与えられ流されるままの人生
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万雷の拍手の中。
わたくしエリザベートはエアリス王太子殿下と向かい合っております。
今は王宮舞踏会の第二部。
上級貴族より上の肩書きを持つ者が出席を許される、王国最高峰の舞踏会です。
わたくしエリザベートとエアリス王太子殿下はダンスを踊り終えたのでございます。
無事踊りを終えお互いに満足した顔を確認致しますと、見つめ拍手を送るギャラリーに手を振りフロアから退場致しました。
わたくし装いは定番の赤。
黄金の巻き毛。
殿下も安定の白。
金と銀。そして差し色で赤の刺繍が入った装い。
手は握られたまま。
ホントは前回の王宮舞踏会のようにキスをしたかったのですが、流石に自重しました。
あのキス自体は『仕方ないだろう』と咎められませんでしたが、国王夫妻からは二度としないようにと念を押されたのです。
そのまま国王夫妻の前に進みでると挨拶をして、席に戻ります。
─はあ~
ひとつの重要なイベントをこなし、ほっと一息をつくエリザベート。
この曲が終わればまた殿方からのダンスのお誘いはあるでしょう。
目付きの悪い只の11歳の少女なら放っておかれるでしょうが、公爵令嬢で次期王妃というきらびやかで誰にも侵し難い不可侵の領域に彩られた高級素材は世話を焼かれるものでございます。
今は大勢がダンスを楽しんでおります。
この曲が終わればわたくしも殿下も大勢の御貴族様に囲まれて、お誘いを受けるでしょう。
殿下はともかく、誰もこんなやせっぽちの矢鱈目付きの悪いわたくしと踊りたいとは思わないでしょうに……お互い難儀なことでございます。
─さてオクダタエコ
あなたずいぶん良さげになっているようね
あの顔の貴方。わたくし流石に分かりますわよ
─人生の岐路でございますわね
そして……わたくしに繋がる道筋……
もう。先は見たくはありません
オクダタエコの人生はオクダタエコのもの
わたくしエリザベートはあなたがどうなろうと
───この人生を歩むしかないのですから───
曲が終わり、公爵家の貴公子がわたくしを誘いにこられました。
わたくしは差し出された手の平に、右手を添えるとフロアに向かいました。
わたくしは微笑み義務的に役目をこなします。
お高い身分の方から順番がつかえておりますから、休んでなぞおられません。
お高い身分の方々はほとんどフィアンセがおりますから、わたくしのような同じ身の者はある意味誘い易いのでございましょう。
もはや王妃の道筋は示されております。
ここにパッと出のヒロインが入り込む余地はありません!
さてさてわたくしは地固めをして、いずれわたくしの前途に現れるであろうヒロインを迎え撃つ準備を致しております。
ヒロイン貴方にとってはわたくし難攻不落でしょう。
この身分にオクダタエコの心を宿し生きてきて、逆の立場なら立ち向かう輩は馬鹿としか思えません。
ましてや男爵の身分の者が……。
─全く楽しみでございますわ
さてさてオクダタエコそういうことでございますから、貴方は貴方で人生を満喫しなさいな。
後一年でしょうか?二年でしょうか?
残り少ない人生を……。
ホントにホントにもう
───見たくはありません───
コウサカジンのポケ顔をしばらく眺めていたタエコは、
そう思った。この顔に想いを告げる気にはならない。
オクダタエコはコウサカジンと向かい合っていた。
沈黙が続くとコウサカジンは気を取り直したのか、真面目な顔になる
─なーんだ?そんな顔出来るじゃない?
やけに凛々し気な顔に、ちょっと安心するタエコ。
さあ。わたしの気持ちは決まっている
「ジンさん。答を示す前に、少し前置きを語っても宜しいでしょうか?」
コウサカジンは頷き
「どんなお話でもお聞きしますよ。
タエコのさん。貴方のお話はボクの心をいつでも満たしてくれます」
タエコは微笑み
「わたし。いつも流されていました。
小学生でも云われるがまま。
中学校でも高校でも、酷い扱いでした。
そして短大でも……わたしはいつも周りに流されるままでした。
そして会社に入っても、それは変わりません。
貴方のご両親に引き立てられ、課長になり部長、常務、そしてもうすぐ社長へと上り詰めました。
でもわたしは小学校から変わりません。
いつも流されるまま。
わたしはわたしの人生を生きていませんでした。
いつも与えられるだけ。
例え其がわたしへの誹謗中傷だろうが、わたしを認めて下さり社長となろうが、わたしは与えられるだけ。
確かに会社に入社してから、一生懸命与えられた仕事をこなして精一杯取り組んできた自覚はあります。
でも基本的に何も変わりません。
与えられた状況に抗いもせず、与えられただけ。
ここにわたしの意思はありません」
そして目を瞑り、間を置いた。
瞼を開き、瞳をジンへ向けた
「今日。わたしそれに初めて気付きました。
ジンさん。あなたに告白を受けて、こうしてもう望むべきもない恵まれた人生に華やぎをくださいました。
とても感謝致しております。
わたし。考えました。
この幸せを今までのように与えられたまま享受してもいいのか?
流されるままに受けて良いのか?
とても悩みました。
でもジンさん。わたし決めました」
オクダタエコは背筋を伸ばし、ジンをシカっと見据えた。ジンも改めて襟を正す。
間近の決断への狭間を感じ取ったのだ
「ジンさん。
わたし。これからの人生。
無闇に流されず自分の意思や想いをしっかりと乗せていこうと決意致しました。
もう流されるまま。
与えられるだけの人生に別れを告げると決めました。
だからジンさん。
これからわたしがジンさんへ告げる言葉は、わたしが新たな人生を歩む為の決意表明です。
わたしは覚悟を決めました。
もう後戻りはいたしません。
ジンさんも心してお聞きください」
ジンはただならぬタエコの気配に
「分かりました。ボクも人生をかけてタエコさんの言葉を受け取ります。
例えそれがボクの意に沿わない言葉であろうと、じたばたせずに受け止めます」
そしてタエコをしっかり見つめて口を開いた
「タエコさん。どうぞおっしゃってください」
すみません。
狙って引き伸ばしているわけじゃないっす。
インスピレーションが降りたまま書いてます。
これを書いてた頃
もう先が知りたくて
めっちゃハイペースで書いてました。
うっ。
その頃の貯金が切れそう。
エリザベート。
4ヶ月近く書いてないっす。
ヤバいっすよ!
はよ!
インスピレーション!
早よ!
降りて来て!!!
カモン!!!