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転生前が学生の貴族は異世界に何を望むのか  作者: 朝丸
第1章 幼年期編 〜転生先は貴族の三男〜
4/26

4 英語の授業よりは簡単なはずだ

 赤ちゃんの赤ちゃんによる赤ちゃんのための赤ちゃんプレイを回避した。


 覚醒して真っ先に思ったのがこれであるのは、果たしてどうなのだろうか。

 ……仕方ないじゃん、暫定「ママ」によるお食事タイムで欲情する赤ん坊とか字面だけでもやばいって! これから先どれだけ時間が経っても絶対黒歴史になるって!

 大丈夫、僕は正常だ。あれは食欲に基づいたものであると断言できる。実際その通りだし。

 落ち着け、深呼吸するんだ。


 スゥ〜〜 ハァ〜〜


 ……よし、バカなこと考えてたら頭が冷えてきた。

 転生ものの主人公にとっての第一の鬼門だが、どうやら僕は自意識が弱いという形で乗り切ったようだ。

 記憶を引き継ぐと言われた時点で覚悟していたのだが、記憶は何かきっかけがあって思い出す、という事らしい。

 ……きっかけが女神様っていうのもちょっと気恥ずかしいな。


 髪は前世と違って赤色混じりの茶髪だが、肌の色は同じ肌色だし、あそこにはしっかり息子がついている。見た目で差別されるのがテンプレな獣人とか魔人とかではなさそうだ。いるのか知らんけど。

 転生先としては最高の条件ではなかろうか。無論、僕にとってだが。



 一旦考えるのをやめて少しまわりを見渡してみると、小さい味方改め「クヌギ」ちゃんが部屋の窓を鼻歌まじりに雑巾がけしていた。

 腰までかかった栗色の髪に可愛らしく瞬きを繰り返す目など、前世でも見たことのないレベルの美少女(推定年齢10歳)である彼女だが、それ以上に見慣れないのは彼女が身につけている衣服である。



 おそらく……メイド服であります! 吾輩、感激であります!



 ……いけない、まだ少しバカが残っていたようだ。テンションも一人称もおかしくなっている。

 前世において、世の中にメイド喫茶なるものがあることは知っていたが、実際に目の当たりにする機会などかけらもなかった。まぁあれはパチモンってよく言われてるけど。

 こう見るとあれだね、やっぱりメイドは全男子の夢だよね。僕はロリコンじゃないからそういう目で見ているわけじゃないけど、眼福である。可愛いは正義であり、よってメイドもまた正義なのだ!

 ……落ち着け、僕。



 改めて彼女の方へ視線を向ける。

 所謂クラシック系メイド服を身に纏い、いまだ掃除を続けている「クヌギ」ちゃんだが、一体彼女は何者なのか。

 おそらく……見たまんまのメイド、それも僕につけられた専属メイドってやつだろう。


 この世界で意識がはっきりとしていた頃から彼女は僕のすぐそばにずっといた。僕に「食事」をあたえていたのが「ママ」であったことから、乳母でもないと思う。

 ……いやあの見た目で出るとは思わないけど。


 果たして専属メイドを雇うのがどれ程の経済基盤をもつ家庭なのかはわからないが、おそらく僕はそこそこ裕福な家に生まれてきたのだろう。

 女神メメ様も前世の評価がどうのこうのと言っていたから、僕の前世の行動は善と判断されたってことだろうか。



 ……あいつらも転生してんだよなぁ。



 取り敢えず、今世で僕が「幸せ」になるための第一段階として……言葉を覚えなければならない。

 考えるだけで頭が痛くなる問題である。前世では、国語も英語もどちらも決して得意ではない科目だった。

 とはいえ、この世界の情報を取り込むためにも言語の獲得は絶対に必要だ。


 今の僕の語彙(ごい)は「パパ」「ママ」「クヌギ」「ラン」だけだ。全て人を指す言葉である。

 覚醒前に大きい味方改め「パパ」さんと「ママ」さんが僕に何度も呼びかけてきたもので、僕が繰り返すと大いに盛り上がっていたから、僕も嬉しくなって何回も繰り返した覚えがある。

 ……というか、当時の僕も意味がわかっていたわけじゃないんだけど、親目線だと個人として認識してもらえたって感じだったんだろうな。



 「ラン」は「クヌギ」ちゃんが普段の生活で僕に呼びかけていた言葉で、おそらく僕のファーストネームだ。「クヌギ」ちゃんが僕に呼びかけていた時はその後に何かくっついていたが、「パパ」さんと「ママ」さんの呼ぶ中にはついていなかったから、くんとかちゃんとか或いは敬称なんだろう。

 「クヌギ」も「クヌギ」ちゃんが自分を指して繰り返していたからおそらく彼女の名前だろうと予測がつくのだが、「パパ」「ママ」に関しては少々厄介だ。


 発音が日本語のパパとママと同じなのである。


 これが果たして一般的な単語なのか個人名なのかわからないので取り敢えずさん付けで呼んでいる。

 あるいは彼らは親ですらないのかもしれないが、もしこれが一般的なもので、日本語の「父さん」「母さん」「親父」「お袋」などにも対応している場合、日本での記憶を持つ僕には精神的ダメージが大きそうだ。歳のいった男が自分の親をパパ、ママと呼ぶ絵面は……うん、想像しただけでやばい。



 まあ、現時点で4単語しか認識していない僕だけど、そこまで心配はしていない。右も左もわからないこの世界だが、「右」と「左」はわかるのだ。対応する日本語があるものは置き換えて覚えればいい。これが前世の記憶のアドバンテージってやつだな。


 それに「クヌギ」ちゃんはいつも僕の側にいる。いわば家庭教師が常にいる環境での一科目集中の勉強だ。学校の英語の授業より圧倒的に恵まれている。


 あぁ、メメ様ありがとう。僕にこんな素晴らしい転生先を用意してくれて。



 こうして僕は僕自身の「幸せ」のために言語の習得に励むのであった。

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