さあ!狩を始めましょうか!
エリザベートエルフは殿下三人の前でクルリと一回転致しました。
黄金のストレートヘアーがフワッと風に靡き、柔らかな太陽光に照らされて黄金のシャワーのように広がりました
「ようこそいらっしゃいました殿下!
わたくしのテリトリーへ!
どうです?似合いますか?」
そしてエルフっぽくポーズを決めてみました
「エリザベート。とても見違えた。
まるで今世に現出した妖精のようだ」
エアリス殿下がポケ顔を隠しもせず……いや遥かにポケてわたくしを誉めてくださいました。
それにしてもこういうときほど真剣な顔をしてほしいものです
「女神のようだ」
「エリザベート様。その髪型もお似合いです」
ネルフィス殿下とヘルメウス殿下が追従いたしました。
この二人の弟殿下。
エアリス殿下よりもムゴいですわ。
口を半開きのままわたくしをガン見しております。
ネルフィス殿下なんか、顔を真っ赤に茹であげてプルプル震えております
─はて?怒らせたか?
─ふざけすぎたか?
今更取り繕っても仕方無いのですね。
実はわたくしエアリス殿下だけにターゲットを絞って他のお二方は棄てております。
棄てているとは不敬ですが、まあ。誠意を込めてお構いは致しますが、三人を満足させるなんて無理でございます
──二兎を逐うものは一兎をも得ず──
ましてや三兎などと無理ゲーにも程があります。
殿下は狩をしたいと以前申しておりましたから、わたくしそれに添って計画を立てたのでございます。
エアリス殿下の喜びはわたくしの喜びですから、主宰のわたくしが喜べばもしかしたら弟殿下にも、そのおこぼれが伝わるかもしれませんね
「では狩人の皆様。こちらへ」
わたくしエルフは可愛い弓を持っています。
そして中庭の特設ステージに向かいました。
長細い中庭の中程に膝くらいの柵があります。
そこから三メートル程離れた所に、人形劇の舞台のような装置を拵えました。
幅10m高さ1mの舞台。
両脇は高さ3m幅2mのボックスになっております。
舞台5m後方には暗い色の幕が張ってあって、後ろ側が見えないようになっております。
「ではわたくし。今から狩を致します。
狩人の皆様。どうぞわたくしをご覧なさいまし」
わたくしは矢筒を持って来て貰いました
「殿下の騎士のどなたか。この矢をご確認下さい」
一人の騎士が歩み出て、わたくしから矢の十本程入った矢筒を受け取りました。
そしてその騎士は矢筒の中を覗き込むと、もう一人の騎士を呼び寄せたのです。
そして矢筒の中から一本を引き抜き、高々と掲げました。その矢の矢じりをしっかり皆に見せました。
矢じりは鋭い金属製ではなく、先端が布に覆われた殺傷能力皆無の代物です。
曲がり間違っても三貴公子にケガをさせるわけにはいきませんものね。
騎士は一本一本皆に見せ、それを隣の騎士に渡していきます。十本全部確認を終えると矢筒に戻してわたくしに返してくださいました
「如何てすか騎士様。これをわたくしの狩に使用しても宜しいですか?」
「はい。問題ありません。
ただ。これでは獲物には刺さりませんな」
周りの皆が頷いています。
わたくしは微笑むと
「まあ。見ていてくださいな。
それから高貴なお三方の狩人の矢筒も用意してありますわ。どうぞそれらもご確認ください」
騎士が手分けして矢を全部無害な代物であると確認し、三人の殿下に十本づつ矢を収めた矢筒をそれぞれ渡されました。
狩人達はわたくしのようにや矢筒を背負いました。
「でわ。狩を始めます」
わたくしが目配せすると、狩人の格好をしたイレーネが
ピーーー
と笛を吹きました。
すると脇のボックスから、棒にくくりつけられた布で作られたヤタラヒラベッタイブタさんが、トコトコ現れました。
それを見て皆様ワーっと沸きました!
可愛らしいブタさんが、ゆっくりと呑気に歩いています。
わたくしは素早く矢をつがえると、ヒュッと矢を放ちました。
矢は放物線を描き見事ブタさんに命中しました。
矢をいられたブタさんは仰向けひっくり返りました。
ワーーー!!!
パチパチパチパチパチパチ
歓声と拍手に応えてわたくしは皆に手を振りました。
まあ。人形劇そのままですね。脇のボックスは舞台袖。
1mの高さの舞台裏ではね。ヘルメットのような固い木の帽子を被った大人が赤ん坊みたいにハイハイしているのよ。ヘルメットの登頂に木の棒が刺さっていて、その先に縫いぐるみの平べったいブタさんが付いております。
その板を布で覆って可愛く細工したブタさん。
後ろ側は下から1/3の所で棒が止めてあって、上部に当たると反動で、ただひっくり返るオモチャです。
舞台裏でハイハイ移動すれば、舞台の向こう側ではそんな大人は見えなくて、ブタさんだけがトコトコ歩く姿が見えるという寸法ですわ。
これは狩の名を借りた、お祭りの射的ゲームでごさいます!
輪ゴム鉄砲の代わりにオモチャの弓矢。
動かぬ縫いぐるみやお菓子などの的の代わりに、動く標的でございます。
そしてわたくしが見事仕留めたブタが、イライザによって手元にはこばれました。
わたくしはそれを高々と自慢気に掲げました!
ワーーー!!!
更なる歓声を浴びました。
ブタさん等の獲物は差し込み式で、棒ごとヘルメットの穴に抜き差して獲物を入れ替えます。
きっと男の子達はこういうのは大好きでございましょう!
チロリ
と横目で見ましたら。三人の狩人の皆様!
目をギラギラさせて燃えております!
さあ!狩を始めましょうか!