表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/15

プロローグ

 かつて、この世界に『歩みと跳躍、そして膝』を司る偉大な神がいた。

 世界が荒れ狂う魔獣に満ちていた時代。

 人々は彼の神を『カリウス』と呼び、旅の無事を、人々の健康を、そして何より「健やかなる膝」を願って祈りを捧げた。

 誰もが知っていたのだ。

 舗装されぬ泥濘ぬかるみの大地において、足を痛めることは、すなわち「死」を意味するということを。

 あらゆる衝撃を受け止め、次の一歩を踏み出すためのかなめ―「膝」こそが、人類の命を繋ぐ最大の武器であった。

 だが、時は流れた。

  人間は都市を築き、道を整備し、人々は自らの足で荒野を駆ける泥臭さを忘れていった。

 安全に均された石畳の上を歩く者たちにとって、強靭な脚力も、限界を超える跳躍も、もはや不要の長物。

 かつて世界を熱狂させた「関節の躍動」は失われ、いつしか神の存在も忘却の彼方へと消え去った。

 神は眠りについた。

  誰も見向きもしなくなった街道の傍ら、苔むし、錆びついた祠の中で。己を呼び覚ます「本物の激走」を待ちながら――。


 ――それから数百年。 整備された恩恵など逆立ちしても受けられない、しがない辺境の開拓村。

 そこに、引き裂かれた衣服の隙間から「野生動物のように発達した太もも」を覗かせ、泥を跳ね上げながら荒野を爆走する一人の少年がいた。

 少年の名は、カイ。

  悲鳴を上げる己の脚を気迫で突き動かし、彼はただひたむきに、前だけを向いて走り続けていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ