215.高等部二年 学園祭の準備です 3
クラスの準備の間に、三年芙蓉会と一緒に各クラスや文化部を回ってフォトスポットやプリンターの設置協力をお願いする。
華道部などはすごく喜んで、展示室とは別に豪華なフォトスポットを正面玄関に作ってくれることになった。手芸部は着用できるアイテムを作ろうと意気込んでいる。わが天文部は月周回衛星「かぐや(SELENE)」の月面地図で月に上陸できるようにしようと盛り上がっていた。善きかな善きかな。
プリンターの設置場所には芙蓉会のメンバーが交代でサポートに入ることになった。初めての試みで上手くいくかわからないが、ちょっとワクワクした。
放課後は芙蓉会の先輩たちと協賛金集めである。ついでに不要な段ボールなどを頂いて、学園祭の材料にする。
協賛金を頂いた企業は、学園祭のパンフレットに広告を載せ、招待状と学園祭で使える前売りチケットを渡す。また、お店などには学園祭のポスターを張ってもらうのだ。
白山茶房にも協賛してもらい、ポスターも貼ってもらった。パートさんたちには私が買った前売り券を配布して自由に使ってもらうことにした。子供のいる人が多いから、子供にあげたという人も多かった。
私のように自分のうちの会社には協賛してもらうことも多いのだが、地元の企業にも協力を仰がなければならない。これがなかなか大変で、地元のお店からは学生に関する不満などの苦言をいただくこともある。
それらに真摯に対応し、協力を得なければならないのだ。古くからのお店の店主は江戸っ子だったりして口調もきつく、これがなかなかのストレスだ。
しかし、潤沢な協賛金があるからこそ、屋台なども安い金額で提供できるのだし、けっこう無茶な展示もできる。ストレスがたまるからと、安易に協賛を減らすわけにはいかないのだ。また、一度協賛を断ったところは、もう戻らない。後輩たちのためにも協賛社を確保するのは芙蓉会の務めだった。
今日は綱とCDショップへ協力をお願いしにきた。このお店は古くから協賛してくれているお店なのだが、ここ最近は苦言が多いのだと芙蓉会の先輩から聞いていた。
「協賛金? 毎年来るけど学園祭のパンフレットに広告を出したところで、売り上げに貢献しないんだよ。ほぼボランティアで出してるんだからね。わかってる?」
CDショップの店長さんは感謝しろよと言わんばかりに高圧的な態度だ。もんのすごく感じが悪い。
「毎年ありがとうございます」
綱は眉一つ動かさず頭を下げる。私はちょっぴりムカついているけれど、一応おくびにも出さない。
「どうせ、最近の子はCDなんか買わないしね。ダウンロードするんでしょ? 買っても大きいところ行くし」
グチグチと毒を吐く。
そんなこと私たちに言われたところで、どうすることもできない。品ぞろえが少なくて地味なお店より駅ビルの大きいショップのほうがPVも見れるし視聴もできる。暗くて狭くて地味でほこりをかぶったお店なんて、わざわざ入りたくないのだ。文句ばかり言ってないで、学生街のお店ならそれなりの集客努力をしろと思う。
そもそも、好きな曲を家でダウンロードできる今、場所をとるCDを買う必要もない。
「アルバムはジャケットや曲の並びなども楽しみたいですけどね」
綱が答えれば、店長さんは綱の顔をまじまじと見た。
「そういう楽しみ方を最近の子はしないんだよ」
はぁぁ、と店長さんはため息をついた。
「実は、芙蓉学院のお昼には放送部がリクエストを募って曲を流してくれているんです。リクエストで流れた曲が欲しいなと思うことはあるんですけど、探すと思うと面倒になってしまったり後回しにして忘れてしまうので、そういうのがまとまった棚とかあったらうれしいなと思うんですが」
「まぁ、情報がわかればうちでできなくもないけどね」
「本当ですか?」
綱が期待したようなまなざしで店長さんをみる。なにそれ! そんな顔で私のこと見たことないくせに!
「放送部から毎月放送した曲のランキングをお届けするように私から交渉してみます。そうしたら小さな棚でもいいので作っていただけますか?」
「ああ、それくらいならやっていいよ」
「ありがとうございます! そして交換でそちらのお店のランキングも教えてくれませんか? そのランキングを流してもらうようにいってみます」
「それでどうなる?」
「放送してほしい人はそちらのお店で購入するのではないでしょうか? 自分のおすすめのアーティストが放送されたらうれしいですから」
「……そんなもんかね?」
「子供の思い付きで、効果が出るかはわからないですが……」
綱が自信なさげに店長さんをチラリとみる。自分を下げて判断は相手にゆだねるとか、そういうテクニック使うのね。
何よ、やるじゃない。綱がすごいのは知ってたけど、なによ。
「若者の思いつきに付き合ってやるてのが大人ってもんだ。よし、うちのランキングのTOP3まではCD付きで放送部に回してやる」
ニカっと店長さんが笑う。
「ありがとうございます!」
綱が頭を下げれば、店長さんはご機嫌で頷いた。
「え! 本当ですか? それなら私もここで水谷千代子買ってくわ! 放送部にリクエストしてるのに一向にかけないのよ! ランキングならかけざるを得ないでしょ!」
「お嬢ちゃんは水谷千代子かい?」
「ええ!」
「渋いなー」
店長さんはカラカラと笑った。はじめの感じ悪い人と同じ人とは思えない。
「今年の芙蓉は見るところがあるな。協賛金だっけ? あとポスターか! 好きなところに貼っていけ!」
「「ありがとうございます!」」
二人で深く頭を下げた。
私はとりあえず、ここの水谷千代子のCDを数枚購入したら、古い水谷千代子のポスターをおまけでくれた。
なに、このお店、良いじゃない。宣伝してあげよう。







