第2章 第1話 生徒会選挙規約
「やっほ~蓮司くんおひさ~」
ゴールデンウィーク最終日の5月5日。俺は帰省を一日早く切り上げ、いつもの永夢さんの部屋に訪れていた。
「ひさしぶりの実家はどうだった~?」
「やっぱりパンの耳は美味しくなかった……」
「Z組の懐事情が窺えるね~」
永夢さんに5000万ポイントを返却したことにより、俺のポイントは約10万。多少の余裕はあるが、今後を考えると無駄遣いはできない金額になっていた。
「なんか実家から持ってきたりした~?」
「カップ麺を大量に郵送しました。着払いで」
「あははははっ! やっぱ蓮司くんアツイよっ! 普通その発想は出ない。ポイント以外で買ったものは持ち込めないってね。勝手にみんな思い込むの~。通販とかは駄目だけど、実家から持ち込むのは実はアリなんだよね~。ま~色々規則はあるんだけど~」
楽しそうにひとしきり笑うと、永夢さんはタブレットをテーブルに用意し、言った。
「じゃあそろそろ始めようか。生徒会選挙の説明を」
俺がわざわざ一日早くテント生活に戻ってきたのは、明日から始まる生徒会選挙の説明を受けるため。どうせ一回聞いただけじゃ覚えられないだろうという永夢さんの配慮だ。
「まず公示日は明日、5月6日から。そして5月31日の投票日に、投票が多かった上位5人が生徒会当選になるの」
「何人出るんでしたっけ?」
「10人だね~。2年生徒会5人と、3年生徒会5人がそれぞれ1人ずつ推薦する子を選ぶから」
んー……。よし、ここまでは理解できた。
「で、この生徒会選挙が三学年合同の5月度イベントになるわけだけど……」
「それってクラス替えゲームと同じ?」
「そうそう~。これを見て~?」
永夢さんがタブレットに何かの用紙っぽいものを表示させる。数字の1~5が上にならび、その下に十個の四角形の枠が二段になって並んでいる。これだけなら番号に連動しているのだとわかるが、気になるのはその横側。数字は割り振られていないが、他と同じように枠が二つ用意してあった。
「これは生徒会選挙のテスト用紙だと考えてもらっていいよ。数字は順位。その下の枠にその順位だと予想する生徒の名前を書くの。二段目の枠はその人を推薦した人が誰かを予想する。で、それの正解数によってポイントが与えられる」
曰く、こういうことらしい。
まず1位から5位までの順位を予想する。たとえば俺が1位、龍華が2位、斬華が3位、美季が4位、霊御さんが5位だと予想し、それが全て正解したとしよう。この場合、そう予想した人は合計200万ポイントが与えられる。
その内訳は、当たっていた数。
まず順位は関係なく、予想した人がトップ5の内に入っていたら1人つき10万ポイントが与えられる。つまり合計50万ポイントが手に入り、さらに全問ボーナスとしてプラス50万ポイントも付与される。
逆に外したら、1人につき10万のマイナス。全員外したら所持ポイントから50万が引かれ、さらに全問不正解ボーナスで50万ポイント。合計100万ポイントが引かれることになる。
そしてこれは順位にも同じことが言える。順位が当たっていたらそれぞれ10万、全問正解でプラス50万のボーナス。逆に外したら10万のマイナスで、全問不正解で50万がさらに引かれる。
その二つの項目に加え、さらにもう一つ。推薦した人も当てる枠も存在する。俺が永夢さんに推薦されたと書けば、プラス10万。外したら10万というわけだ。
つまりこの生徒会選挙は、最大プラス300万から最低マイナス300万のポイントを得るイベントなのだ。
「違う違う。プラスは600万だよ」
そう付け加え、永夢さんは数字の書かれていない二つの枠を指差す。
「これは永夢たちが今年から加えさせたやつなんだけど、生徒会って生徒のお悩み相談とかもするのね~? だから5人全員男子! とかになったらお互い困るわけだよ~。そこで当選者が全員同じ性別だったら、違う性別で一番順位が高かった生徒を特別生徒会役員として登用することにしたの。でもこれはあくまでおまけ。当てても賞金はないし外しても罰金はないけど、全問正解の上で特別生徒会役員とその推薦者も書けていたら、プラス300万ポイントをあげちゃおうってこと。まぁまず出ないだろうけどね~」
んー……ちょっとわかんなくなってきたな。
「ちなみにどっちの方が少ないんですか?」
「男子2の女子8だよ~。だから蓮司くん割と可能性は高い。でも狙わないでね~? 特別生徒会役員は2年生徒会が作ったおまけの立ち位置。生徒会役員としての権限は与えられないし、パシリになると思うから~」
じゃあ逆にピンチってことかクソ……。
「ていうかこのイベント、基本的にマイナスになりません?」
「よく気づいた~。だからみんな必死なんだよ~」
「それに推薦した人当てるってやつ……。無理ゲーでしょ」
「そうでもないよ~? たとえば永夢の印象は~?」
「クズ」
「おっと手が出そうになったあぶないあぶない~」
「まぁ……適当な感じ?」
「そだね~。だから蓮司くんを推す人なんて永夢くらいだって思わない~?」
言われてみたら……そうかも。あ? 今俺ディスられた?
「でも生徒会全員の性格を知ってる人なんて1年でいるんですか?」
「くわしくは知らないだろうけど、ある程度の予想はつくと思うよ~? 学年ごとに傾向があるから」
傾向……? そういえば俺は2年の人しか知らないけど、結構愉快そうな人が揃ってたような……。
「わかりやすく言うと、保守派と革新派かな~?」
「俺がわかるとでも?」
「んーとね、3年生徒会が従来の桂来学園を守っていきたいっていう保守タイプ。逆に永夢たち2年生徒会が、桂来学園を新しい方向にしていきたいな~っていう革新タイプってこと。みんながみんなそうってわけじゃないけど、だいたいはそういう傾向だよ」
わかるような、わからないような……。
「簡単に言えば、蓮司くんみたいな馬鹿を登用しようとするタイプは2年生だろうな、って予測が立てられるってこと」
「……じゃあつまり美季とかのA組は3年生ってことですか?」
「前に美季ちゃんが言ってたよね? 3年生とは合わないって。3年生徒会はね、真面目な子がほしいんだよ。だから美季ちゃんを避けた。永夢に断られた後は3年の赤道さんに頼んだって言ってたけど、その人は3年の中でもかなり自由なタイプ。それも断られちゃったらしいから今どうなってるかわからないけどね~」
となるとどうなんだ……? 美季はチャラチャラしてるから2年側として……。龍華と斬華はZ組だけど真面目だから3年側か……? 霊御さんは……あれを真面目と言っていいのだろうか。んーわからん。
「あ、そっか。普通に聞けばいいんだ」
「それは規則で禁止~。それアリにしたらゲームにならないでしょ~? だから明日から永夢は一切アドバイスしないし、関わりを匂わせたらだめね~?」
「俺と永夢さんのペアはだいぶばれてそうだけど」
「それはね~。ビンゴの真ん中枠が1人いた方がおもしろいんじゃないかな~っていう2年生徒会のわがまま。でも直接推薦したことは美季ちゃんと龍華ちゃん以外知らないんじゃないかな~」
「わかった2年は適当だなっ!」
「そうそう~。ちなみにイカサマばれたらたぶん退学だからほんとに気をつけてね~」
それは……。ガチで気をつけないといけないな。俺ならうっかり言っちゃいそうだ。
「こんなもんかな~。わかんなかったとこある~?」
「ほとんど理解できなかったんで明日龍華とかに聞きます」
「うん。それがいいと思うよ~」
一通り説明を聞き終わり、席を立つ。
「あ、ちなみに落選した場合推薦者と被推薦者両方罰金1000万ポイント+強制Z組行きだから~」
「はっ!? ちょっと待って聞いてないんだけど! おい! おいっ!」
最後にとんでもない爆弾を伝えられ、俺は部屋から追い出された。




