表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Deja(mais)-vu  作者: 本陣忠人
1/11

#1 introduction

 それはただの体験談。

―――いや本当に体験したのだろうか?


 或いはただの妄想譚。

―――あの感触がマガイモノだと思うのかい?


 そんなものじゃない。ただの悪い夢。若しくは錯覚、そうでなければ幻覚の類だ。

―――それが間違いだってことは理解るよね? あれはそういうものじゃない。


 ならばあの「過去」或いは「現在」若しくは「未来」をなんと形容する?

―――そうだね…。あの現象を表す言葉…「永遠」と呼べるものかもしれないけれど、例えばこんなのはどうだい? 酷くお似合いの名前があるよ。多分君も気に入るよ。何せこの僕が考えたんだからね。


 勿体ぶらないで早く言えよ。そんなの面倒なだけだろ。

―――勿体ぶりたくもなるさ。だって君には既に答えが出ているというのに、それを改めて僕に問うんだぜ? 二度手間も良い所、正に無駄骨折り損のくたびれ儲けじゃないか。ったく、一体僕に何を求めているんだか…。


 別に大層な答えを求めちゃいないよ。ただ僕は真実が知りたい。それがつまらないものでもありふれた答えでもいい。僕はただ、本当が知りたいだけだ。

―――『本当の真実』ね……もう解っているのに? 自身がとっくに理解している事柄を、他でもない、この僕に聞くんだ? その迂遠は自己肯定の精神から来るものかい? それとも自己弁護なのかな…?


 いいから早く言えって。御託はもう、ほんとっ…沢山なんだよ!

―――おっと今度は自己嫌悪と来たもんだ。君はあれだね、本当に性格が悪いね。人間性が隈なく歪んでいるよ。一つ残らずねじり曲がった結果、辛うじてまともなように見え無くもない。


………。

―――おっと、今度はだんまりかい? 本当に醜いな。弱くて、小賢しくて、悪辣で、卑怯で、それでもって、実にどうしようもない存在だ。


……。

―――おいおい、そんなに睨むなよ。恐怖で言うべき答えを忘れちゃいそうだよ。


 心にも無いくせに。そんなはず、微塵もないくせに。

―――そうだね。あるべき心は君の中さ。感情の塵芥が集まった歪な絵。それが心であり、それが僕だよ。

 

 やけに詩人だな。ポエミーなのは嫌いじゃないけれど、いい加減本筋に戻らないか?

―――確かに雑談に逃げる癖は何とかしたほうがいいかもね。お互いに気を付けようか。

 

 でも、お喋りは僕らの処世術みたいなもんさ。だからそれは無理かもしれない。

―――今度は君が話を逸らすんだね。「真実」が知りたい? はっ、笑っちゃうね。その探究心とは裏腹に、その実君は恐怖している。真実を知ることに怯えている。


・・・・・・・・・・・・・・・・

己の罪から目を逸らそうとしている。


 そんなこと…は無い、はずだ。

―――そうかな? 少なくとも僕にはそう見える。自分から見た自分はそう望んでいるように思う。


 違うっ、僕は…僕は悪くない。何もしてないんだ…むしろっ……

―――まあ何だってイイけどさ。ところで、あれの名前だったよね? そうだね…僕が思う「あれ」の名前は――――――



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ