主砲
カラン
扉の音。
俺が振り返るより先に、悪石が目を細めた。
悪石「……へぇ」
入り口に立っていたのは
中尾「よう、勝。勝手に抜け駆けしてんじゃねえよ」
嶋口「……銀」
いつもの軽い調子。
でも、その奥にある圧は分かる。
悪石は、ゆっくりと口を開いた。
悪石「……そっちの人は」
一瞬、間を置く。
悪石「鷹の主砲」
悪石「中尾 銀、でしょ?」
中尾「お、俺有名人?」
悪石は肩をすくめる。
悪石「そりゃね」
悪石「決勝でノーヒットだったけど」
中尾「ぐっ……」
悪石「でも最後、ホームラン打った」
悪石「ああいうの打つやつは、忘れない」
中尾は一瞬だけ黙って
ニヤッと笑った。
中尾「いい目してんじゃん」
悪石も負けじと笑う。
悪石「で?」
悪石「キミもそっち側?」
中尾「は?」
悪石「普通のやつじゃないってこと」
中尾は一瞬だけ俺を見る。
嶋口「……もう巻き込まれてる」
中尾「なら話は早えな」
一歩前に出る。
中尾「そいつの球、全部受けるの俺だから」
悪石「……へぇ」
空気が、少しだけ張る。
中尾「右も左も関係ねえ」
中尾「全部、俺が成立させる」
悪石は数秒見つめて
ふっと笑った。
悪石「いいじゃん」
悪石「ちゃんと相方いるんだ」
中尾「相方っていうか」
ミットを軽く叩く仕草。
中尾「こいつの球、逃がさねえ役な」
嶋口「……言うようになったな」
悪石は二人を見て、小さく頷いた。
悪石「じゃあちょうどいい」
ボールを一つ、軽く投げる。
悪石「二人まとめて試す」
中尾「は?」
悪石「そのグローブ」
悪石「一人じゃ完成しないから」
嶋口と中尾、同時に顔を見合わせる。
悪石「バッテリーで証明してよ」
中尾はニヤッと笑った。
中尾「面白えじゃん」
ミットを構える。
中尾「来いよ、勝」
嶋口はグローブをはめ直す。
右。
そして
左。
嶋口「……いくぞ」




