66.文化祭がやってくる
天文部は文化祭の準備を始めたらしい。
校友会の準備はクラス合唱の準備に先駆けて始まっている。年に一度の文化部発表の場だ。どの校友会も気合が入っている。
今年も紫ちゃんの準備を手伝っている。天文部の準備は地味だけれど楽しい。
実は先ほど、紫ちゃんから天文部の入部届を渡された。せっかくだから入部しないかと誘われたのだ。天文に詳しくないと辞退したのだが、詳しい必要なんてない、なんて紫ちゃんに言われて、グラグラと気持ちが揺らいでいる。
帰りの廊下で綱に相談してみる。
「天文部ですか? 良いのでは?」
「え? いいの? でも私詳しくないし……」
ちょっとびっくりした。反対されると思っていたのだ。
「初めから詳しい人なんていないでしょう? それに沼田さんが教えてくださいますよ」
「……そうだけど……」
「星はお嫌いですか?」
「ううん! 好きよ。綺麗だもの! でも光年とか方角とか、名前とかわからないし覚えられないわ」
自信がないのだ。宇宙は広いし難しい。
「わからないことは聞けばいいだけですよ。テストがあるわけでもありませんから」
「そう?」
「きっと周りの方が助けてくださいます」
「そうかしら」
「姫奈が入るなら、私もご一緒しますし」
「本当!? いいの? 綱も好き?」
そんな話をしたことはなかったが、綱も星が好きなのだろうか。
綱は困ったように笑った。
「ええ。……好きなんだと思います」
曖昧な答え方だったけれど、嫌いでないならいい。
綱と一緒に校友会に入れるなんて想像もしていなかったから、嬉しくなる。
「天文部は星を見る会を夜にするんですって! プラネタリウムも一緒に行くのよ! 綱と一緒ならきっと楽しいわ!」
「絶対に私も入部します」
珍しく綱が意気込んだ。
「そうよね! 星を見る会、楽しそうよね!」
「ソウデスネ」
綱の声が棒読みに聞こえたのは気のせいだろうか。顔を見ればなんだか疲れたように笑っていた。
なんだ?
不思議に思った瞬間、三峯くんと廊下ですれ違った。三峯くんは、なぜかすれ違う時に会釈してくるので、私もその度に会釈を返す。
「誰です?」
綱が問う。
「Uクラスの三峯くんよ。なんでか挨拶してくれるの。話したこともほとんどないんだけど……。何かしらね?」
「さぁ……?」
綱も不思議そうに、去っていく三峯くんの背中を眺めた。
結局、私たちは二人で天文部に入部した。
休み時間はせっせと銀河を作っている。初めて作るくせに綱の方が上手いとか、認めたくない。悔しすぎる。
ちなみに、今年も昨年のように休憩スペースを作ることにしたそうだ。とても好評だったらしい。今までで最高の客入りを記録したのだと言っていた。
去年の文化祭では、茶道部と華道部がコラボ展示をしていたので、今年は天文部もできないか提案してみた。
パソコン部に星座占いソフトで入り口で診断をしてもらい、出口で引き渡しができないか聞いてみたのだ。どうやら、できそうだという答えなので、今年は占いコラボすることになった。
星に興味のない女の子も星座には興味がある子も多い。
それを口実に、目当ての女の子を天文部誘っちゃってよ男子ぃである。入り口で占いをして、結果が出るまでイイ感じの天文部で愛を語らっちゃたりしてください。
っていうか、それまでに私はそんな男子が現れるんでしょうかね?
多分無理だから、桜庭女子招待しよう。そうしよう。
私の心は文化祭に向けてウキウキと沸き立った。







