、彼は二歩前に進み、それから口を開いて言った。
「もう待つ必要はない、直接仕掛けよう、我々の目的は彼らを制圧することであって、殺すことではない。」
セシリアはうなずき、何かを思い至ったかのように、彼女は続けて淡々と付け加えた。
「ええ、ただあのクリムという男は私に任せて、彼と手合わせしたいの。」
レオンは気ままに手を振り、顔に一抹の遊び心のある笑みを浮かべて言った。
「好きにしろ、ハンナ、ジャスミン、次は結界魔法を頼む、致命的な脅威でない限り、お前たちは手を出すな、音を遮断するだけで十分だ。」
ジャスミンとハンナは互いに目を合わせ、息の合った様子でうなずき合った、二人が手を上げて空へ伸ばすと、二筋の強大な法則の力が絶えず湧き上がった。
白と橙色の法則が互いに絡み合い捻じれ、空の半ばで交錯し融合し、最終的に巨大な淡灰色の結界となって天から降り注ぎ、クリムとポンマの二人を包み込んだ。
この全ては瞬く間の出来事だった、セシリアは数歩前に進み、それから横を向いてレオンを見た。
「始めましょう。」




