襲撃
日は暮れ夜がやってくる。
辺りは真っ暗になった。
「頭、あのゲボネの野郎がここを通るって本当ですかい?しかも女を連れて」
「そうだ。ここで奇襲してあいつらを狩る。ゲボネは殺して女は………」
「へへへ、明日殺りに行くんですよね、楽しみですたい」
「はぁ!?何言ってるんだよ!今から殺りに行くんだぞ!」
「え、そうなんですかい?」
「当たり前だろ!お天道様が上っている間に殺りに行くんじゃ奇襲にならないだろ!」
「なるほど!さすが頭です!どこまでもついて行きます!」
「おお!付いてこい!それとお前は少し考えることをしれ!」
「わ、分かったでやんす」
頭と呼ばれた男は、三十代の大男であり、盗賊業を生業としている。
親が盗賊であったことから、自分も盗賊になると言い今に至る。
部下は、全部で十人。親の盗賊派閥から独立し、一人でこの人数を集めた。
そして、ある情報屋から仕入れた情報によるとゲボネという、商人のバカ息子が奴隷の女を連れて旅に出たという。しかも護衛なしでだ。
「馬鹿にも程があるだろ!」と、内心で突っ込みながらも今日の夜こいつらに奇襲を仕掛け、その荷と女を掻っ攫おうという算段をつけた。
今も目の前にはそいつが乗る馬車ある。
「準備はいいか野郎ども!」
「「おお」」
その合図ともに皆動き出す。
手始めに逃げられないよう、馬車を包囲する。
「よう、ゲボネ出てこいよ!」
返事はない。
「よう、ゲボネ出てこいよ!」
その声で、ティアは目を覚ました。一方クロは爆睡中である。
ティアはクロを必死で揺すり起こす。
「クロ起きて!」
残念なことにクロは起きない。
ティアは今がどういう状況なのか分かっていた。
盗賊による夜襲である。
本来なら盗賊対策に護衛をつけるはずなのに、ゲボネ、クロに殺された豚のような男はお金をけちるために護衛をつけなかったのである。
その情報がおそらく流れ盗賊の耳に届いたのだと、ティアは推測する。
「もう一度言う、ゲボネ出てこい!」
盗賊の口調は強く、ティアの体はこわばる。
しかし、それでもクロを起こすのはやめない。
「ちょっと、クロ起きなさいよ!!」
ティアはかなり焦っていた。
目にうっすらと涙を浮かべ、必死にクロの体を揺する。
「もういいっすよ、頭。馬車に乗り込みましょう!」
「馬鹿か!ここで出てこないってことは、馬車の中で待ち伏せしてるんだよ!今ここで中に入ったら、攻撃をくらうだろ!」
「な、なるほど。さすが頭です!」
「わかったなら、お前中を見てこい!」
皮肉げに頭は馬鹿な部下に言う。
「え?わ、分かったでやんす!」
「お、おい。お前、話聞いてたの………」
馬鹿な部下は馬車に乗り込む。
そして、すぐに出てきた。
いや、叩き出された。
「頭、見てきたでやんす!」
「お、おう。どうだった?」
頭は取りあえず無事そうな顔にビンタの痕の付いた馬鹿な部下に尋ねる。
「中には女と、寝てる男がいたっす!」
「そうか、その……なんかすまんな」
「へ?頭?」
馬鹿な部下は頭が突然謝ったことに驚く。
頭とすると、ここまでこの部下が馬鹿だとは気付かなくビンタと言えど攻撃された部下に申し訳なくなった。
頭は考えた。
この部下によれば、情報や通り護衛は本当にいないらしく。
馬車の中は、女と寝ている男、おそらくゲボネだけ。
と言うことは、今攻めれば被害は出さずに目的の馬車と女を得られる。
という結論に至った。
「野郎ども、乗り込め!」
「「おお」」
頭の声で、部下たちは馬車に乗り込む。
馬鹿な部下だけは残しておいた。
そして、部下たちは女と寝ている男を馬車より連れ出す。
「よくやった!女と男は縄で縛れ。」
頭には気がかりなことが一つあった。
それはこんな状況なのにいまだに寝ている、この男のことである。
だが、縄で縛られている時点でこの男は動くことは出来ない。
頭では分かっているのだが、何故か不穏に思うのであった。
「離しなさよ!」
女の抵抗の声が聞こえる。
一方男は、寝ている。
この男は何者だ?
「アジトに連れて行くぞ!馬車も持っていく、お前とお前馬車を頼む」
「「分かりました、頭」」
アジトはこの草原地帯に穴を掘って作った。
中には生活が出来るだけの広さがある。
また、食糧庫に宝物庫と整理されいた。
その中に女といまだ寝ている男を部下たちは運び入れた。
馬車はアジトの外に置く。
頭のこれからの予定は決まっていた。
まずは男を殺す。この男を殺すことが今回の目的でもあった。
ゲボネという男には、個人的恨みがあった。
それは、頭の親の盗賊団がこいつの商会に狙われたことにある。
ゲボネ本人の顔は見たことは無かったが、恨みはあった。
「おい、男を連れ出せ」
「了解でやんす!」
答えたのは馬鹿な部下であった。その頬にはビンタの痕がくっきりと残っている。
アジトの外まで、男を連れ出す。
頭は腰につけてある鞘からサーベルを引き抜く。
それをこの状況で寝ている男の首に触れさせる。
「………、ティア?」
そこでようやく男は起きた。
「残念だが違うぞ、ゲボネ」
「誰?ゲボネ?」
「俺は、お前達を襲った盗賊だ」
「そうか」
「最後にいい残すことはないか?」
「最後?何で?」
「何でって、お前はここで死ぬからだよ!」
その声とともに、サーベルが振り下ろされる……




