9話 干し肉作り頑張りますっ!
さて、今日は前回の予告通り干し肉を作るぞ!
「……干し肉、それは窮極の保存食」
冷蔵庫なぞなくとも一年お肉と一緒にいられる……素晴らしいな!
ま、多分私の場合は食べちゃうから一年持たないだろうがな。
「長く保存するために必要なことはなんだかわかるか?」
「えっと……腐らないようにすること?」
「そうだな。水分をなくせばいいんだ……澪はペケ一つな」
「……うっ」
……ぐぬぬ顏かわいい。
さて、今回用意するものだ。
肉塊
塩(精製塩ではないもの)
皿
計量スプーン
はかり
包丁
まな板
ボール
「それじゃあ作っていこう!」
「おーっ!」
◇◇◇
「ここに三週間塩漬けした肉塊があります」
肉塊はすでに塩漬けにしてあるのだ。
うん。一話クッキングだから仕方ないね。
でも、『塩漬け』の手順は説明しよう。
まずは材料だな。
今回私は牛肉を使ったが、豚でも鳥でも構わないぜ? 鳥はあんまり美味しくならないからオススメしないが。
まあそんなこんなでまず肉塊。
そして、大事な塩だ。
塩には精製塩と天然塩がある。
精製塩は塩化ナトリウム。天然塩はそれ以外も入ってるから旨味がある。だいたいそんな認識でいいと思うぜ?
まあ、だから天然塩を使うぞ。
味付けが塩だからな。塩の味が大事になってくるんだ。
ちなみに私は沖縄の塩が好きだ。
まあそんなこんなで次に塩。
準備ができたらとりあえず肉を小さく切るぞ。
だいたい一片500gくらいかな。うん。
切ったそれを皿にのせたら次は塩をふるというか塗る番だ。
今回8%の塩で漬けるから塩は一片に40gだな。
塩分をあまりとりたくないっていうんなら減らしてもいいが、さすがに6%よりは少なくしない方がいいと思うぜ?
私が前に5%でやった時冷蔵庫の中で腐ったし。
それで、塩は雪が薄く積もったみたいにまぶすんだ。
で、皿ごと冷蔵庫に放り込む。この時、さらに容器に入れた方がいいかもしれないな。カビを防ぐ意味でも。
っとまあ、ドンドン水が出てくるから折を見て捨てよう。
二三日で水は出なくなると思う。そしたらあとは三週間熟成タイムだ!
まあ、今回はそれがすでにここにある。これがまた旨いんだ。
ちょっとそのまま食べてみることをオススメするぜ? ……いけない、これ以上食べたらいけない。干す前になくなってしまう……
……ごほんっ。というわけで早速『塩抜き』だ。
ボールに水を張って肉塊を入れる。これだけだ。
とりあえず二時間くらい? 適当に端っこ削いで味見ながらやってくれ。30分毎に水を替えながらな。
とはいえ、あんまり抜き過ぎると保存性が落ちるから注意されたし。
で、ボールから上げた肉はよく拭いて次の工程だ。
◇◇◇
ところ変わってここは付近の洞窟。
これから肉を干す作業に移ろうと思う。
肉を干すのに大事なのはこの二つ。
陰干しできること。
風通しがいいこと。
だからそれゆえのこの洞窟だ。
風穴のようで風通しがいいこの洞窟。
肉を干すのにぴったりだ。
あ、塩漬けはここの第ニ階層においてあるんだ。
下に行くと気温が下がって3度ほど。この洞窟は天然の冷蔵庫だったのだ。
しかも綺麗。でもまあ、その描写は今日は置いといて……『肉干し』だ!
用意するのは
ロープ
針金
まあ、あとは言わなくてもわかるな?
ロープを張って、そこに肉を刺した針金を吊るす。
そしたらあと一ヶ月もすれば十分乾燥する。
一ヶ月後のお楽しみだな!
っとそうだ。干してる途中でカビた場合だ。
そんな時はアレだ。ウィスキーみたいな度数の高い酒を含ませた布で拭ってやればいい。
カビて一日二日のものならこれで平気なはずだ……多分。
今回は物語の都合上牛で作ったが、皆んなは是非豚でやってみてくれ!
旨いぜ?
◇◇◇
獣除けのドア付きフェンスを越えて洞窟の外に出る。
もう夏も終わる。
響く蝉の声はミンミンゼミからツクツクボウシへと移りゆき、ただ物悲しさだけが募るばかり。
木々の隙間から降りる光が洞窟の闇に慣れた私の目を刺した。
見上げる空は昏くて、見下げた森は暗くて。
牧場に帰る頃にはとっぷりと陽が落ちていた。掲げるランタンに照らされて、影がゆらゆらと揺らめいた。
ぱちり、ぱちりと乾いた木の爆ぜる音。赤い焔が駐車場にぽつりと一つ。
その前には二人分の着替えを持った澪が立っていた。
「おかえりなさい」
「ああ、ただいま」
いつものように二人で湯に浸かる。
見上げる月は白くて、見下げた姿は白くて。
ぼんやりと星降る天を見上げるが、落ちてくることなぞなく。その姿がほんのり桜に染まる頃、私達は湯から上がった。
晩御飯を食べ終え、就寝の準備も終わらせた。
澪が呟いたのはそんな時だった。
「ねぇ……私、怖いわ……」
蒲団の上に三角座りをしている澪。その顔は膝に隠されてしまっていて、伺うことはできない。
「貴女がいなくなってしまうんじゃないかって……」
後半の方は声が震えていた。
今の澪をは私が離れると不安を感じてしまう。
私は後ろから澪に抱きついた。
「大丈夫だ……私はいなくなったりなんかしないよ。ずっと一緒だ」
その夜、私達はお互いのぬくもりを、お互いの生を確認しあった……