メロメロに溶かしたい
ここは【白蓮の間】
王妃のプライベートなお茶会用の部屋。
テーブルを挟んで正面には国王陛下。
その右隣には王妃陛下がおられます。
朝食を終え、新しい紅茶が出されて、国王陛下が話しはじめたのよ
「エリザベート。降臨なされたエリザ様からソチ『聞いてみろ』と言われたことがある。
変な話だが、ソチはソチの孫の事を良く知っていると言っていた。真か?」
「エリザベスの事でございましょうか?」
わたしは当たり前のように答えた。
しくった
「エリザベスというのか?もう名前まで付けておるのか……」
もうてっきり知っているものと思いつい孫の名前を、口からこぼしてしまった。まだ生まれもなにもせぬ孫の名前を知っている十歳児なんて、おかしいだろ!
追及されれば、エリザ様から聞いたの一点突破しかあるまいて!
「エリザベート。エリザ様はな。その孫のエリザベスが王妃となるかどうか、ソチが良く知っているというがマコトか?」
「はい存じております。もしそれがわたくしの知っているエリザベスの事をは指すのでしたら……と前提がつきますが」
国王は考え込み、しばらく間を置いてより聞いた
「そのエリザベスはもちろん王妃となるのであろうな?」
「なるもんですか!」
わたしくしは思わず立ち上がって叫んでしまった。
エリザベス様の伴侶となるお方は、フォラリス王国第ニ王子レイン・オパール・フォラリス殿下と決まっている!わたくしの最愛の人!
ゲームの中ではね。
あの女滴しの王太子のお相手はソフィア・ローレンス様。あれ程王妃にふさわしい女はおるまいて!
絶対絶対絶対あの頭のおかしいピンク女に渡してなるもんですか!
はっ。
「失礼致しました。つい。取り乱してしまいました」
「いや。良い。気にするでない。
ここは【白蓮の間】だ。余らにとってソチは家族も同然だ。エリザベートよ。なぜソチの孫は王妃になれんのだ?代々優先的に王妃の座はテイラム家の者と決まっておる。時折血が濃くなりすぎぬように調整はされるがな。
なれぬというならば、ソチの孫は王家の者に連なっておるのか?」
そういえばそうだ?何故にエリザベス様は王妃になれないのだろうか?
この時代のテイラム家は王妃になるのが当たり前。ローレンス家は公爵としてはマクシミリアン家に次いで第三席。しかもソフィア様のお母様は身分の低い者との設定だったような?
尚更エリザベス様が王妃になれぬ道理が分からない。
政変でもあって、テイラム家が公爵家筆頭の座から滑り落ちたか?
それに……孫のエリザベスがテイラム家の者ならばやはり……わたくしは……
「いえ。エリザベスの名は、エリザベス・テイラム。
公爵令嬢です。
その……国王陛下……もし孫のエリザベスがテイラム家の者ならばわたくしはやはり……王妃にはなっていないのでしょうか?」
最後の方はほとんど独り言だ。
孫のエリザベスがテイラム公爵家の者ならば、婆さんたるわたくしもテイラム家の者……。
王妃が疑問に答えをくれた
「あなたがエアリスと結婚して子が授かり、その中に女の子がおりましたら下賜されるのが常套です。
テイラム家の次代が男子ならば、その子に嫁いだのでしょう」
さも当たり前に言われた。
言われてみればそうだ。
小説版エリザベートはテイラム家に残る。
だから自動的に孫のエリザベスもテイラム家に連なる。
でも。
エリザベス様はエリザベートとエアリス殿下の弟君。第三王子と結ばれてその血統から生まれ出た者。
もしわたくしがエアリス殿下と結ばれたとして、その血統から果たしてエリザベス様が生まれるのだろうか?
そうは思えない。
エリザ様は孫はわたくしが良く知っているといわれたそうだ。わたくしはエリザベス様しかしらない。
なら。わたしくしエリザベートはどう足掻いても、エアリス殿下とは結ばれず、王妃にもなれないということか?
─大人しく身を引くか?
それが歴史の強制とやらならば、わたくしはどう足掻いても王妃は無理かもしれない。
でもわたくしは何も知らないエリザベートではない。
わたくしは…わたしはオクダタエコだ!
オクダタエコが目覚めたからには、何かしら意味がある筈だ。
歴史の強制から外れた者かもしれない。
ともかく何もせず、何者にもなれず、流れに流されて後悔するなんて真っ平御免だ!
あがきに足掻いてみっともなくもエアリス殿下にしがみついて、もしそれで殿下から振り落とされることがあっても、まだ諦めは付くだろう。
何もせず後悔ばかりでテイラム家で老後なんぞ送りたくはない。
─よし決めた!
これから何度でも決めてやる!
エアリス殿下を諦めない!
もしわたくしが王妃の座から引きずり下ろされることがあれば、エアリス殿下をも王の座から引っ剥がしてテイラム家に連れ込めばいい話だ!
─な~んだ。簡単だ。
エアリス殿下をわたくしの魅力でメロメロにすればいい話でなないか!
〈わたくしは思い切り地雷を踏んでしまった〉
オクダタエコは男を誑かす術など何も知らない。
メロメロメローから一番ほど遠い存在だったわ!
思わず頭を抱えてしまった。
わたしはすかさず王妃様にすがってしまった
「王妃様!わたくしに魅力的な女になる術を教えてくださいまし!
わたくし!エアリス殿下をわたくしの魅力でメロメロに溶かしたいのでごさいます!」
何言っちゃているんだろわたくし。
もうグッチョグチョ。
今の発言から我に返り、わたくしは気恥ずかしさに顔を覆った
うふふふふ
王妃様は嬉しそうに笑った
「何をおっしゃっていられるのですか?エリザベート様?」
はい。すいやせん。つい。
本音がボロけてしやいやした
うふふふふ……ふふっ
王妃様はもう一度、更に嬉しそうに笑い
「もう蕩けていますよエアリスは……」
驚いて顔をあげると、王妃は微笑み
「わたくしからもう奪ったではありませんか!
エリザベート!!」
そしてわたくしをギリリと睨まれた。
ひいいい~~~。
わたくしは恐ろしさに実を縮みすくめた!
こんなに怖かったんだ!
わたくしの目力も!
流石テイラム家!




