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【5巻電子書籍&POD化】神様のドS!!~試練だらけのやり直しライフは今日もお嬢様に手厳しい~  作者: 藍上イオタ@完全無欠の悪女です2月下旬発売
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16.林間学校 3


 午後のオリエンテーリングは、すっかり男子チームに私の五人と、大黒軍団二人で別れてしまう結果になった。

 本当は私もバナナの皮を投げたことだし、お相子ということで水に流したいけれど、準備も片付けもせず文句ばかりいう大黒軍団に、男子が愛想をつかしたようだった。あんまりこういう状況は良くないと思いつつ、発言力のない私にはどうすることもできない。


 オリエンテーリングでは、体力仕事は男子に任せる。私はクイズ担当だ。


「これって何て読む?」


 出されたカードに書かれた文字は実芭蕉。


「バナナ」


 サラリと答えて見せるけど、なんてことはない。二回目でたまたま覚えていただけだ。


「白山さん、バナナ好きだよね」


 委員長が笑う。


「あはははは」


 私は白々しく笑う。


「で、本当はなんて読むの?」

「だから、本当にバナナって読むんです!」

「うそ!?」


 他の男子が笑う。すっかりバナナキャラが定着してしまった。おかしい、白山姫奈子は、芙蓉学院のお雛様のはずだったのに(思い込みです)。


「バナナ、バナナって、白山さんのお宅ってバナナ商人だったかしら?」


 後ろの方から厭味ったらしい声が響いた。

 

 めんどくさい。っていうか、前の私もこんなメンドクサイ系女子だったのか。たまらん。聞こえないふりをしてそそくさと歩き出せば、委員長が苦笑いした。


「白山さんって思ってたよりおツヨいよね」

「どういう意味ですか?」


 ああん? といいたいのをグッと抑える。こんなにか弱い令嬢を前にして何を言う。


「いや、生駒が大事大事にしてるし、桜庭女子出身でしょ? だからどんな深窓のご令嬢かと思ったけど、ただの過保護だったんだなって」

「……大事……? 過保護……?」


 キョトンとする。大事とは、過保護とは何ぞや? 私怒られてばっかりなんですけど。

 なんならもっと優しくしてほしいんですけど!?


「あれ? 自覚なかった?」

「自覚……私、怒られてばっかりなのよ?」

「うーん、そうかな? そうかもね?」


 委員長はニコニコと笑うけど、さっぱり理解できない。思春期の男子難しいわ。



 この後は少しの休憩をはさんで、夕食。その後キャンドルサービスだ。

 夕食は明香さんのグループに誘ってもらって、いつもよりは馴染めたと思う。バナナの話で盛り上がったから、バナナの神様に大感謝である。


 


 その後のキャンドルサービスは、私は欠席となった。

 教務室で反省文を書かされるのだ。

 

 キャンドルサービスの音が漏れて聞こえてくる。

 女神役は、詩歌ちゃんが務めるらしい。詩歌ちゃんの女神、見たかったなとぼんやりと思う。


 フォークダンスの音楽が流れていた。


 はぁぁぁぁ、残念だ。

 それにしたって、一体何に反省しろと? ああ、バナナの大量持ち込みだった。


 バナナ持ち込んですいませんでした。来年はしません。終了


 さすがにこれではまずいだろう。大袈裟に謝っておかなくちゃ。


 原稿用紙を前に、私は一人でウンウンと唸る。


 みんな好きな子と踊っているのかな。

 私はマイムマイムしたかったな。

 八坂くんは酷いことになっていそうで、ちょっとそれは見てみたかった。

 綱は誰かイイ子はいないんだろうか?


 っていうか! 私! 私だって、なんかいい人見つける機会だったんじゃないの!?

 林間学校で反省文書かされてる女子ってどうなの?

 もうそこらへんで残念系女子確定じゃない? 

 しかもバナナだし。


 うわぁぁぁ……、早くも出遅れてる……。

 こういうのきっかけに意識し始めちゃってさ、夏休みに約束したりとかしてさ、クリスマス前にはなんだかんだで付き合っちゃうんでしょ? そうなんでしょ?


 ガックリとうなだれる。

 大黒さんとバナナバトルしてる場合じゃなかったよ!

 性格ブス丸出しで、そんなことしてるから、罰が当たったんだ。

 ううう。神様、えぐい。


「白山さん? 反省文は進んでますか?」


 学年主任の先生が見回りに来て、私は背筋を伸ばした。



 お風呂に入って、就寝時間が近づいた。

 女の子たちがソワソワしている。今から眠るだけだって言うのに、入念に肌を整え、色つきリップなんてして、髪をきれいに結いなおしている。

 きっと、さっき仲良くなった男子と就寝前に語ろうとか、そういうやつだ。


 私はベッドで不貞腐れていた。

 大黒さんたちは、ウキウキとした様子で出かけて行ってしまった。

 残った女子だけで、ベッドの間に集まって、おやつを広げて女子トークタイムだ。


「姫奈子さんは行かないの?」

「私に出会いがないの知ってるくせに」


 フン、と言えば、明香さんは笑った。キャンドルサービスもフォークダンスもオアズケを食らったのだ。


「キャンドルサービス残念だったわね」

「ええ、本当に残念」

「生駒くんも美しかったわよ」

「綱?」

「ええ、女神さまから火を分けていただいていたわ」

「いいなぁ……私も見たかったわ」

「きっと学院でも写真を販売しますから、その時買ったら良いわよ」

「そうね。そうするわ」

「生駒くん、人気があったわよ? 誰かがお声をかけたかもしれませんわね」

「そうなの? 良い子が見つかるといいんだけれど……綱は意地悪だけど根はいい子だから幸せになって欲しいわ」


 答えれば、明香さんが驚いた顔で私を見た。


「?」

「いえ、幼馴染、でしたっけ」

「ええ、そうよ」

「幼馴染って、難しいのね」

「そんなことないわよ?」


 明香さんはウフフと笑った。


「姫奈子さんは桜庭でしたもんね」

「ええ」


 それと今の話がどうつながるのか良くわからない。


「桜庭はどんな感じでしたか? やっぱり林間学校などございます?」

 

 明香さんのご友人に尋ねられる。


「あまり変わりませんよ。ただ、慣れないな、と思ったことが一つ」

「何でしょう?」

「校外などは、絶対に一人での行動をしてはいけないんです。お手洗い一つにしても、どなたかと一緒に手を繋いで行く決まりでしたので。初等部だったからかもしれませんが、そういうことは普通ではないのね。初めは驚きました」


 みんな一人で歩いている。そのことがカルチャーショックだった。それに慣れなくて、前は氷川くんと綱に依存したのだ。


「まぁ、想像すると可愛らしいですね」


 そう言われて恥ずかしくなる。多分、安全対策のためのルールだったに違いないのだが、すっかりその世界に浸かっていると、世の中との違いがわからなくなってしまうのだ。


「やっぱり、お姉さまとかそういうのはあるんですか?」

「ええ、人気のあるお姉さまはいました」

「うわぁぁぁ……物語の世界みたい」

「私にすれば芙蓉学院の方が物語の世界のようですわ。女子ばかりの世界から来てみれば、王子様がたくさんなんですもの」


 そう言えば、みんなが笑いあった。


「確かにそうですわね」

「皆様はどなたかお声をかけたりしませんの?」


 キャイキャイと言いながら顔を見合わせ合う。

 まだ早いわ、だとか、好きな方はいるのだけれど、だとか、口々に話し合う。どなたとダンスを踊れたとか、踊れなかっただとか、本当に楽しそうで聞いているだけで幸せになる。


 やっぱり、キャンドルサービス出たかったな……。





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