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白昼夢


「あの。いえ。その。なんでですか?」


タエコはなんだか落ち着かない


「あの。タエコ。キスは嫌いですか?」

「好きも嫌いも……その……先程のキス……ノーカンにしてください」


「先程の?……突き飛ばされたヤツですか?」


ジンはたずねる


「はい。そのヤツです」

「別に構いませんけど、なぜですか?

ちょっと気になります」


タエコはジンを睨み付ける


「……だからです」

「えっ?聞こえません」


「…… …… …… ……だからです」


タエコは更に睨み付ける


「分かりました。善処します。

で理由は何ですか?」

「どうしてそこを食い付くのですか?

放っておいてください!」


「なんだか聞かねばるまいて!

なんて……第六感が告げています!」


「あーうるさいな!

……

は・じ・め・て・だからですよ!」


─あはは!


ジンは思わず笑った


「ひどいです!

そんなに可笑しいですか!

ええ!ええ!そうですとも!初めてですとも!

初キッスをビックリして思わず拭っちゃった!

馬鹿な女ですよ!」


あはははは!


「笑うな!」


あんまり笑うジンにタエコはぶちキレて、ジンの胸ぐらを掴んでブンブンさせる!


「わたしだって!好きで誰とも付き合わなかったんじゃない!

相手がいなかったんだ!

馬鹿にするな!」


ジンを押し倒し、胸ぐらを掴みながら睨み付けた


「ごめんごめんタエコ!そんなに怒らないで!

タエコを馬鹿にしたんじゃないよ!」

「では!なんなのですか?」


「嬉しかったんだよ」

「何がよ!」


「タエコの初めての口付けがボクで!」


タエコは固まる


「馬鹿にしないでよ……」


「してないよ。でもタエコの要請は却下する。

いくら拭われても、初めてはボクでしょう?

ならノーカンには出来ない。

その出来事はもうボクの宝物になったからね」


そしてジンはタエコを引き寄せた。

仰向けのジンにタエコの体が密着する


「ではタエコ。

ボクに貴方からの初めての()()()()を要請します」


「……承りました。

有りがたく受け取りなさい。

拭ったら承知しませんよ!」


タエコはギリリとジンを睨み付けると、ジンの頭を抱え込み、くちづけをした。

優しさとは程遠い、激しい接吻


やがてジンとタエコは上下が入れ替わり、ジンが上になる。タエコはジンの頭を抱えたままだ。


そしてタエコ唇を離し、両手でジンの顔を挟んだ


「ジン。わたしを抱きたいですか?」


「抱きたいです」


「なら……」


タエコはジンの頭を更に引き寄せ、また唇と唇が触れそうな位置に固定させる


「なら……今日はがまんしなさい。

わたしはもう流されない。

あなたのご両親に挨拶をして、わたしの両親にも会って貰って、結婚の許可を戴いて、祝福されて、満を持して抱かれてあげます。

思う存分抱かせてあげます。

わたしも好きなだけ抱かせて貰いますから。

夫婦は分かち合い、与え合うものでしょう?

わたしの事。

いい歳して頭が固い頑固な女と思っていますか?」


「いいえ……ウソだね……思いますよ。

今時時代錯誤の化石のような考えの人だって!

でもそれがいいんです。

タエコらしくて……。

それに約束しましたよね。

結婚までそういう関係にはならないって……」


「そのことなんですが……一部訂正させてください」

「なんでしょう?」


タエコが急にしほらしくなる。

そしてトロンとした目でジンを見て


「結婚まで待てそうもありません。

ずっと待って来ましたから

─だから

お互いのご両親に挨拶をして

了承して戴いたら

旅行に連れて行ってくださいませんか?

温泉旅行でもいいし

水族館のある海辺の街でもいいし

─あの

ちゃんとした旅館や

綺麗なホテルがいいです。

せっかくここまで後生大事に

乙女を守ってきましたから……。

需要はなかったですけど

せっかくのジンとの初めてですもの

いい思い出にしたいのです

ダメですか?」


「ダメです」


タエコは虚を突かれて暫く思考放棄したが、哀しそうに唇を噛んだ


「命じてください!」

「えっ?」


ジンは笑って


「いつものようにボクに命じてください!

ジン!って!!」


タエコも笑って


─いいでしょう。覚悟しなさい─


と呟き、ジンをはね除け立ちあがった


「ジン!

コウサカジン!

わたしを抱きたいなら!

旅行に連れていきなさい!

お金なら無駄に高級取りなわたしが持ちます!

だからケチケチせずに!

最高のプランを!

わたしにプレゼンしなさい!

そうね候補を三プラン用意しなさい!

その中から選んであげます!

良いですね!

ジン!!」






──仰せのままに……我が姫よ!──






─はて?わたくし。何かいいましたっけ?


踊り終えたふたりはしばし見つめ合う。


万雷の拍手に我にかえるエアリス王太子とエリザベート。


エリザベートは手を引かれて国王陛下の元へ向かう間


「殿下?今わたくしを姫と仰りましたが、なぜで御座いましょう?」


「あまりに美しき姿で、思わず溢れたのだ。

それに旅へ連れて行けと余に命じただろう?

任せておくのだエリザベート、全て余が持てなそう」



エリザベートはそんな事を命じた記憶はない。


それに……あまりに白昼夢が多すぎる。

僅かの間にオクダタエコの記憶が流れ込んでくる。


国王陛下夫妻に挨拶を済ませ、王妃陛下からとりわけお褒めの言葉を賜り、席へと戻った


─あ~しんどい


椅子に凭れて一息つく。

舞踏会後半の部は今始まったばかり。

今流れている曲とダンスが終われば、やんごとなきご身分の貴公子からまた踊りに誘われるのだろう。



そしてこうしている間にも、また視界が白けて……



……目の前にコウサカジンがいた。













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