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【5巻電子書籍&POD化】神様のドS!!~試練だらけのやり直しライフは今日もお嬢様に手厳しい~  作者: 藍上イオタ@天才魔導師の悪妻26/2/14発売
中等部二年

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58.体育祭が近づいてくる


 秋と言えば、そう体育祭である。


 今年は氷川くんと同じクラスなので、多分……本気と書いてマジと読むヤツだろう。前世では同じクラスになったことがなく、他人事だったからよかったのだが、同じクラスになるとは……。

 しかも体育祭大好き二階堂くんもいる。


 適当にやってたら絞られそうだ。


 今年も私は障害物競走(というかパン食いだよ!)に参加することになってしまい、綱も私をドナドナすることになった。障害物の最終ランナーは言わずと知れた氷川くんだ。


 願わくば今年のTシャツはゴリラを止めて頂きたいですね、ハイ。


 クラス委員長の桝さんは、表立つのは苦手なので、学級会の司会進行は綱だ。桝さんは、裏方に徹して丁寧な字で黒板に決めたことを書いてくれる。

 しかも、私のクラスには氷川くんがいる。みんなも『リーダーと言えば、氷川くん』と思っている節があり、何かあれば桝さんではなく氷川くんの顔を見てしまうのだ。

 当然のように桝さんを飛び越える視線が、なんだか少し居心地が悪い。



 今日は芙蓉会なので、芙蓉会メンバーを除いたクラスメイト達で大縄跳びの練習をしていた。

 二階堂くんが去年の経験をもとに皆をまとめる。堂々とした様子で長縄のコツを講釈垂れているけれど、それ去年の私の受け売りじゃん? まぁ、私も前世の氷川くんの受け売りだったけどさ。


 紫ちゃんはその様子をうっとりしながら眺めている。


「紫と俺が中央に入る。で、紫の反対側にバナナ姫、いい?」


 はぁぁぁ? なに勝手に紫ちゃんを呼び捨てしてるの? ちょーっと調子乗ってない??


 カチンと来て一言申し仕上げましょう!なんて思っていたら、紫ちゃんが嬉しそうに頬を赤らめて、「ハイ」なんて答えてる。


 クッソ―! リア充か! リア充だな?? 

 ああ、ごちそうさまです。末永くお幸せに。

 

 私は悟りの境地で二人に手を合わせた。


「なにやってるの?」


 紫ちゃんが不思議そうに私を見た。


「いえ、二人の幸せが尊いな、と思いまして」


 二階堂くんと紫ちゃんが顔を真っ赤にして顔を見合わせる。モジモジしだした二人に、秋の生ぬるい風が吹いた。





 大縄跳びの練習をしていると、芙蓉会から氷川くんと綱が戻って来た。綱が渋る様子の桝さんの手を引いて連れてきている。


 桝さんが体育祭の練習に混じるのは今日が初めてだった。みんな、彼女は来ないものだと思っていたから、空気がどよめく。

 そもそも自主練なので強制することなどできないし、習い事など用事が多い子も多いのだ。仕方ないと思われる人もいる一方で、芙蓉会のメンバーなのに練習に参加しない桝さんは、実のところあまり良く思われていなかった。


 氷川くんは練習の様子を見て、なんだか満足げに頷いた。きっと、隊形に文句はない、そんなところだろう。


 氷川くんたちも混ざって練習を再開する。氷川くんは紫ちゃんの横に入り、綱は私の横に入った。

 綱が一緒に入ってくれると格段に飛びやすくなる。阿吽の呼吸とでもいうのだろうか、声をかけられなくても目を見ていればわかるのだ。楽しくなってピョンピョンと跳ねる。しかし、調子に乗って来たぞ、と思う時に縄が止まった。誰かが縄にかかったのだ。

 もう一度初めから。でもやはり、これからという時に縄が止まる。


 皆のため息が重なる。


「ストーップ」


 二階堂くんの声がかかる。


「バナナ姫、場所を交換な。で、桝さんがここ」


 桝さんが綱の横に入る。きっと、桝さんが飛べていなかったのだろう。

 泣き出しそうに困った顔をしながら私と入れ替わる。


「……ごめんなさい。みんなの足を……引っ張って」

「気にしないで大丈夫ですよ。桝さんは難しい場所を飛んでただけですから」


 綱が優しくフォローする。


「でも、苦手なの」

「練習を始めたばかりですから。これから一緒に練習しましょう」

「生駒くん……ありがとう……」


 桝さんが嬉しそうに顔を赤らめた。


 なんかこれって、イイ感じの奴じゃない? 体育祭で恋が芽生えちゃう感じの奴じゃない?


 それを横目に、私は桝さんがいた場所へ入る。


「よ、バナナ姫」


 男子に声をかけられて、なんだかムッとして睨みつけた。


「なんだよ、不機嫌か?」

「そんなことないです」

「生駒取られて怒ってんなよ」

「そんなことないもん!」

「子供みたいだな」


 口を尖らせたら、笑われた。


 どうして場所移動しても、私にはいい感じのヤツ無いの? 恋が芽生えちゃうやつないの?


 神様のドSっぷり、徹底していますね?



 大縄が回りだす。桝さんは、綱と手を取り合って跳び始めた。綱は優しくタイミングを声かける。

 私はがむしゃらに跳んだ。飛んでいる間は頭が空っぽになるから気持ちがいい。


 そうしていると、アッという間に下校の時間になった。


 乱れた息を整えながら教室に戻る。体操服から制服に着替えてから下校だ。他のクラスの女子たちも、丁度更衣室に集まってきて着替え始める。


 中に詩歌ちゃんと明香ちゃんがいたから、嬉しくて駆け寄った。


「さやちゃんも、うーちゃんも練習?」

「芙蓉会の後の練習は疲れるわね」


 明香ちゃんが答える。


「え、……ええ」


 詩歌ちゃんは、なんだがギクシャクした答えで不思議になる。


「どうしたの?」


 詩歌ちゃんは周りを見渡してから、小さくため息をついた。


「……まだ始めたばかりだから仕方がないけれど、人の集まりが悪いみたいで」


 ヒソヒソと落とした声から察するに、人には聞かれたくないらしい。


 確かに今日の練習では人の集まりが悪いように見えた。みんないろんな事情がある。だから仕方ないのだけれど。だけど。

 

 私も声を落として尋ねる。


「一条くんはなんて?」

「しかたがないよ、って」


 うーん、一条くんをもって打つ手なしとは。Uクラスにはスポーツ系の男子はいなかったのだろうか?

 いや、彼がいるではないか。お祭り男の。


「八坂くんは?」

「……体育祭、来ないかもしれないわ」

「……そうなの……」


 二人でシーンとしてしまう。


 うう、なんだか責任を感じる。きっと、大黒さんとの件を八坂くんが気にしているのではないかと思った。

 そうでなければ、学校行事の好きな八坂くんだ。仕事が忙しくても、何とか都合をつけて体育祭には来る気がした。

 それに八坂くんが体育祭に出てくることを、皆楽しみにしているだろう。


 明香ちゃんが苦笑いで声を潜めた。


「姫奈ちゃんに、ちょっとお話があるわ」


 私たちは無言で着替えて、明香ちゃんと二人で人目のつかない渡り廊下の影に移動した。



「八坂くんの件ね」


 明香ちゃんが切り出す。

 私はゴクリと息を飲んだ。明香ちゃんは情報通なのだ。


「夏くらいから八坂くんに『オキニ』の子がいるみたいだ、って噂になっているの」

「そうなの?」

「ええ、同じ年くらいの一般人って言われていて……それで、少し夏休み明けからファンの子が過熱しているのよ」

「え? オキニがいるなら諦めるんじゃなくて?」

「『オキニ』が誰か八坂くんが明言してないから……、もしかしたら自分じゃないか、だとか、次のオキニには私にも可能性があるんじゃないか、って」

「ああ、そういう……」

「しかも、大黒さんが『私がオキニ』って吹聴して回っているみたいで、オキニと仲良くしていれば八坂くんとも仲良くなれるんじゃないか、みたいな流れもあるのよ」


 明香ちゃんが珍しく憤りを隠せない様子だ。言葉に少しトゲがある。


「それは……困ったわね」

「現状では、実質的に大黒さんが八坂くんの校内ファンクラブのリーダーよね。だからかなんなのか、大黒さんがやることは、自分達もやっていいってブロンズの子達まで勘違いしているわ」


 学院内に大黒さんの一大派閥が形成されつつあるということか。


 私たち二年シルバーの女子には、際立った派閥が今のところなかった。仲良しグループはあるけれど、誰かを筆頭にする感じではなかったのだ。しいて言えば、「相談事なら明香さんに」というくらいのものだった。


 うーん、面倒なことになりそうだ。


「大黒さんは実際のところオキニなの?」

「違うわ。でも八坂くんは本当のオキニに迷惑をかけないようにしているんでしょうね」


 キッパリと明香ちゃんが答える。まるでオキニが誰かを知っているみたいだった。


「誰か知ってるの?」


 問えば、私をじっと見る。そして、小さくため息をついて、頭を振った。


「……知らないけど……、大黒さんじゃないことは態度を見ていればわかるわよ」

「そんなもの?」


 八坂くんは皆に優しい王子様にしか見えない。たまに大黒はらぐろさんと聞こえることはあっても、それくらいのもので、誰にでも平等に紳士的だ。

 前世の私はボロクソ叩かれていたけれど、それを大黒さんにやっているように見えないし、やっていたら大黒さんだってさすがにファンではいられないと思う。


「そう言えば、姫奈ちゃんは夏休みに八坂くんに会った?」

「え? なんで知ってるの? た、偶々よ! たまたまパーティーで会っただけよ」


 学院のみんなには話していなかったのに、さすがの情報通。あのパーティーは私にとって大事な大事なエレナさまの思い出だ。エレナさまを良く知っている学院の子たちには話したくなかった。


「あるパーティーでね、可愛いちびっこカップルがいたって芸能人がコメントしてたらしくて。それが八坂くんとオキニじゃないかって噂なのよ。姫奈ちゃんこそ、オキニが誰のことかご存知?」


 明香ちゃんはニッコリと笑った。なんか、圧がある。なんの圧なんだ。


「し、し、しらない! しらないわよっ。私見てないわ」

「赤い花のワンピースだったんですって」


 ひぃ! それ、私!? 


「誤解よ!! そんな変な噂になってるの?」

「ドレスの色までは特定されてないわよ。されてたら、いくら大黒さんでも自分を『オキニ』なんて言えないでしょう?」

「そうよね」

「でも、私の推理ではそうかと思ったの」

「なにをどう調べたらそうなるのよ……」


 脱力して尋ねる。


「まず、八坂くんとオキニの噂を調べるために、八坂くんのタグを追ってみたの。そうしたら、何やら炎上した写真があったみたいで。その写真自体は消されていたけれど、関連してた芸能人のコメントを遡ったら、『可愛いちびっこカップル』ってあったの。それで、これが噂の大本なんだなって思って。写真について詳しく調べたら、どうやらブランドのパーティーのらしいと。そのパーティ公式写真の片隅にね、八坂くんと同じくらいの年の赤い花のワンピースの子が映ってたのよ」


 なに、探偵なの? さやちゃん……。


「根も葉もないコメントなのに……」


 実際、会場でその芸能人と話した訳でもないのだ。勝手に見て、勝手に誤解して、勝手にコメントをつけられた。


「女の子の妄想力は酷いわ。半分はワザともあるでしょうけれどね」


 はぁぁぁぁ、大きくため息をつく。

 それって、その誤解が八坂くんに迷惑をかけてるってことなの?

 

「八坂くんて学校には来てるのよね?」

「たまにね」

 

 それを聞いてゾッとした。これって、相当ヤバい感じじゃないだろうか。

 私のせいで学校に来れない人がいるとか、神様にバレたら没落コース一直線間違いなしじゃない?


 神様お願い、ちょっと待って! 頑張ってみるから。頑張ってこの状況どうにかしたいと思ってるから、お願い少し時間をください!


「ねえ、さやちゃん。今度八坂くんが学校に来たらこっそり教えてくれない?」

「ええ、でも、姫奈ちゃん八坂くんの連絡先知らないの?」

「知りませんし、知りたくありませんのよ、おほほほほ」


 八坂くんのことは心配だ、心配だけれどこれ以上仲が良いとかオキニだとか、誤解を招くようなことはご免である。

 お互いのためによくない。

 連絡先など知らない方がいいのだ。


「そうね、いろいろあるものね。こっそり連絡するわね」

「おねがい」

「こちらこそ、おねがいね」


 明香ちゃんはすがるような眼で私を見た。


 う……、荷は重いけどやるしかないか……。とりあえず、きちんと伝えよう。気にしなくていいって、そう説得するしか方法はない。


 さやちゃんと別れて教室に戻る。


 Uクラスの前で、長身の男の子に会釈をされた。私は身に覚えがなかったので、思わず振り返って他の人がいないか確かめる。しかし、私以外に誰もいない。

 良くわからなかったけれど、とりあえず会釈を返した。


 どこかで会ったのを忘れているのか、人違いなのか。

 ひとしきり考えてみたけれど、やっぱり覚えはなかった。



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