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【5巻電子書籍&POD化】神様のドS!!~試練だらけのやり直しライフは今日もお嬢様に手厳しい~  作者: 藍上イオタ@天才魔導師の悪妻26/2/14発売
中等部一年

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15.林間学校 2

 八坂くんとバスから降りると、綱がものすごい顔で睨みつけて来た。

 

 遅れてきたことを怒っているのだろう。役員の足を引っ張って申し訳ない。


 ゴメンね、と目配せしたが、どうも許してもらえそうになかった。これは説教コース確定である。はぁ、気が重い。


 開校式が始まった。

 芙蓉会のメンバーは前の方に並んで役をこなす。一応、八坂くんもその列に並んでいた。首には私のあげたタオルがかかったままだが、それがカッコよく見えるのはイケメンだからこそだ。

 地味に綱も同じタオルを首にかけていた。白山家御用達のタオルなのだ。八坂くんと綱がペアルックになっていて、私は一人で笑ってしまった。

 司会は明香さん。初めの言葉は氷川くん。校歌斉唱では詩歌ちゃんが指揮を執った。皆で準備体操をして、開校式は終了だ。



 開校式が終わったら、部屋に荷物を置きに行く。宿泊先の部屋は、両側に二段ベッドが四台ずつ、合計八台あった。真ん中にはなにもなく通路のようになっている。ただ寝るためだけの部屋だ。テーブルもない。

 クラスの女子全員が一緒の部屋になる。そもそも芙蓉の中等部は一クラス最高で三十六人なのだ。現在、私のクラスは男子二十名、女子十四名になっている。



 自分たちのベッドを決めて、荷物もそこへ詰める。

 上段は私の背もたれを蹴った大黒典佳おおぐろのりかのグループが横並びで陣取った。私は明香さんの隣に収まることができてひと安心だ。


 一息付いたら飯盒炊爨はんごうすいさんである。私たちは芙蓉寮の給食室に顔をだし、材料を受け取ってから近くのキャンプ場へ向かった。

 ちなみに、寮の給食室には、イベントがあるときだけ臨時で白山フードサービスの関連会社が入ることになっている。



 キャンプ場について、各班に別れた。私は、大黒典佳と同じ班だ。他はクラス委員長を含めた男子四人と、大黒軍団の女子二人と私。計七人である。七~八人班が各クラスで五班ある。各班には一人ずつ芙蓉会のメンバーがリーダー役として入ることになっていた。私の班のリーダーはクラス委員長の一条くんだ。一条くんとは芙蓉館で何度か話したことがあった。



 班決めをするときに、大黒さんが優しい顔で誘ってくれたから、嬉しくてホイホイ入れてもらったのだが、もしかしたら失敗だったかもしれないと、バスの一件から考えている。


 だって、前世では仲良しだったのだ。今回だって仲良くなれると思うじゃない?

 やっぱり、誘ってくれたときに、可愛い文房具でも配っておけばよかったのかな。

 はー、友達作るのって難しい。


 芙蓉の中等部に外部から入学するものは少ない。だいたいクラスの内二十五人が持ち上がりだ。

 その上、今年は倍率が高く野心の強い男子生徒が多かった。私のクラスも外部の女子は私だけだ。もしかしたら、八坂くんのクラスだから配慮があったのかもしれない。

 

 グループのでき上がっている女子の中に入っていくのはなかなか難しい。明香さんはなにかと気遣ってくれるけれど、明香さんのグループにいるときは、入れてもらっている感がある。嫌がられてはいないけど、様子をうかがわれている感じだ。皆が少しずつ大人しくなっている気がして、申し訳ないと感じる。

 私自身同じ空気を出しているだろうから、仕方がないのだけれど。


 だからこそ、行事にかこつけて馴染めたらいいな、なんて希望を抱いていたのだが、大黒典佳はそんなつもりはないらしい。


 そもそも、嫌われるようなことしてないはずなんだけど。


 考えても仕方がない。

 私はカレーを作り始めた。大黒さんたちは、こんなことしたことなーい、とワキャワキャしている。手伝う気は皆無だ。


 はぁ、心が痛い。私も前世ではそうだった。面倒な仕事はしないで遊んでいて、他の人に押し付けたんだった……。んでもって、盛り付けだけ手伝ってやった感アピールした。

 しかも不味くて食べられないと文句まで言った。あー、私、性格悪。


 今回は反省しているので、一条くんともくもくとカレーを作る。遊び相手もいないし。

 他の男子はもっぱら飯盒に向き合っている。火の管理は任せた。

 ニンジンを切っていると、同じ班の男子がコソッとやって来た。


「白山さん、ニンジン少なめになんてできるかな? カレーのニンジン苦手でさ」

「良いですよ。少な目にして、後は大きく切ってわかりやすくするので、盛りつけの時にはずしたらどうですか?」

「マジ? 助かる!?」


 手を合わされた。中学生男子、うちの弟と同レベルなんて可愛いじゃないか! 今後君のことはニンジンくんと呼ぼう(心の中で)。

 ニンジンに、お父様に教わった飾り切を施してみる。残りはこっそり細かく刻んで入れてしまう。

 食材余るのはもったいない! 私は性格が悪いのだ。


 無事にカレーライスができ上がる。蓋を開ければ、かぐわしい香りが辺りに広まった。


「「「「おおー!!」」」」


 男子が声をあげる。


「美味しそうだね、白山さん」

「ありがとうございます」

「早く食おーぜ」


 男子がバタバタとお皿に米を盛り付ける。カレーは好みで盛ってもらう。ニンジン嫌いな人は自分で外したいだろう。


「ニンジンが星だ!」

「うわー、女子がいるとなんか違うわ!」


 大袈裟に誉めて、写真まで撮っている。力作だから誉めてもらってうれしい。


 大黒さん達は面白く無さそうな顔で私を睨んだ。

 

 うっ、これも失敗? 美味しいカレーで仲良し作戦もダメ?


「星とか子供っぽくて馬鹿みたい。そういう見た目だけのカレーって不味いのよね。食べる気しないわ」


 大黒さんが吐き捨てるように言った。


 そうか、星がやり過ぎだったか……。どうにもその辺のさじ加減がよくわからない。


「そんなことないよ、美味しそうじゃん」


 フォローするように委員長が盛り付けた皿を大黒さんに手渡せば、バカにするように見てから、まぁ食べてやっても良いけど、と嗤った。

 他のもう一人の女子もそれにならう。


 ニンジンが嫌いなニンジンくんも、星型ニンジンはひとつだけ盛り付けていた。いわく、写真ばえだそうだ。残さず食べてくれたので、それがうれしい。


 きみ、そのカレー、めっちゃニンジン入ってるけどな!


 大黒さん達は無言でカレーを食べ終わった。残されなかったので、それでよい。男子はおかわりしてくれた。ありがたや、育ち盛りは何でも美味しいに違いない。


「ちょっと、そっち食えるカレーない?」


 他の班から声がかかる。やっぱり失敗した班があったらしい。


「うちのカレー旨いよ」


 委員長が答えれば、失敗した班の子たちがカレーをもらいにやって来た。


「おお、見た目カレーになってる」

「あ、すげ、ニンジンが星じゃん」

「いや、美味しいよ、このカレー」


 あっという間に鍋の中が空になって、私はホッとした。やっぱり食べてもらえるのは嬉しい。





 食べ終わって少し時間が余ったので、私は必殺技を投入した。アルミホイルを巻いたバナナを炭に投入する。

 甘い香りが漂ってきたところで取り出して、シナモンシュガーを振った。


「うお!」

「なになに?」

「ヤキバナナです。デザートにと思って」

「うまそー」


 集まってきた男子に取り分ける。面白いらしく動画で焼く様子を取っている子もいた。お坊ちゃんめ!


「あれー、なんか美味そうな匂い」


 八坂くんもやって来て、バナナを欲しがるから取り分けてあげる。


「八坂くんもバナナ、食べるんですか?」

「? 食べるよ? なんで?」

「いえ、何でも」


 見た目的にもっとお洒落なものを食べていそうだと思っただけだ。


 何やら人が集まってきて、バナナを食べていく。やっぱりバナナは正義なのだ!


 綱はその様子を遠くから、シラッとした目で眺めていた。

 食べに来れば良いのに。


 大黒さんたちも見ていたから、声をかける。


「一緒に食べましょう? 見た目は雑ですが、意外に美味しいんですよ」

「はぁぁぁ!?」


 思いっきり睨まれた。


「なんで私がそんなものを!」

「もしよかったらと思って」


 そんなに怒られるとは思わなかった。美味しいデザートで仲良し作戦も失敗だったか。


「大黒さん、美味しいよ」


 委員長がフォローする。


「ほんとだ、旨い」

「旨いよな」


 男子たちが口々に言えば、大黒さんが吠えた。


「白山さんは男に媚びるのが上手ですこと!」

「本当にいやらしいわ」


 他の女子も追撃してくる。


「何よ、こんなもの!」


 汚いものを持つような手つきで、黒く焼けたバナナをつまんだ。そして雑巾でも投げる様に私に投げる。


 べシャリとバナナが飛んできて、私の顔に当たってつぶれた。っていうか、焼き立て熱いから!!


 大黒さんはクスクスと笑う。 


「早くお食べになったら?」


 カッチーン!


 私のことはバカにされてもしょうがない。

 だけど、バナナをバカにするな! バナナは美味しい。栄養価も高いし、消化も良い。保存も楽で持ち歩きできるし、片手で食べられる完全なるバナナを、バカにするな!

 しかも、最高級バナナなんだから!


「私たちは先に行っていますわね」


 片付けもしないで席をたった大黒さんの足元に、先ほど投げつけられたバナナの皮をそっと滑り込ませる。

 狙った通りに大コケする大黒さん。イグ・ノーベル賞万歳!


「大丈夫ですか? バナナの皮でスッ転ぶなんて、食べ物を粗末にするからバナナの神様の罰があったのかしら?」


 私が手を差し出せば、思いっきりはたかれた。大黒さんは顔を真っ赤にして去っていく。


 ザマァ!! 私は元々性格ブスなんだよっ!


「片付けしないで……行っちゃったね……」


 委員長が呆然としている。


「姫奈! 大丈夫ですか? 何をやっているんです!!」


 綱が慌ててやってきて、濡れタオルで顔を拭いてくれた。


「大丈夫よ」

「火傷は?」

「大丈夫よ」

「赤くなってる……、本当にあなたは!」


 綱がほっぺたをそっと撫でる。くすぐったくて笑ってしまう。


「もう、大袈裟よ。バナナにつけられた火傷なら本望よ」


 そう言えば、周りが笑った。


「あれ、姫奈ちゃん投げたでしょ?」


 八坂くんが愉快そうに尋ねた。


「なんのことかしら」


 素知らぬ顔をする。あくまであれは偶然です! バナナの神様の天罰です!





 明香さんもやってきて、みんなで焼きバナナを食べていると、先生が現れた。


「白山さん、少しお話があります」


 固い声に起立する。学年主任の先生が眉をしかめている。その後ろには大黒さんがニヤニヤと笑っていた。

 

 あ、くそ、チクったのね!


「せ、先生……」

「これはどういうことですか?」

「いえ、その」

「不必要なものは持ち込まない、今回のルールでしたね?」

「カレーの隠し味で使用しました」

「隠し味の量ではないのでは?」

「でも、バナナはおやつに入らないですよね!」


 必死に尋ねれば、八坂くんと委員長が吹き出した。明香さんは目をそらす。あ、ニンジンくん、君までも知らないふりか!


 いやいや、美味しく食べたんだからそこは援護しようよ!?

 

「もちろんバナナはおやつに含まれません。が、そもそもお弁当ではないでしょう!!」

「……そうでしたわ」


 どっと笑いが起こる。大黒さんが満足げに笑っていた。

 明香さんも詩歌ちゃんも笑っていた。恥ずかしい。今こそ穴を掘るべきだった。


「これは没収です」

 

 美味しく焼けた焼きバナナを没収される。


「えっ! ひどい!」 

「酷いじゃありません! こちらも没収です」


 シナモンシュガーまで没収される。


「シナモンシュガーだけは!」

「なぜです」

「明日の朝のトーストに……」

「没収です!! 今夜のキャンドルサービスには不参加で、反省文を書いてもらいます。いいですか? 今後、気を付けるように!」


 ギロリと睨まれて縮こまる。


「はい。申し訳ございませんでした」

 

 性格ブスが行動を起こすと罰が下るということか。お天道様はしっかりと見ていらっしゃるようだ。ああ、神様ひどい。

 しょんぼりとして頭を下げた。


「残念でしたわね」


 明香さんが声をかけてくれた。


「やっちゃいました……バナナ愛が裏目に出ました……」

「今度作り方を教えてください」


 明香さんのお友達が、慰めるように声をかけてくれた。優しい。


「ぜひ! 一緒にバナナを食べましょう!」


 バナナの魅力を広めたい。


「白山さんって思ったより気さくな方だったのね」

「私は前からそうお話ししてたわよ?」


 明香さんが笑う。周りも皆柔らかく笑ってくれてホッとする。少し距離が縮まった気がした。

 綱を見れば、やれやれといった顔でため息を付いていた。





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