ブラックコーヒー
『あら。意外とあのコといい関係になったのね』
ふーん。
わたしオクダタエコは感心した。
そしてわたくしはエリザベートだ。
コウサカジンにプロポーズされたオクダタエコ……。
そのあと中途半端に記憶がぶった切れている。
正直。唐突なプロポーズだったけど、今回は続きが気になる。
─ここで切るなよ!
─もっと見せてよ!
なんて思ってしまう。
今回は夢でみた。
そして起こされた。
ここは王宮のアホ程贅沢な天蓋付きベットの天井?になんのかな?屋根かな?良くわからないけど、裏側に書かれている天使が飛び回っている絵を眺めている。
あれからわたくしエリザベートはあれこれ国王夫妻と歓談し、夜も遅いからと当初あてがわれた部屋ではなくて、王妃様がおられる離宮の貴賓室に寝かされた。
わたしの世話はわたしの従者ではなくて、離宮付きの侍女のお姉様方がしてくれた。
貴族……それもわたくしのようにさらに高貴な身分になると、身の回りの世話は自分でしない。全てやってくれる。
それはお風呂とおトイレも変わらない。
エリザベートとしてはそれは幼少期の頃から当たり前で、恥ずかしくもなんともない。
でもね。オクダタエコは少し恥ずかしい。でも面子がエリザベートの記憶にあったイライザやイレーネだったりしたから、まだ何とか耐えられた。
今はね。全部知らないお姉様。至れり尽くせりはありがたいが、お風呂くらいゆっくりゆったり入りたいものだ。寝る前。洗われた。
『わたしはマグロわたしはマグロ』
と言い聞かせてやり過ごした。
いやね。洗われるとくすぐったいの。
それ我慢するのが結構つらかった。
まあ。今は朝だし。朝食がてらまた【白蓮の間】でお茶会がある。
ここにわたくし付きの従者が入れないのは、多分秘密保持の為だと思う。
離宮は結構入り組んでいるから、非常時の避難経路に使われるのかもしれない。
ここ離宮は王妃や側室などが住まう場所。
日本で言ったら大奥みたいなものね。
途中からは男子禁制になっていたし。
入れるのは国王陛下だけ。
王妃陛下付き侍女のお姉様に案内されて向かったのは【白蓮の間】
で。わたくしはその【白蓮の間】にいる。
今日もまた聞きたいことがあるらしい。
わたくしが寝泊まりした離宮の貴賓室は男子禁制だったけど、【白蓮の間】はそうではない。
ここはホントに家族とか、プライベートで楽しむ空間のようだ。
テーブルを挟んで目の前に国王夫妻。
あとは昨日と同じ侍女のお姉様ふたりと護衛の騎士三人。こちらも同じ面子だ。
挨拶の後
[尋問ではないので、答えたく無いものは無理強いしない]
とのこと。
答えられる範囲でいいらしい。
正直。昨日わたくしに女神エリザ様が降臨してくれなかったら、どうなっていたかわからない。
国王夫妻は口ではわたくしの事を持ち上げていたけど、貴族の言葉を真に受ける馬鹿はいない
─間一髪
─紙一重
─首の皮一枚
言葉にすればエリザ様降臨はそんなの感じか?
朝食は厚切りベーコンと、ソーセージ。目玉焼き。
そしてパン!
なんか懐かしい!
オクダタエコは朝食は和食派だったけど、休日の昼食は正にこんな感じ。
ただベーコンは薄かったよ。
パンとか正直、手で食べたいけど流石に国王夫妻の前では無理ですね。
流れるようなテーブルマナーで食事を平らげました。
そしてコーヒー!国王様だけ。羨ましい。ジト目。
「エリザベート。ソチもコーヒーに興味あるのか?」
ええ!ございます。わたくしいや、オクダタエコはブラックコーヒー大好物でございます!
朝わざわざ豆を一杯半。手動ミルでゴリゴリ引きまして……速く挽くと熱が出て風味が削がれるやらなんやらで、ゆっくり挽いてそれをドリップするの!
わたしは逆円錐形のドリッパーで淹れたスッキリした味わいのコーヒーが好きで、ちゃんと一分砂時計で蒸らし時間を調整して、本格的にドリップしてました!
それをマイボトルに入れて、持ち歩く!
電車の中でもオフィスでも好きな時間に、一口ふたくち香りを楽しみながら味わっていましたよ!
で。ください。わたくしにも。ブラックコーヒー。
「飲みたいのか?」
「はい。とても美味しそうです」
この世界でコーヒー初めてだよ。もしかして高級品であまり出回っていないのかな?
「だが、これは子供のソチには苦かろう。砂糖とミルクを足すと飲みやすくなるぞ」
余計なことするな!カフェオレも好きだよ!でも今は断然ブラックコーヒーが飲みたいのだああああ。
睨んでやる。
「わたくし。国王陛下が美味しそうに飲んでおられます黒々としたコーヒーに興味がございます。
もし苦くてとても飲めないようなら、後でミルクでも何なりと混ぜ込めばよろしいかと存じますが、やはり初めはまじりっけ無しの本物を試してみたいのです」
そうか。
と国王様。
わたくしにもくださいましたブラックコーヒー。
─淹れたてですよ!
─異世界初っすよ!
ティーカップに入っているのはご愛敬。
まずは香りを楽しんでスー
はあん!この香り!コーヒーの香りだわ!
そしてひとくち
あん♪美味しいーーーーい♪
ん~~~~~♪
わたくしはうっとりと目を閉じ、コーヒーを味わい尽くす!
「苦く無いのか?」
陛下のお言葉に、わたくし首を振り
「こんなに美味しい飲み物がこの世にあるなんて!
わたくしエリザベート!
生きてた甲斐がございましたわ!」
と睨む。ギリリと睨む。ギリリリリと睨み付ける。
国王陛下。思わず目を背けて
「そんなに気に入ったなら。
のちほど公爵邸に届けさせよう」
と宣った!
やった!
コーヒーゲットだぜ!
うん。
コーヒー大好きだよ。
毎朝豆からゴリゴリ。
ハリオのv60円錐形ドリッパーで淹れた
コーヒーはスッキリして美味しいよ。
抽出時間も短いしね。
お試しください。