変化と進化 ②
どうも、傷心中な種族不明のオルドです。
どうやら長老も俺が誰だか判らないみたいです。ワイズとグラトは判ったのに、何で俺だけ判んないんですかね。しかも長老、小鬼から人鬼に変わってる上に何故か若返っています、しわくちゃから深い皺が刻まれた白髪頭に仙人髭の老年男性?な感じに。
ちなみに小鬼の時にこめかみより少し額の中央寄りに有った瘤が、人鬼に変わった時に皮膚を突き破り角に成ったみたいで、二人とも二つの角が有ります。
俺は…あ、まだ瘤のままですね。
「長老、何で俺だけこんな姿に?」
俺は耳や口を指で示しながら尻尾も見せるために
身体を捻りました。端から見たら大変お馬鹿な体勢です。
「う~む…まずは種族としての小鬼の説明からすれば良いのかのぅ。とりあえず聞いてくれるかの?」
長老は焚き火の近くに腰を降ろして薪をくべて、杖の先で焚き火の周りの石をこんこんと叩いき、座るように促してきます。長い話になりそうなので逆らわずに焚き火を挟んで長老の正面に座りました。
「まず、小鬼とはな、身体も角もナニも小さ…っと、三番目のはよい。つまり酷く弱い魔物とゆうことじゃな。何故そこから人鬼に変わったかとゆうと、その身に余りある力を身に着けたとゆうことじゃ。」
身に余りある力を着けた…?
「それって、何で?」
俺の疑問に長老はホレと骨の小山を指し示しました。えーと…突進猪の骨か?
「普段ワシ等が食うておるのは、芋や名も無き獣じゃろう。それらには微々たる量の、それこそ魂を維持することしかできぬ量の魔力しか含まれておらん。じゃが昨日皆で名の付いた獣の、突進猪とゆう名の魔物、魔獣でもどちらでも良いが魔名の有る力有る獣の肉を食ろうた訳じゃ。そしてそれにより内蔵魔力の限界を超えた量の魔力をその身に取り入れる事になってしもうた」
「限界を超えた量の魔力を取り入れたら…どうなるの?」
雌の人鬼は俺の右斜め前、長老の左手側に座り込みながら俺も考えていたことを長老に問い掛けます。
「フム、まあ一般的には身に余る力はその身を滅ぼす事になるじゃろうな。だがワシ等には更に力強い種族、人鬼へ変化する余地が有った為に、皆無事に変化する事が出来たようじゃな。名の意味は聞いただけでも解るじゃろ?今のお前達は魔名を理解する力も身に付けたはずじゃし、言葉も知らん内に覚えとるじゃろ?」
黒色狼、掃除屋鼠、大鬼、食鬼、喰鬼、突進猪、人鬼、豺人。名前しか知らないはずの魔物も意味が判る、これが魔名ですか。
「ちなみに寿命も長くなっとるはずじゃしな。その上少しばかり餓えても食鬼になることもないじゃろ。まあ、いくところまで行ったらもっとたちの悪い喰鬼に堕ちるがの。」
喰鬼は…飢えに負けて共食いした鬼種の成れの果て、か
「えーと、それで俺は、何なんですか?」
「お主か…お主は小鬼の群れと黒色狼の群れとが死に果てた地での生き残り。群れの長たる黒色狼に止めを刺したる者。小鬼、黒色狼両方の生への渇望を一身に集めてしまった者。そして黒色狼と突進猪の魔力を取り込みし者。つまりは…」
「つまりは?」
「黒色狼と小鬼の、混合種。間の子じゃ。小鬼でもあり黒色狼でもある、両方の特徴を持った新しき魔物じゃな。」
…タイム。ストップ。何でもいいからちょっと待って…、混合種?なにそれ旨いのか?…あ、魔力が多けりゃ旨いか、じゃなくて!つまり俺はもう小鬼とかけ離れた種族の魔物か?
「おそらくじゃがな、今のお前ならば狼や犬と名の付いた魔物の声が言葉に聞こえるはずだしお主の言葉が相手にも伝わるはずじゃ。魔物じゃなくても大丈夫だったかのぅ」
へ?
「手懐ける事が出来ればお主は群れを率いることが可能じゃ。ま、黒色狼の群れが近くに居たせいで近くには居らんようじゃな」
マジですか!?
「マジじゃ」
「!何で考えてたこと」
「そりゃ、狼の顔をしとろうがそんなに目ん玉ひん剥いてこちらに詰め寄ろうとしたのを見れば誰でも判ると思うがの」
じゃあ早速、狼を探しに行こうかと立ち上がりかけると―
「結局アンタは何なのよ」
雌の人鬼の一言に座り込んでいる理由を思いだし大人しく座り直します。
「名前はオルド。魔物としての種族名は何が良いじゃろうのぅ…小鬼と狼の名を合わせたものじゃろうなぁ」
「?」
「ああ、種族名は考えて決めるのではなく言い当てるとしっくりくるんじゃよ。ゴブリンウルフ…違う、ゴルフ…違う、ウルフリン…違う、狼人鬼…あ。そのまんまじゃったか」
「狼人鬼か。俺は狼人鬼のオルド。小鬼や人鬼、狼の言葉を話す者」
俺はやっと判った自分の種族名を噛み締めるように呟きます。
「ちなみにワシは元々、老古小鬼じゃ。いまはただの人鬼じゃがな」




