表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/11

第8章 怖っ!

生きるとは、つらい。

虫になってから、もう何度この言葉を反芻しただろうか。


しかしこの日、私はそれを物理的に痛感することになる。


* * *


午後の陽が落ちかけたころ、川辺で水を飲もうとした時だった。


──バシャッ!


水音とともに、向こう岸から一匹のカマキリがふらふらとやってきた。

求愛してきたオス……じゃない、たぶん。似てるけど、もっと虚ろな目をしてる。


彼はまっすぐ川へ向かって歩き、

そのまま──ドボンと水に入った。


「えっ? え、待って? なんで?」


カマキリって泳ぐの? いや、そうじゃない。あれは──おかしい。


その時だった。


ぶちゅっ──


オスの体が震えたかと思うと、背中から**ヌルッ……**と何かが這い出してきた。


「……え……え、え、え、えええええぇぇぇぇぇっっっ!!!???」


出てきたのは、黒くて長くてぐにゃぐにゃと動く1本の生物。


その動きは、異様に滑らかで不快で、目が離せないのに見てると吐きそうになる。

それがまるでヘビのようにうねりながら水に向かって進んでいく。


「な、なになになに……なにあれ……!?」


それは──ハリガネムシ。


どこかの知識で聞いたことがある。

カマキリに寄生して、繁殖期に宿主を水へ誘導して自分だけ水中で繁殖する、最悪の寄生虫。


つまり今のは──


「……中に……いたの……ずっと……!?」


その瞬間、背筋が凍った。


私の中にも──入ってたら?

すでに寄生されてたら?

あんな風に、いつか操られて、水にダイブして──


「無理無理無理無理むりむりむりぃぃぃぃぃぃ!!!!!」


私はカマで地面を叩きながら後ずさった。虫であることすら忘れて、恐怖に全力でのたうち回った。


「ヤバイ……本当にこの世界、まともなこと一個もない……」


かゆいとか痛いとか、そういう次元じゃない。


もう、いるだけで怖い。


木陰に身を隠してガタガタ震えながら、私はふと、川面に映る自分を見た。


カマキリの姿。

緑色の体。ぎょろついた目。長い脚。鋭いカマ。


「……このボディ、怖すぎるでしょ……」


小さな川が、まるで奈落のように見えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ