#1 introduction
それはただの体験談。
―――いや本当に体験したのだろうか?
或いはただの妄想譚。
―――あの感触がマガイモノだと思うのかい?
そんなものじゃない。ただの悪い夢。若しくは錯覚、そうでなければ幻覚の類だ。
―――それが間違いだってことは理解るよね? あれはそういうものじゃない。
ならばあの「過去」或いは「現在」若しくは「未来」をなんと形容する?
―――そうだね…。あの現象を表す言葉…「永遠」と呼べるものかもしれないけれど、例えばこんなのはどうだい? 酷くお似合いの名前があるよ。多分君も気に入るよ。何せこの僕が考えたんだからね。
勿体ぶらないで早く言えよ。そんなの面倒なだけだろ。
―――勿体ぶりたくもなるさ。だって君には既に答えが出ているというのに、それを改めて僕に問うんだぜ? 二度手間も良い所、正に無駄骨折り損のくたびれ儲けじゃないか。ったく、一体僕に何を求めているんだか…。
別に大層な答えを求めちゃいないよ。ただ僕は真実が知りたい。それがつまらないものでもありふれた答えでもいい。僕はただ、本当が知りたいだけだ。
―――『本当の真実』ね……もう解っているのに? 自身がとっくに理解している事柄を、他でもない、この僕に聞くんだ? その迂遠は自己肯定の精神から来るものかい? それとも自己弁護なのかな…?
いいから早く言えって。御託はもう、ほんとっ…沢山なんだよ!
―――おっと今度は自己嫌悪と来たもんだ。君はあれだね、本当に性格が悪いね。人間性が隈なく歪んでいるよ。一つ残らずねじり曲がった結果、辛うじてまともなように見え無くもない。
………。
―――おっと、今度はだんまりかい? 本当に醜いな。弱くて、小賢しくて、悪辣で、卑怯で、それでもって、実にどうしようもない存在だ。
……。
―――おいおい、そんなに睨むなよ。恐怖で言うべき答えを忘れちゃいそうだよ。
心にも無いくせに。そんなはず、微塵もないくせに。
―――そうだね。あるべき心は君の中さ。感情の塵芥が集まった歪な絵。それが心であり、それが僕だよ。
やけに詩人だな。ポエミーなのは嫌いじゃないけれど、いい加減本筋に戻らないか?
―――確かに雑談に逃げる癖は何とかしたほうがいいかもね。お互いに気を付けようか。
でも、お喋りは僕らの処世術みたいなもんさ。だからそれは無理かもしれない。
―――今度は君が話を逸らすんだね。「真実」が知りたい? はっ、笑っちゃうね。その探究心とは裏腹に、その実君は恐怖している。真実を知ることに怯えている。
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己の罪から目を逸らそうとしている。
そんなこと…は無い、はずだ。
―――そうかな? 少なくとも僕にはそう見える。自分から見た自分はそう望んでいるように思う。
違うっ、僕は…僕は悪くない。何もしてないんだ…むしろっ……
―――まあ何だってイイけどさ。ところで、あれの名前だったよね? そうだね…僕が思う「あれ」の名前は――――――