変化と進化
おはようございます、ある小鬼?のオルドです。
名を授かった夜が明けて目が覚めると目の前に槍の穂先が有って慌てて柄を掴んで脇に逸らして跳ね起き棍棒(何故か握りが昨日よりしっくり来る)を構えます。
槍で俺を刺し殺そうとしていたのは、若い雌の小…あれ?
「お前、何者だ?小鬼じゃないな」
目の前の雌の人鬼は警戒心もあらわに穂先が二つ真っ直ぐに伸びた槍を構えながら俺の詰問に応えました。
「今朝起きたら身体も、槍も変わってたんだ!どうゆう事だ!」
そんな事俺に判ると思ってんのかコイツ!?
「そもそも、お前誰だ!!」
「は?誰だって、…オルドって名をもらったのは昨日聞いてたろ?」
また訳のわからんことを言ってますね。
「お前がオルドの訳ないだろ!オルドは小鬼だ、お前は人鬼ですらない!私らの巣を襲いに来たんだろ!!人狼か豺人だろうが関係無い、今すぐに殺してやる!!」
「うぉあっ!」
あろうことかコイツは、問答無用で二又の鋭い穂先を俺の心臓目掛けて素早く突き刺そうとして来たので、左手に握っていた棘付棍棒で振り払いました。そう、目覚めて初めて棍棒を視界の中に納めてみたんです。
「落ち着…?なんじゃこりゃ!?」
棍棒の回りに差し込んであったはずの鉤爪が一列に並びまるで人間が使う鋸のようになっていた。
その上、かつてゴツゴツとした質感だった腕には、今は黒い獣毛が肘まで生え揃っていた。ちなみに鋸の握りは丁度指の部分が引っ掛かるような形に変化していました。
「顔…俺の顔はもしかして…」
「そんなの…豺人か黒色狼みたいに決まってるじゃない。まさか…ホントにアンタ…オルドなの?」
「当たり前だ!!最初っからそう言ってんだろ!」
ようやく俺の言葉を聞く気になった若い雌の人鬼は槍の穂先を降ろして、改めて俺の身体を頭から爪先、更には俺の後ろに回り込みしゃがみこんで俺の尻を摘まんで……ん?
「うわー、腰布に孔開いて生えてる。うわっ動いた!」
「ちょっと待て!尻尾まであんのか!!つーか摘まむな!!くすぐったい、イテッ!握ったら痛いから触るな!!何もするな!!」
俺は尻尾にまとわりつく手を叩き落として距離を取って向かい合うように振り返りコイツに何かされる前に気になったことを尋ねました。
「そんな事よりワイズとグラトは?それに他の奴等もどうしたんだ?」
「他の皆は朝起きたら全員、人鬼に変わってたわよ。個人差?が大きいみたいだなってワイズと長老が話してたけど。今は男衆は狩りと女衆は昨日の芋を巣から出てすぐの所に植えてるわ。長老がそうすれば暫くすればまた増えるからって」
あ、忘れてた。
「長老!そうだ、長老なら俺の身体の事何か知ってるかも!何処に居るんだ?」
「そう言えば長老が『オルドが起きたらワシの所に連れてきてくれんかの』って言ってたわね」
「………おい、じゃあ何か?お前は俺がオルドだと知っていて殺そうとしたわけか?」
頭に来すぎてスーっと血の気が引いた次の瞬間には、鋸が雌の人鬼の喉元に当てられていました。
「ヒッ!?」
「殺されるくらいなら、その前に殺すぞ…イテッ!?」
「馬鹿者。無闇に産まれたての写し魂を同族の血に染めるでない。同族殺しが根に染み着いてしまう、ん?」
脳天を硬いもので強かに殴られた痛みで、雌の喉に当てていた鋸を落として頭をごしごしと擦って紛らわそうとします。あ、み、耳が随分と上の方に…
「お主…誰じゃ?」
ひとりぼっちって…寂しいですね。
ようやく、物語が頭の中で勝手に膨らんで来たので再開します。