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憧れのプリンセス


舞踏会会場はざわついていた。

途中小休止。


音楽は止み。

やんごとなき人々はワイン片手に噂話に花を咲かせます。


壁を彩っていた花々も、あぶれた男達が意を決して誘いにいき、少し寂しくなりました。


そして王妃が立ち上がりました


「お集まりの皆様。お楽しみ戴けておりますか?

さて。皆様ご存知の事と思いますが、今ここにエアリスだけがおり、もう一人の主役がおりません。

はて?どこにいるのでしょうか?

主役がいなければこの舞踏会後半の部はお開きとなります。

皆様それで宜しいでしょうか?」


皆口々に異を唱える


「では皆様。お呼びになってくださいませんか?

あろうことかわたしくしのむすこで王太子たる愛しのエアリスを、先程から待たせている不届き者を!

その者の名はエリザベート!

未来のフォラリス王国の王妃ですわ!

さあ!皆様!声を揃えて!

かのも者の名を呼びましょう!

エリザベート!」



─エリザベート!!!



前代未聞。貴族が一人のご令嬢の名を唱和いたしました。


皆は貴賓の扉を一斉に見ましたが、主役は現れません。


楽団が一斉に甘いムードの曲調の音楽を奏ではじめます。


エアリス殿下が歩みを進め、二階をつなぐ階段前に待機致しました。

やんごとなき人々は釣られて階段の上、二階の扉に視線を集めました。

その衆目を集める両開きの扉が開きました。


音楽が一層の艶やかさを増し、それに合わせて一人のご令嬢が現れました。



おおおおおおおおおおおおおおおおーーー!!!!



どよめきが大きな反響となり木霊しました。

現れたのは見たこともない美少女。

黄金の髪を編み上げ、両脇と後ろに垂らしたストレートヘアーが絹糸のよう。

純白のドレス。

レースとふんだんな刺繍。そして薔薇。

白い薔薇がスカート一面を覆っている。



─白薔薇姫



誰ともなく呟きが漏れた。

ゆっくりと階段をおり行く姿。



─ホントにエリザベート様?



あの背骨に杭をぶっ挿したようないつもの堂々とした佇まいではなくて、春風のように柔らかい。

そして白い肌がドレスの白さに溶け込んで幻想的に見える。


清楚で美ししい。


そしてあの恐ろしいはずの目付きが、薄いピンクのアイシャドーと自然なメイクによって本物の女神かのように錯覚してしまう。


白い大理石の階段から降り来る姿は、下界に降り立つ女神そのもの。皆が……男だけではなくご令嬢の方々もその美しさに見とれていた。


エアリス王太子殿下が下界から女神をエスコートし、フロアの中央へ歩み寄る。

そして曲調が変わり二人はダンスを踊り出す。

背筋をピンと伸ばす黄金のドリドリル、深紅の装いのいつものエリザベートを知っている者からすれば、この目の前のエリザベートは同一人物とは思えない。


どこまでも軽やかに清らかに舞踊る姿。黄金のストレートヘアを靡かせ、白いドレスがふわっふわっと弾む。

表情も優しく蕩けそうな微笑みを浮かべている。




──舞踏会場にいる全ての人々が魅了された──




踊りながらエリザベートは王妃様に無理強いされ、この姿でダンスをする羽目になった状況を嘆いていた。


テイラム公爵邸でのエルフ女神の姿を、この舞踏会で披露しろ!と厳命を受けたのだ。

あまりテイラム公爵邸でのストレートヘアのエリザベートエルフの噂は広まっていなかったらしく、箝口令をひかれた。

そして王妃様自ら率先して、エリザベートをいじくり倒した。メイクも自然な感じで、目が怖くないように目元や目尻をメイクで拡張した。さらに付けまつ毛をして、常時瞳を伏せてる可憐な眼差しを拵えた。



─ほら動画とかあるじゃない?


あんまり見映えの良くない女子がね。

メイクで美人に変身するやつ


─わたしアレ


顔……というか目が書き換えられたの。


それでこのこっ恥ずかしい姿を晒しておりますの。


まあ。この衣裳はちょっと拘ったわけよ。

王妃様。ドレスは純白で!

なんて云われておりましたから、どうせなら乙女ゲームの【白薔薇姫と七人の虜たち】の白薔薇姫の格好をしてみようと思いたちまして、こうしてそれらしいドレスになりましたの


「殿下。この格好はお嫌いですか?

先程からだんまりを決め込んで、あんまりですわ。

この姿。とても恥ずかしいのですよ」


だっらしのないポケ顔かましている殿下を、ちょっとからかってあげたわ


「いや。その。エリザベート。見違えたぞ」

「あら?それはお褒めのお言葉ととって宜しいのかしら?それとも可愛くないのかしら?」


「あ。いや。とても綺麗だエリザベート。

この世の者とは思えないほどに……」

「あら?わたくし死人に見えまして?」


─いや。その。あの。


なんだか歯切れの悪い殿下。

まあ。ひとりコスプレに興じているわたくしと致しましては、こうして殿下をいじってないと身が持たない訳でございまして……。


でもわたくし。この格好が気に入らないのではありせんことよ。

なんだかスタジオナンタラの写真撮影で、お姫様の格好して嬉しそうに笑う女の子がいるでしょう?

わたくしオクダタエコ時代そんなのとは無縁でして、実は憧れを持っていましたの。


なんだかプリンセスになった気が致しますわ!


それにこの衣裳。ウェディングドレスにも見えますの。

ずいぶん可愛らしい新郎新婦でございますが……年齢的なことね……予行練習みたいなものですわね。



ウェディングドレスといえば、オクダタエコ。


記憶の中のわたくしね。

衣裳の着付けの時またぞろ白昼夢を見せられまして……。



─おめでとうオクダタエコ



─おめでとうわたくし



わたくし。

精一杯の勇気を出して愛を受け入れたようですわ。


着物を着て、かしこまって、見直しました。


コウサカジンと平行移動のままではなくて交差していたのね。

わたくしオクダタエコと致しましては、重大イベントでございました。


さあ。わたくし。


ウェディングドレス。

着れたのかしら?それとも……。


どちらにせよ。

最後まで付き合いますわよ。




─オクダタエコ……さん




─前世のわたし……
















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