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【5巻電子書籍&POD化】神様のドS!!~試練だらけのやり直しライフは今日もお嬢様に手厳しい~  作者: 藍上イオタ@お飾り側妃は糸を引く7/5発売
番外編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

289/289

番外編 5.ジャパンオープンセール開催中!


 白山茶房の中は、朝から甘い香りで満ちていた。炊きたての餡子、香ばしい小麦の匂い。幸せしかない空間である。


 今日、私と綱は白山茶房へやってきている。

 昨日開催されたジャパンツアーの結果を受けて、修吾君二位おめでとう記念セールを開催するからである。

 タイ焼き二個セットで百五十円。十五日間の特売セールである!

 今日は朝から厨房に入り、鯛焼きをたくさん焼いている。

 焼き立てを食べてほしいのは山々だが、それでは待ち時間が長くなってしまうはずだ。


 え? そんなに人が来るかって? ……来なかったらどうしよう……。


 私は開店直前に不安になって、かったっぱしから知り合いのSNSにダイレクトマーケティングだ。

 綱はそんな私をあきれ顔で眺めている。


「大丈夫ですよ、お嬢様」

 

 店長さんはそう励ましてくれるが、読みが外れたときが怖いのだ。


「でも、野球とかにくらべて、テニスの知名度ってないじゃない? 今朝のテレビでも扱いは軽かったし……。セールって言ってもうちだけだし……。誰も気がつかなかったらどうしよう」


 企画段階では盛り上がりすぎて、冷静さを欠いていたと今になって思う。


「今更ですよ。企画のときは、逆にこのセールでテニスに関心を持ってもらいたいっておっしゃっていたじゃないですか」


 綱はあからさまに呆れた声だ。


「だって、修吾くんのお祝いだもの! 盛り上げたかったんだもの!」


 それで盛り上がらなかったら最悪である。

 キリキリする胃を抑えながら、大きくため息をついた。

 すると、綱がパンと私の背中を叩く。


「ちょっと、綱!」

「しゃっきりしてください!」

「でも、だぁってぇ……、お客さん来なかったらどうしよう……。こんなに焼いたのに無駄になっちゃうわ……」


 半べそで綱を見ると、怒ったような視線が返ってくる。


 やっぱり、怒られるわよね……。


 思わずションボリすると、綱は柔らかく微笑んだ。


「大丈夫です。売れますよ」


 不意打ちでそれはズルい!

 私は思わず赤面する。


「昨夜の内に私の知り合いにも連絡をしておきました。それに、店長さんと相談して、業者に頼んでーー」

「すいませーん! のぼり旗はどこに置きますか?」


 綱の声と同時に、入り口から声がかかった。


「……のぼり旗?」


 私が驚くと、店長さんはニヤリと口角を上げる。


「今日だけ特別に、記念セールののぼり旗を発注したんです」


 私は思わず目を見開いた。


「これで、目立つはずですよ」

「つなぁ! 店長さん、ありがとう!」

 

 私は思わずピョンと跳ねた。

 綱と店長さんは顔を見合わせて笑う。


「私はのぼり旗を設置してきます」


 綱はそう言って外へ出て行く。


「じゃ、私たちは最終チェックだ!」


 店長さんに声をかけられ、私とほかのスタッフたちも頷いた。

 時間になってシャッターを開ける。 


 目の前に広がる光景に、私は驚いた。

 ズラリと人の列ができていたのである。


 日曜日の午前十時、わざわざこのために来てくれてのか、晴人くんとそのお友達も並んでくれている。

 私は思わず晴人くんのそばに駆け寄った。


「晴人くん! 来てくれたのね! お友達の方も、いつもありがとうございます!」


 私が礼を言えば、晴人くんのお友達は元気いっぱいに返事をしてくれる。


「はぁぁい! いつもお邪魔しております!」


 なんだかとても可愛らしい。


「でも、急に朝連絡して迷惑だったかしら?」


 私が問えば、晴人くんはブンブンと首を振る。


「いや、もう昨日の内から来る予定だったから……」

「え? なんで?」

「あ、うん。ミィさんのSNSでも告知されてたし……」


 晴人くんから、意外な名前が飛び出して私は思わず綱を見た。


「私からミィさんに連絡しました」


 シレッと答える綱である。ちなみにミィさんとは、三峯くんのことである。

 私の知らないところで、援護射撃をしてくれている人たちがいたようだ。

 そんなことに気がついて、私は感謝の気持ちで胸がいっぱいになる。


「綱、ありがと。ミィさんにもよろしく言っておいてね」

「はい」


 綱は表情も変えずに簡単に答える。


「っあ、あの! た、タイ焼きのおすすめはぁ、なんでありますかっ!」


 晴人くんのお友達に問われて、私は微笑む。


「伝統の粒あんと、私の開発した蕎麦生地もおすすめですよ」

「はっはぃぃぃ……!」


 晴人くんのお友達は元気いっぱいである。


 そんなこんなで気がつくと、どんどん列が伸びてきた。若い人たちが中心だ。ミィさんの視聴者なのだろう。

 若者の並ぶ列を見て、吸い寄せられるように人が集まってくる。

 店の角の先まで伸びて、だんだん混乱してきている。


「ど、どうしよう……」

「段ボールかなにかに列の案内を書いて最後尾に立ったほうがいいかも」


 焦る私に晴人くんがアドバイスしてくれる。


「わかった! なんて書くのがいいのかしら?」

「あ、あの、ご迷惑でなければ、ワタシがお書きいたします!」


 晴人くんのお友達が立候補してくれたので、私は店内に入ってもらい、カレンダーの裏紙に看板を書いてもらう。


【白山茶房 最後尾】という文字と矢印に、かわいい女の子がタイ焼きをくわえたイラストをササッと描いてくれた。

 あまりのクオリティの高さに私は感激し、思わず写真に撮らせてもらう。

 それを段ボールに貼り付けて、即席看板のできあがりだ。

 私は晴人くんとお友達にお礼を言い、席についてもらって好きなメニューを選んでもらう。お礼としてゆっくりしていってもらうことにしたのだ。もちろんタイ焼きはサービスだ。ついでにモロモロおのお土産を押しつけて、早速最後尾に向かう。


 ちょうどシホちゃんたちがやってきていた。学校の友達を誘ってくれたらしい。


「アネゴ! すごい列だね!」

「そうなの! 今から整理しようと思って!」


 できあがったばかりの看板を見せると、シホちゃんたちは感嘆する。


「すごーい! これ、アネゴの似顔絵? めっちゃかわいい!」


 シホちゃんに言われてシゲシゲと看板を見てみる。

 可愛らしい女の子のイラストは、言われてみると私と同じくせっ毛だ。


「え? そうかしら? かわいすぎない??」

「そんなことないよー! そっくり! しかもめちゃウマ!」

「そうなの! 晴人くんのお友達が描いてくれたのよ」

「え!? 来てるの? その……」

「来てるわよ! お礼に中でお茶してもらってるから、声かけたらいいわよ」


 私が言うと、シホちゃんはキャーッと顔を赤らめる。

 友達同士で「ラッキーだね」「運命じゃん」とはしゃぐ様子が可愛らしい。


 朝からサングラス姿の三峯くんまでやってきた。


「あ! みつ……ミィさん! その、ありがとう!」

「いやー。こんなになってるとは思わなかったよ。すごい混んでるね」


 三峯くんは列を見て苦笑いだ。


「ねぇ、お店の写真撮っていい?」

「ええ。お客さんがうつらないように配慮してくれればいいわよ」


 三峯くんは嬉々として写真を撮り始めた。

 それを見た綱はアシスタントさながらのぼり旗旗を広げて見せている。


 いつもはタイ焼き屋の列になど並ばない、桜庭の子たちもやってきた。


 ちょっと! みんな、なにやってるの? 安いなんて理由で並ばないでしょ?


 私は焦るが、かといって先に並んでいるお客さんを差し置いて、特別な対応などできない。


「姫奈ちゃん! なんで教えてくれなかったの?」


 美佐ちゃんが唇を可愛らしく尖らした。


「だって、安売りとか、興味ないと思って……。それよりどうしてわかったの?」

「島津くんのSNSを見たの! ユニフォームについているマークと同じ包み紙を写真に撮りたいのよ」


 美佐ちゃんが教えてくれて納得だ。


 有名配信者ミィさんと、修吾くんパワーでこの列なのね……。


「でも、この列に並んでもらうのは悪いわ」

「そんなことないわよ! こういうのやってみたかったから!」


 桜庭の友人たちは楽しそうにはしゃいでいる。


「人が集まって、よかったですね」


 綱がやってきた。


「でも、修吾くんの応援のためだったのに、逆に助けられちゃってちょっぴり情けないわ」


 私が肩をすくめると、綱は小さく笑った。


「違いますよ。姫奈だからみんな集まってくれたんです」


 綱の言葉に、桜庭の友人たちが頷いた。


「そうよ。姫奈ちゃんのお店だから安心して並べるし、ワクワクして待てるんだから!」


 美佐ちゃんにそう言われ、心が温まってくる。


「ありがとう!」


 私が素直に礼を言うと、みんな満足げに笑顔を返してくれた。


「さぁ、列をさばきましょう」


 綱に声をかけられ、私は人員整理に戻った。



 修吾くんの記念セールは大反響だった。

 後日、八坂くんと氷川くんもあらわれて、八坂くんのSNSで宣伝までしてくれた。

 彰仁も友達と一緒に並んでくれて、芙蓉学院内でも話題になった。

 詩歌ちゃんたちも遊びに来てくれて、私はとっても幸せだ。

 白山茶房の記念セールを見て、商店街のその他の店もまねを始めた。私と綱は、同じセールをしてくれたお店を利用するように努めた。

 おかげで今まで行ったことないお店を知ることができて大満足だ。

 こうして、十五日間のセールは無事に幕を下ろしたのだった。


『神様のドS!!~試練だらけのやり直しライフは今日もお嬢様に手厳しい~5』発売記念の番外編です。

高等部二年編、修吾くんジャパンオープン後のお話になります。


2024/12/12に5巻の配信が始まりました。

書き下ろしは、姫奈子パパの本編エピソードと番外編(氷川君)の2話となります。

紙でほしい方は、Amazonのオンデマンド (ペーパーバック)をご利用ください。



12月は告知ラッシュとなっておりまして…


・12/6配信 漫画原作『偽聖女の妹にすべてを奪われた私が本当の聖女でした』(漫画:櫻井亜矢子先生)

 

・12/12配信 小説『神様のドS!! <ループした元悪役令嬢は逆転は望まないので穏やかに暮らしたい>5』(イラスト:くろでこ先生)


・12/25発売 コミカライズ原作『私が聖女?いいえ、悪役令嬢です!~なので、全員破滅は阻止させていただきます~6』(漫画:たまゆき先生)


と色々宣伝うるさくて申し訳ないのですが、こちらもチェックしていただけると嬉しいです。


どうぞよろしくお願いいたします。




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