面接
「ふっふっふ、ここか」
現代日本で生きてきた俺にとって目の前の西部劇にでも出てきそうな扉は正直ボロいものにしか映らない。
だが、それがいい!
茶髪にロン毛にピアスと、絶好調に学生生活を満喫していた俺だが、交通事故に合い入院。丁度クラス替えで周りがグループを作る中で浮いてしまい、休み時間の度に隣のクラスに通うという微妙にぼっち感溢れる毎日。しかも、奇しくも三年という進路を決める学年になったためか、連れの付き合いも悪くなり始め、勉強にも置いていかれ、益々孤独感は増した。
辛かった。
家にいても進学しないなら就職活動しろやらなんやら……身の置き所が無かった俺に降って湧いたチャンス。
異世界転移。
神様の説明に喰い気味にイエスと答えて、『全魔法取得の才』とやらを貰った。
隠れオタクであった俺はこれからの展開なんて手にとるように分かる。素寒貧同然で投げ出されたが関係ないね。もはや俺の人生は勝ちが決まったようなもの!
そう、ここは冒険者ギルド。建物の中からは荒くれ者共の声が聞こえてくる。
「はっはっは! コンセンティブな味だ! お姉さん、モレにこれをもう一皿!」
「き、貴様には毒すら……!?」
ワイワイと騒ぐ建物の中に入ると、予想通り酒場も兼任していた。誰かに新人と絡まれないパターンね、おけおけ。
とりあえず建物内を一頻り見回し、行列が出来ているカウンターに並んだ。多分ここで登録が出来る。
「おい兄ちゃん」
きた。
俺の後ろから肩を掴んで声を掛ける奴が! これは早速魔法の出番か?
「……なんだ」
クールに振り返る俺に、吃驚するような剃り込みを入れた緑髪の目つきの鋭い男が、親指をクイッとする。
「あんた新人だろ? ここは買取カウンターだから、隣のカウンターで登録出来るぜ? ほら、今なんて誰も並んでねーからチャンスだぜ?」
「……あ、ども」
軽く会釈して隣のカウンターに足を進める。
いい人だった。
少し恥ずかしい思いをしたが、隣のカウンターで受け付けをする。受け付け嬢は美人秘書風のお姉さんで、紫髪をアップに纏めて縁なしの眼鏡を掛けている。
「いらっしゃいませ、本日はどのようなご用件で?」
気を取り直して声を張る。
「冒険者になりたいんですが!」
始まってしまうぜ伝説! お姉さん、あんた運がいいな?
「はい、畏まりました。失礼ですがお名前の方は?」
おお、ギルドカードの作成か!?
「夜都神 真椒です!」
ふっ、田中勝は日本での名前さ……今から俺は伝説になるんだから、それに相応しい名前でないとな。いや、他の転移者対策でもある。いい奴ばかりとは限らねえからな。
「ありがとうございます。ええー……や……や……や…………失礼ですが、アポイントメントの方は取られておりますでしょうか? 若しくは申請試験予約は?」
………………。
「…………いや……とってません」
「でしたら、試験は今から予約されて、後日ということになります。面接の方は当日でも大丈夫ですが、いかがなされますか?」
「め、面接?」
「はい。面接です」
「……あ、じゃあ、はい……お願いします」
「それでは番号札三番でお待ちください」
そう言われ、プラスチックのような札を受け取り、妙に立ちどころのない感じで待つこと三分。さっきの受け付けのお姉さんに案内されて別室へ。
ガチャッと扉を開けた先にはイカツイ顔のオッサンが。
……なるほど。つまりギルドマスターに実力を見抜かれて飛び級パターンでしたか! いやいやおいおい困ったな。
自信が戻ってきた俺は不適な笑みを浮かべて、ギルドマスターと思われるオッサンの対面に置かれた椅子に座る。
オッサンの顔が俺のスキルだか魔力だかを悟ったのか歪む。
ふふん、腕試し展開か? 上等!
「……君ねー、ノックしないで入ってくるわ、勧めてないのに椅子に座るわ、頭大丈夫? 座り方も曲がってるし、手は軽く握って太ももの上、背筋は伸ばす!」
「…………え?」
「ちっ。マジかよ。……もういいや。じゃあはい、お願いします」
「あ、お、お願いします」
冒険者ギルドを出ると太陽は中天を指していた。
俺の手には、まぁー綺麗な植物紙が一枚。
『この度は誠に残念ですが採用を見送らせて頂きます。貴方様のこれからの益々の御活躍と御多幸をお祈り申し上げます』
俺は魔法で紙を燃やした後に思った。
「ま、まだ帰れたりしない……かな?」




