ヒラタミキ
ヒラタミキ
お局様三人衆の筆頭。
33歳。まあ美人。だと自称。
モテモテの時、三股してバレてぐちゃぐちゃになって皆に振られて、会社にも広まって婚期を逃して今に至る。
まあモテモテ絶頂期の時、オクダタエコが入社してきた。目付きがやたら悪く、ダサくて暗くてどうしようもない女。それに黒縁メガネって?
あたし。こいつを馬鹿にしていた。
確かに目付きは怖かったけど、ジョシコーセー時代ヤンキーとつるんでガン飛ばしあったから、少しは耐性があった。
オクダタエコはホント暗くてうだつのあがらない地味な女だからさ。あたし。何かにつけて意地悪してた。
例えばさ。重要書類わざと抜いたりさ。
会社終了間際にゴソッと書類おっつけたりさ。
思い付く限りイロイロやった。
まあ。あたし。イヤな女の自覚ある。
でもさ。オクダタエコ。嫌な顔一つしないで仕事こなすんだよね。
一人会社に残ってさ。あたしのおっつけ書類淡々とこなしてさ。
普通さ。自分の仕事してもらったらさ。有難いとかさ。申し訳ないとかあるじゃん。
でもさ。あたし。こいつバカーって思ってさ。あたしの仕事。半分くらいやらせてた。
そしてあちこち男作って遊んでた。
まあ。流石に。会社で三股はマズッた。
でもさ。浮気じゃなかったからさ。奥さん持ちとかには手を出さなかったからさ。会社には残れた。
で。気が付いたら。オクダタエコ。
お局様と云われてた。
バカーって思ったよ。まだ若いよー。25歳にもなってないよー。もう人生終わってると思ったよ。
でさ。なんでかさ。みんなオクダタエコの言う事聞くんだよね。特に後輩がねー。先輩差し置いてオクダタエコに指示を仰ぐんだよね。
でさ。オクダタエコ。それを庶務課の課長にゴソッって持っていくんだよね。課長さ。それをそのままオクダタエコに渡してやらせるんだよね。
オクダタエコ淡々とこなすんだよ。
その内全部終わらせてから、課長に渡すようになったんだよね。
あたし。思ったよ。
これ課長必要無いじゃんってさ。
課長の仕事ほぼ全て代行してんだよ。
課長。仕事する振りしててさ。パソコンでトランプゲームばかりやってた。
でさ。先輩がさ。なんかさ。
自分のミスをオクダタエコにかぶせてさ。
それが発覚したわけ。
でもオクダタエコが指摘したわけじゃないの。それを見ていた後輩がさ
「これ先輩のミスですよね!だってタエコさん。こんな初歩的なミス絶対しませんから!」
って徒党組んで団結して吊し上げてさ。
先輩。取り敢えず。謝罪に行ったんだよね。オクダタエコのところに。でさ。オクダタエコ。先輩の言い訳聞いてさ。何も言わずにじっと聞いてんの。
聞いてんのかな?見てんのかな?
何も言わずじっと見てる。
あたしはさ。オクダタエコを観察するのが趣味だからさ。睨んでいないってわかってんだけどさ。
たぶん。先輩。ヘビに睨まれたカエルになっててさ。
汗ダバダバだしててさ。
突然泣き出して、土下座して
「許してください!あなたの下僕になります!」
なんてさ。下僕って?今時誰使うのって言葉発してさ。忠誠誓ってた。
それから次の週には課長になっていた。
でさ。オクダタエコ。課長になっても何にも変わん無いの。ホント。席が変わったくらい。
相変わらず暗い顔でさ。黒縁メガネでさ。スーツもさ。濃紺のダサ地味なやつ。笑っちゃうくらい変わんないの。後は。トランプゲームなんてやらないしさ。
それと。オクダタエコ。何気に。教えるの上手でさ。
後輩が聞きに来ると嫌な顔ひとつしないでさ。いつもの淡々で教えるわけ。解るまでね。
でさ。仕事押せ押せになるでしょう?でもね。なにも文句言わずに残業して終わらせて帰るの。
その内後輩達もね。自分の為にオクダタエコが残業したりするわけでしょう?だからね。新入社員とかにはね。オクダタエコに教えて貰ったことを教え合う訳。
それでも分からない事があればさ。オクダタエコに聞いて。それを皆で教え合って共有するわけ。
あっ。オクダタエコに絶対の服従を誓ったお局様もさ。
その頃には一緒になって後輩教えてんの。
毒気を抜かれちゃってさ。野良猫が飼い猫になったみたいに、大人しくなった。
でさ。なんかさ。庶務課ぐるぐる回り始めたのね。なんか。効率良く動いてね。みんなさ。イキイキし出してさ。教えあってさ。先輩も後輩もなく。オクダタエコを盛り立てるわけ。
でもさ。それでもオクダタエコ。全然変わらないよ。ホント。偉ぶらないし。文句言わないし。愚痴らないし。
可愛げがないし。
で。あたし。完全にあぶれたわけ。当たり前だよね。
難しい仕事をさ。ほとんどさ。オクダタエコにおっつけてたし。仕事出来ないしさ。あんまりモテなくなったしさ。お茶汲みばかりしてた。
でさ。ある日。あたしのとこにきてさ。ここに会社の名前と今日の日付書けとか言うわけ。書きますよそれは。
十枚書類あったら。名前と日付だけ十枚書かせるの。それをオクダタエコにもってくの。
「ありがと」
なんていわれてさ。次の書類にも会社名と日付だけ。
その内。別な事も書かされる。でも。全部あたしが出来ること。それが少しづつ増えていって。いつしか書類一枚全部自分で書けるようになっていた。
はじめは簡単な書類。
書いて持っていくと
「ありがと。よく。できました」
なんて。無表情でいう。
なんか。クセになるんだよね。褒められるの。
もっと。もっと。て思ってさ。このあたしがだよ?
仕事バリバリ出来るようになっていた。
以前の三倍の仕事こなせるようになってさ。
そんなあたしにいうんだよね。
「わたし。あなたに。鍛えられました。その。恩返しです」
あたし。キョトンとしちゃってさ。一応。
「どういたしまして」
なんて。言ったけどさ。ホント。
なんのことやら。
さっぱり分かりません。
この庶務課のお局様エピソードが降りてきた時
スゴく戸惑ったよ。
え?ボンボンの続きは?
ブティックのカンバシラリョウさんの
─ありえないわ!
は、どーなったのさ?
そして怒涛のお局様攻撃!
でも疑問持ちつつ書き続けて良かったよ。
オクダタエコのちょっとした
生きざまがね、いい感じ。




