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第6章 賢者モード入りました。それでも生きていくしかない。

「……もう、いや……」


バナナの皮の横で、私はうずくまっていた。

地面にはハエの羽がパリパリと転がり、風に吹かれてカラカラと音を立てている。

それが、まるで私の心の音のように聞こえた。


「なんでこんなことに……どうして私が……」


カマキリになって、虫を食べて、それが“美味しかった”なんて認めたくなかった。

だけど、腹は満たされた。

それは紛れもない事実だった。


「……でも、そうしなきゃ、生きていけない」


あのハエを食べなければ、私はきっと死んでいた。

食べるか、食べられるか。それがこの世界のルールだ。

ここは、虫の世界。弱肉強食のリアル。


もう、スーパーでサラダチキンを買うこともできないし、カフェでパンケーキも食べられない。

OLだった頃の自分は、もういない。

ヒールを履いて、仕事帰りにコンビニでスイーツを買っていた日々。

それらは、すべて夢だったかのように遠い。


私は、草の間に座り込んだまま、空を見上げた。

大きな葉っぱの隙間から、光が差し込んでいる。

その光は、どこかあたたかいようで、残酷な現実を照らしていた。


「生きるって……つらい」


でも、私は知っている。

この世界で何も食べずにただ泣いていたら、あっという間に死ぬ。

ある日、誰かに食べられて、忘れられるだけだ。


「それなら……せめて、生きてやる」


私は立ち上がった。

少しふらつくけれど、胃の中にはエネルギーがある。

ハエ由来の、たっぷりの栄養が。


「うう……やっぱ考えるとキモイけど!!」


思わず口を押さえてうずくまる。


でも、立ち止まってはいけない。

また空腹になったら、また食べることになる。

それがどんなにグロテスクでも、どんなに自分を嫌いになっても──


「生きなきゃ、意味ないでしょ……!」


そして、私は草をかき分け、また歩き出した。

この奇妙で気持ち悪くて、意味のわからない世界で。


虫はむり......だけど、それでも。


私は生きることを選んだ。

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