3 目覚める前
短いです。
次話からちゃんとした書き方になります。
体の中に何か異物がある。
本来ならそこには何もないはずだ。
そう思い身じろぎするもののその異物は全く動かない。
気味が悪いのにからだには何の変化も起きない状況を大声を上げて知らせようとする。
僕は知っている。自分の味方になってくれる存在を。
僕は知っている。自分に安らぎを与えてくれる存在を。
不意に宙に浮いたような感覚に襲われ、しかし不思議と安心感を得る。
彼女が来てくれたのだとそう思い、ひどく疲労を感じて眠くなる。
眠くなる度にいつも気づくのだ。僕が大声で泣いていたことに。
♢♦︎♢♦︎
僕の目の前にあるのは味方だ。
ある時それが急にわかった。わかると同時に手を伸ばすと手に何かくっついてくる。
それが何なのかはわからないけど、僕の頭の後ろにあったりなかったりするものだ。
それがあると安心する。それのおかげで泣かなくて済む。
口を開くとそこから出てきたのは、少なくとも泣き声じゃなかった。
♢♦︎♢♦︎
味方がいっぱいいる。
大きい味方もいれば、小さい味方もいる。
僕の側にはいつも小さい味方がいて、時々僕を抱きかかえる。
小さい味方は「彼女」じゃないけど、安心して眠ることが出来る。
もう僕は泣かなくていいんだろう。
♢♦︎♢♦︎
声が聞こえた。
小さい味方が声を出しているのが聞こえた。
僕の口から出ているのが声だと気づいた。
同じ声を出そうとすると、小さい味方はいっぱい声を出してくる。
大きい味方の声が聞こえる。同じ声を出すと抱きかかえてくる。
大きい味方にかかえられているのに全然安心できない。
全然安心できないけど、僕はもう泣かなくていいんだ。
ぼくは力いっぱい声をあげた。
♢♦︎♢♦︎
僕は「彼女」を知っている。「彼女」の声も知っている。
「彼女」はいつも味方なのに、味方の中にいない。
「彼女」は何処にいるのだろうか。
僕はもう動くことが出来る。「彼女」の場所がわかれば会いに行くことが出来る。
「彼女」を思い出そうとして、思い出そうとして……
僕は「僕」を思い出した。