214.高等部二年 学園祭の準備です 2
もちろん芙蓉会の仕事もある。
今日は生徒会室に呼び出された。淡島先輩が生徒会長になってから、遠泳や学園祭など学校の大きな行事の時に何かと呼び出されるようになったのだ。嫌な記憶の残る生徒会室だけに、呼び出されるたびにギクリとする。
生徒会室の長い楕円のテーブルの楕円の頂点。お誕生日席とでもいうのだろうか。ホワイトボードを背にして淡島先輩が座っている。両サイドは葵先輩と氷川くん。氷川くんが入り口側だ。
葵先輩の横には三年生の会計、その隣に庶務の三年生が二名と、私たちと同じように呼び出されたであろう芙蓉会の三年生が三名。
氷川くんの隣には、庶務の三峯くん。そしてその隣に綱と私、詩歌ちゃんと紫ちゃんだ。八坂くんは今日は仕事でお休みである。
明香ちゃんは書記なのでホワイトボードの横に立っていた。
芙蓉学院生徒会執行部、通称ベストは生徒内でのヒエラルキーの頂点だ。芙蓉会内での決定権も彼らが持つ。今回は学園祭の芙蓉会の仕事のテコ入れのために話をしたかったのだろう。
毎年恒例の展示物スタンプラリーの準備をはじめるのだが、どうやらこのスタンプラリー、いまいち評判が良くないらしい。
展示クラスにスタンプを設置し、一定以上のスタンプを集めれば記念品が貰えるというシステムで、見学者の少ない展示ブースに人を呼び込もうという目的らしい。
昔のまま現在も生きている企画なのだが、スタンプラリーを目的に展示ブースに足を運ぶ人はほとんどいないのでは、という状況なのだ。
確かに展示クラスの片隅に、紙で作ったお花でデコレーションされた机にスタンプ台という地味な存在では気が付かれずにスルーされてしまうだろう。
実際私も去年スルーした。記念品は芙蓉学院の校章の入った文具セット。珍しいと言えば珍しいが、購買で買える。学園祭当日も購買は開いているし、実際お土産で購入していく人もいる。別にスタンプを集めてまで欲しいものでもない。
「というわけで、何かいい案はないかな?」
淡島先輩が切り出した。
「確かに地味ですよね」
うーんと考える。地味だけれど代案があるかと言えば……。
「そうだ! もうスタンプは止めません? その代わり写真を撮る場所を用意するのはどうですか?」
提案してみる。
「ああ、それいいね」
三峯くんが乗ってきた。
「写真?」
淡島先輩は怪訝な顔をして私を見た。説明しろ、そういうことだ。
「白山茶房でもそうなんですけど、SNSの写真用に使えるアイテムって結構話題になりやすいんです。だから、展示クラスに写真に撮りたくなるものを設置して、中の展示と一緒に撮ってもらうとか、やり方はいろいろあると思うんですけど、なんか、そういう感じの……!」
ざっくりとした案で上手く説明できない。
「SNSのアプリと連携した学園祭限定のスタンプやフレームを用意して、展示場所にフォトスポットを設置したらいいと思います。最後にアルバム印刷ができる場所を開放するのはどうですか? 記念品は限定スタンプとアルバムで十分だと思います」
三峯くんが提案する。淡島先輩は面白そうな顔をした。
「でも、スタンプやフレームはどうする? 簡単に作れるものなのか?」
氷川くんが問う。
「イラスト部にお願いできないかな? イラストさえ用意してもらえれば、登録とかアプリに関する手続きはオレがやれる。印刷はパソコン部の一区画を借りるとか」
三峯くんが答える。
「印刷する場所はフォトスポットを作りにくいところに分散しておいてもらうのはどうだ。印刷には時間がかかるだろうから、その間見学してもらえるだろう?」
氷川くんが言う。
「ほかに案はある? なければ、今年はそれでいってみよう」
淡島先輩に全員が賛成した。
「三峯、手続きとか面倒なところは君に頼むよ。あと全体の監督をして欲しい。よろしく」
「あ、はい」
淡島先輩がご機嫌で言えば、三峯くんは面食らったように答えた。
「紫はイラスト部に打診できる?」
「うん。喜ぶと思うわ!」
「パソコン部は生駒に頼んでもいいか」
「わかりました」
淡島先輩はてきぱきと指示を出していく。
「葵は残りの人に指示を出して。分担して各展示クラスにフォトスポットを作ってほしい旨を伝えて、そのサポートをお願いする。あまり大げさなものは作らなくていい。展示物の前で撮れる場所さえ確保してもらえばいいから。あと、参加は強制しなくていい」
「来年の引継ぎもかねて三年生と二年生で一組になっていくようにするわ」
葵先輩が答えれば、淡島先輩は満足げに微笑んだ。
「自由参加なら参加クラスの地図が必要だと思います」
明香ちゃんがいう。
「ああ、地図にカメラのマークを入れるようにしよう。葛城さんに地図は頼んでもいいかな?」
「わかりました」
どうやら今年はこれで行くらしい。
「次に会計。今年の協賛金の募集について、説明をよろしく頼む」
淡島先輩の声で会計の先輩が説明をし始める。
芙蓉学院の学園祭では、周囲のお店や企業に協賛金を募っている。その集金を芙蓉会が行っているのだ。例年の手順などを会計が説明し、役割分担について協議する。
正直この辺りはなぜ私が聞いているのだろうと思わないこともなかったが、おとなしく話を聞いた。長いものには巻かれることにしたのだ。
こうやって芙蓉会の仕事も動き出した。
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詩歌ちゃん視点のお話です。
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