コウサカジン
コウサカジンは母コウサカレイに説教をくらった。
ホテルの一件がオクダタエコを通じて明るみになり
[なぜ襲わなかった!]
と反社会的な事をしなかったのが、気にくわないらしい。
本来ならば良くやったと褒められてしかるべきかと思われるが、良い大人何だからなんやかんやと理由付け
[オクダタエコ落とせ!]
と厳命された。
ただし。今週以内という条件だ。
オクダタエコが長期休暇に入ったらTELや接触禁止を言い渡された。
実はコウサカジンはその長期休暇のオクダタエコに、デートを申し込むつもりでいた。
本当に心の底から大切な女性だから、例え遠回りに思えてもキチンと順を追って、しっかり手続きを踏みながら今年中には結婚の約束まで持っていきたいと思っている。
母のいう襲うなどという行為は、コウサカジンにとっては絶対あり得ない事である。
それにあの飲み屋でのぶっちゃけが本当なら、尚更である。あのときばかりはコウサカジンは天にも昇る心地であった。
別にコウサカジンは結婚やお付き合いに際して、相手に身勝手な清らかさを求める《処女信仰》はない。それでもやはりオクダタエコが他の男に抱かれている姿など想像したくない。
そして結婚まではその乙女を守ってあげたい気がした。
というとカッコ付けだが、あのドストライクな体型にはまったら理性が飛びそうで怖いだけだ。
『さて。どうしたものか』
あのお堅い難攻不落のオクダタエコを落とす。
大阪城を前にしたトクガワイエヤスの気分だ。
先ずは外堀を埋めるのが常道。既成事実を積み上げて……なんて騙すような事はしたくない。
やはり正々堂々と正面突破をするしかないのか?
だがその前に、ボンボン丸の犬扱いをどうにかするのが先ではないだろうか?
何度かボンボンとか、ボンボン丸とか呼ばれた事がある。あの目は絶対自分をペット扱いしていたという確信がある。
仕事も覚えてきたし、会社の人の名前も粗方言える。
まだなぜか配属先が決まっていないが、決まったらがむしゃらに働いて少しでも男として見て貰えるようにしないと……。
でも何でだ?なぜオクダタエコはいつもボクを子供扱い犬扱いをするのだろう?周りの人々からは、その年齢にしてはしっかりしていると言われているし……何が足りないのだろう?
☆
──その疑問の答えが、いつもオクダタエコに見惚れてポケーっと口を半開きにしただらしなく見える顔が要員とは、夢にも思わないコウサカジンであった──
☆
そんな思考の最中。
その難攻不落がやってきた
「この前はありがと。はい。立て替えてくれたホテル代」
よりにもよってここはピーチクパーチク噂好きのあつまる庶務課の真っ只中。
海千山千のお姉様達が興味深々すぎるギラついた視線……いや!顔ごとこっちに向けている!
いや体ごと前のめりになっている!
一言一句聞き逃すまいという気概に溢れた眼差しを向けている
「あ。いいですのに」
「何を言っているのですか?飲み屋でわたしの愚痴にお付き合いいただいて、酔ったわたしを介抱してくれて、前後不覚に陥ったわたしを近くビジネスホテルまで運んでくれた。その上わたしだけが眠りこけたホテル代まで出して貰ったとなれば、わたしの沽券に関わります。
受け取っていただけないと困ります」
そこまで言われたら受け取りますよ。
少し多めに入っていたが
『お気持ちです』
と返された。
そしてここの庶務課で自分に声をかけたのはきっと狙ってのことだ。こそこそ渡してあらぬ疑いをかけられてピーチクパーチク、尾ひれや背びれがついて噂が広まるのを阻止したに違いない。
それほどまでに自分との間に壁をこしらえたいのだろうか?コウサカジンは思った。
だが、オクダタエコは自分との仲にあらぬ噂をたてられてコウサカジンの社長のボンボンというブランドに、傷が付くのを防いだだけだ。
こんな女との仲が疑われたら可哀想という想いもある。
どちらかと云わなくても好意に傾いてる。
─何処までも平行線。交わらない二人であった。
そしてオクダタエコは踵を返し颯爽と庶務課を後にする。すると急に立ち止まりこちらへツカツカ歩いて、眼前で止まった。
オクダタエコとコウサカジンはほんの束の間見つめ合う
「これだけでは済みませんから何かご要望がありましたら、わたしの出来る範囲でお礼させて下さい。
考えておいて下さい」
そのまま踵を返そうとしたところを
「なにか!手作り!」
「手作りの何ですか?」
上半身をねじまげる
「タエコさん手作りのご飯が食べたいです」
「……」
「……」
庶務課の時間が凍結した
「そんなのでいいのですか?」
「それがいいんです」
オクダタエコは不思議そうな顔をして
「人にお出しできるようなものなんて、オムライスしか出来ませんよ」
「オムライスが食べたいです」
タエコはちょっと上目遣いで考えて
「今日月曜日は妹と会う約束がありますので、明日なら空いていますが、それでもよろしいでしょうか?
そのあとは予定が入りそうです」
「はい。明日はバッチリ空いてます。
無くてもこじ開けます」
ふふっ。オクダタエコは笑って
「なら明日。わたしのアパートへ案内します。
よろしくて?」
「はい。喜んでお供します!」
またフフフと微笑んで、また去って行った。
途中で止まり
「ホントにそんなのでいいんですか?」
としつこいので
「それが何よりいいんです!!」
コウサカジンは叫んだ!
「そうですか」
何事もなかったかのように去っていくオクダタエコ。
見送るコウサカジンは小さくガッツポーズをした。
そしてコウサカジンもその場を去った
ぴ。ぴ。
ぴ。ぴ。ぴ。ぴ。
ぴ。ぴ。ぴ。ぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴ
ぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴ
ピーチク
ぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴ
ぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴ
パーチク
ぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴ
ぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴ
ぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴ
庶務課の小鳥達が一斉にさえずりだし
それが会社全体へ広がるのに
そう時間はかからなかった
いよいよ三章開幕です!
補足です
文中でもありましたが
これは妹オクダミナコと会うその日の話
月曜日
この後退社して、喫茶レトロで妹と合流し
リョウさんに会ってゴミ認定される流れです
火曜日 コウサカジンに手作り料理
水曜日 オクダタエコ変身作戦会議になる予定!
そして週末から長期休暇。
4月初頭。新入社員への訓示に合わせて
社長オクダタエコの御披露目です!
インスピレーションが降りてきたままに
書いているので
???とこんがらがったので
ちょっとまとめてみたぞ。
ちなみにコウサカジン。
社長の息子として研修生として
一人だけ早期出社しているぞ!
というのは建前。
母コウサカレイの差し金ね。




