失礼……人間でした
金豚は焦っていた。
失礼。
人間でした。
ブクブクボヨボヨ怠惰な肥満。
目は濁り。
あごは二重顎。
うつむくと五重顎。
頭の金の髪の毛はきもーちズレている。
ズラだね。カツラ。
エリザベートの前で頭を掻きむしってから、何故かズレ安くなった。
そして孤立している。
「なんでこうなった!
すべてあいつのせいだ!
あの魔女のせいだ!」
そうたったひとり残された室内で、喚いているこの男は
エドモント・フォラリウス
29歳。
一応王族の端くれだが、王位継承権もなく、ミドルネームも許されていない。
そして姓はフォラリウス。
王族の姓フォラリスより一文字『ウ』が多い。
これは王位継承権がないですよ。
一応王族に準ずる特権はありますけど、一代限りですよ。
王族特権といっても、色々な催しに優先的に出席できる的なもの。
毎回同じ服装という訳にはいかないからね、出費も嵩むのよ。でもさ、端くれだからさ、収入がアレな訳よ。
スポンサーもつきにくいしね。
だって王位継承権ないんだよ!担ぎ上げても、誰も食いつきませんよ。
必然的に疎外されて主流から逸れ外されていく……
でも良いところもある。
公務員的な職務に優先的につける。まあ
『余計な事するなよ!その代わり生活出来るようにしたる!』
な感じだね。
でもそれでも適正試験とか受ける訳よ。
馬鹿には出来ない。
で、こいつ。
ブタモント失礼エドモント。
彼、落ちちゃった!
それで親に泣きつき、王太子殿下の従者の端くれに収まることができたのさ。
王太子殿下の付き人って将来側近になる訳でしょ?
てことはエリートが付くわけ。
でもさ、こいつ。エドモント。
自分が偉い。そしてエリートと勘違いしちゃった訳よ!
簡単な試験落ちたのにね。馬鹿なのにね。馬鹿だからかな?オレスゲーに変貌したのよ。
そして従者の中で一番身分が高かった。
そして王太子殿下の付き人をアゴでこき使うようになった。
従者も逆らいズライしね。
でも反抗する者もいた。
そんな時は他の従者を仲間にして、自分に反抗した者を徹底無視した。
そして一番使う手が、自分に逆らう者には
《王子のスケジュールを教えない》ってこと。
王太子は立場上様々な催しなど出席することが多い。
それに付随する準備も色々かかるでしょ。
それから除け者にする。
それで相手が自分に靡けばそれでよし、言うこと聞かなければ徹底無視で心神耗弱に追い込んで辞めさせる。
「何故教えてくれない!」
と反抗するようなら
「殿下の付き人たるもの。
いちいち聞かずとも知っているのが当たり前。
お前に従者の資格なし!」
と無能が無能とバレるのが怖くていかにも言いそうな決めセリフを吐く!
でさ。エドモント君。
スケジュール教えて貰えなかったの
「何故オレ様に教えない!
オレ様を誰だと心得る!」
と凄んでみたら自分の先のセリフ
『殿下の付き人たるものうんぬんかんぬん』
を突き付けられた。
それだけじゃない。
他の従者に徹底無視されている。
脅してみても、凄んでみても、全然ダメ。
誰も言うこと聞いてくれない!
命令してみても
「我ら従者は殿下の命令は聞きますが、たかが従者であるあなた様の命令など聞く謂れはありませぬ」
と取り合わない。
そして皆、目の色変えて王太子殿下に使えている。
「何があった?」
あの日からだ。
殿下がエリザベート公爵令嬢と会ったあの日から、皆変わってしまった!
そしてありありと覚えている。
あの恐ろしい悪魔のようなエリザベート様の姿を……。
「魔女だ!」
魔女に違いない!
エドモントは確信した。
オレ様が安らかな眠りについていた間に何かあったのだ!
↓
きっと優秀なオレ様以外、呪われたに違いない。
↓
そして洗脳された。
↓
オレ様が洗脳から解除させねば!
↓
そしていつものようにオレ様の言いなりにさせねば!
↓
困った時は父に泣きつかねば!
と、馬鹿が加速し親に泣きつきに行った。
一応会ってはくれた。
エドモントの父は、先代国王の四番目の兄弟。
今は代替わりしているので、王位継承権もかろうじてぶら下がっているようなもの。
権力の中枢からはずれている。
もはや隠居扱いで、政治的な危険人物ではないから国王からすれば話し安く相談しやすい。
でもあくまでご意見番的な相談役。
権力はありません。
そんな父に泣きついた!
父の屋敷で面会し喚いた
「エリザベート様は魔女です!
わたしエドモントはこの目でしかと見ました!
あのエリザベート様は恐ろしき呪いを駆使し、殿下の従者を操っています!
直ぐ様!皆を罷免し、並外れた精神力で呪いをはね除けたわたしが選らんた従者を、殿下につけるべきです!」
父は胡散臭そうな目でエドモントを見ていたが、大きくため息をつき
「相分かった。この旨国王に相談してみよう。
エドモント。一週間以内に呼び出しがあるだろう。
それまでは大人しくしているのだぞ」
そう言い残し、エドモントの父は去っていった。
もう何を言っても面会して貰えなかった。
豪華な夕食を当てにしていたのに、直ぐに屋敷から追い出された。
豚はお腹をすかせていた……。
そして一週間後
豚は国王に呼びだされた。
失礼。
人間でした……。
こういう閑話的な話が続くと
いいのかな~と不安になってくる
本筋どしどし進めた方が
いいのかな~
読者さん
離れてしまうんじゃないか?
そんな不安が沸き上がる
でもね
いくら本筋を考えても
面白い話が思い付かない
たぶんこの閑話ぽいのを
ちゃんと書いて世に出したら
御褒美に次の話が
沸いてくるんのだと思う
そして次の話
面白かった!
馬鹿だよ金豚!