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僕とぼっちな彼女達  作者: 中高下零郎
中学校3年(前) クールな彼女(いじめられっこ)
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クールな彼女に告白される

「えへへ、このふくにあう?」

「うん、すごく似合ってるよ」


 郡山さんとデートをした翌日、僕はみたきちゃんとデートをする。

 前々から予定したわけではない。郡山さんとのデートが失敗した直後にみたきちゃんの家に行って約束を取り付けたのだ。

 僕自身昨日の事を引きずらないように気分転換をしたかったのもあるし、

 みたきちゃんを楽しませることで昨日の罪滅ぼしになると自分の中で納得させたかったのもある。



 駅前でみたきちゃんの服を買って、近くのハンバーガーショップでご飯を食べていたのだが、


「ねえ、あれ高下君じゃない? 小学校一緒だった」


 割かし地獄耳な僕は店内に僕の話をしている人がいるのに気付き、気づいていないフリをしながらその人達を見る。確か小学校が同じだった女子だ。


「あ、本当だ。え、隣にいるのってもしかして例のあの子?」

「うわ、付き合ってるって本当だったんだ……ひくわ」

「体目当てじゃないの? 向こうが知的障害なのをいいことにさ、だとしたら最低だよね」



 会話を聞いた瞬間、僕の中で何かが弾けた。

 激昂して彼女達の所へ歩み寄り殴ってやろうかという思いに駆られるが、

 幸いにもこの話を聞いていない、聞こえていたとしても理解はできないであろうみたきちゃんに嫌な思いをさせるわけにはいかない。


「あたるくん? かおこわいよ?」

「……帰ろう、みたきちゃん。僕の家で遊ぼう」

「ないてるの? よしよし」


 涙で顔を滲ませながら僕はみたきちゃんを連れてお店を出る。



「ふざけんな! 何が最低だ! 小学校の頃、皆してみたきちゃんを除け者にした癖に!」

「あたるくん、いやなことでもあったの?」

「違うんだよみたきちゃん、僕は、僕は、あっ、うっ、うっ」


 部屋でみたきちゃんを抱きしめながら咽び泣く。

 彼女達が許せなかったのもある。

 腫物扱いして、僕共々除け者にしてきた彼女達が、まるで自分は傍観者であると言わんばかりに僕を偽善者扱いするのが。

 ただそれ以上に、許せない彼女達にすら、体目当てだと言われてしまった。

 今まで自分の中で肯定しきる事も否定しきる事もできなかったそれが、客観的な指摘によって一気に肯定へと傾いてしまったのだ。

 初めてみたきちゃんとお医者さんごっこをしたのは小学5年の終わり。

 あれから3年以上が経っている。

『みたきちゃんが望んでいるから問題ない』で済ませてしまっていい年齢ではないのに。

 性知識だってろくにないみたきちゃんに、そういうスレスレのことをしているんだ、僕は。

 僕の両親だって、みたきちゃんの両親だって、こんなことをしていると知ったら鬼のように僕を非難することだろう。

 みたきちゃんは可愛い。

 もう涎を垂らすことも道端の草を食べることもなく、見た目よりかなり幼い程度の女の子だ。

 それでいて僕になついていて、僕の言う事なら大抵聞く。都合のいい女の子。

 小学校の頃は確かに僕はみたきちゃんを守っていたかもしれない。

 けれどもうみたきちゃん係は終わったのだ。

 やることと言えば朝一緒に途中まで学校に行く程度。

 中学校では他の女の子と関わって、家ではみたきちゃんと一緒に寝たり、お風呂に入ったりして一人だけ興奮する。

 なんて僕は最低な人間なのだろうか。



「えへへ、あたるくんにからださわられるときもちいいの」


 それでも僕は逃げるようにみたきちゃんに走る。

 周りが何と言おうがみたきちゃんが喜んでいるから、と自分自身納得していない答えを大義名分に。





 その次の塾の日、いつも郡山さんが座っている席の後ろに座った僕。

 まだ郡山さんは来ていないようだ。


「よう」

「……やあ」

「なんだ、元気ねえじゃねえか」

「ちょっとね」


 そのままぼーっとしていると、隣に煉獄君が座る。


「悩みがあるなら相談しろよ」


 悩みか。結局この間はみたきちゃんを家に帰した後もずっと自虐癖を発揮して自室で一人唸っていた。

 とはいえ、煉獄君に僕とみたきちゃんの問題を相談するのはお門違いというものだろう。

 本当は怖いのかもしれない、彼にも非難されるのが。

 彼に相談すべきは、郡山さんのことだ。


「そういえば、郡山さん学校では出目金って呼ばれてるらしいよ」

「はあ? 出目金? 何でだよ」

「……郡山って金魚で有名でしょ。出目金って不細工だから」

「あ?」


 そう言った瞬間彼の表情が険しくなる。


「どうしたの?」

「いや、あいつ性格は確かに不細工だけど顔は結構……いや、そうじゃなくて、えーとだな、出目金って可愛いだろ、あいつには勿体ないあだ名ってことだよ」


 彼が言い訳をしている途中、いつのまにか教室に入ってきた郡山さんが僕達の前に座る。

 今の話、聞かれていたのだろうか。


「……! ……っ」


 ばつが悪そうな顔をする煉獄君。

 何を仕込んでいたのかは知らないが、この日は郡山さんに悪戯することはなかった。



「コンビニで漫画立ち読みするからもう帰るわ。んじゃな」

「またね、煉獄君」


 授業を終えて煉獄君と別れる。

 たまには自習室で勉強でもしようかなと自習室へ向かおうとすると、


「……話があるの」


 郡山さんに服を掴まれて止められる。




 塾を出た僕達は近くの公園へ行き、二人して並んだブランコに座る。


「話って?」

「私さ、共学でレベルの高い高校に行けばいじめられなくなるって思ってたけどさ、本当にそれでいじめって無くなると思う?」


 座りながら土を蹴って、小さくブランコを漕ぎながら郡山さんが弱弱しく呟く。


「……どうだろうね」


 難しい話だ。

 彼女を苛めている人間のうち何人かが、彼女と同じ高校に行く可能性は十分ある。

 そうすれば関係はそのまま。

 周りの人間だって、大抵は傍観を決め込むことだろう。

 頭のいい人間がいじめをやらないなんてのも、僕達の願望でしかないのだろう。



「この間の高下君とのデートであいつらと出くわした時にさ、一生私は逃げられないのかなって思ってさ」

「……」


 それを否定することは僕にはできない。

 僕自身、ついこの間小学生の時の同級生にあんな事を言われてしまったのだから。

 一生彼女達の間でみたきちゃんは気持ち悪い人間で、僕は体目当ての偽善者なのだろう。

 彼女達だけじゃない、僕の通う中学には同じ小学校出身の人間もいる。

 僕は中学ではどちらかと言えば目立たない人間なので、その人達がわざわざ好んで僕の話題をすることもなく、結果として僕とみたきちゃんの関係はそれほど広まってはいない。

 けれどその人達は心の中で僕の事を、彼女達と同じように思っているのだろう。


「高校入って彼氏が出来たら、いじめとか減るかな」

「それは……多分減ると思うよ」


 断言はできないが、共学で同じ学校に恋人のいる人間にわざわざ手を出す人間はそれほどいないのではないだろうか。

 恋人もいじめを受けているとかならともかく。


「私さ、高下君にかばってもらったりしてさ、すごく嬉しかった。あまり人に優しくされるのに慣れてないからかな。その、つまりさ、私と高下君、一緒にあの高校受かったらさ……」


 彼女はそう言いかけて、10秒程うつむく。その後僕の方を見据えて、


「私と付き合ってくれない?」


 そうはっきりと告白した。


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