第1章 第28話 テストの終わりと戦いの始まり
「おわったー……」
4月28日19時。5月分テストを終えた俺は、採点ボタンを押して軽く伸びをした。
「おつかれー。ずいぶん時間かかったね」
「なんか見覚えがある! って感じの問題が多かったからな。考えてたら寝てた」
「つまり寝てただけじゃん……」
既にテストを終えた龍華が引いた顔をしているが、それより。テストの結果は……!
「8点っ! 8000ポイントゲットっ!」
「えぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」
あまりにも点数がよかったからか。龍華が驚きの声を上げる。
「すごいだろ? 俺にしては勉強がんばったからなー……。これが才能ってやつだ」
「全然! だめじゃんっ! 昨日勉強教えてあげたじゃんっ!」
そっちか……。いやでもそれは龍華目線だからだ。
「8倍だぞ8倍! そう思うとすごくないっ!?」
「0にかけ算したら全部0なのっ!」
あー……? よくわかんない。とにかく上げ幅がすごかったんだ。褒めてほしい。
「なんでこうなっちゃうかな……。カンニングは禁止されてたけど、範囲も短いし問題も易しくなってたよね……?」
「おうおうそんなに言うなら何点だったか聞かせてもらおうじゃねぇか!」
「合計546点。54万6000ポイントだね」
「……半分しかとれてないじゃん」
「わかんないけど平均点150くらいだと思うよ? やっぱりここのテスト難しいよ」
「自慢かよクソ……!」
でも考えてみれば当たり前か。150点ってことはたぶん15万ポイント。家賃なしの月収15万って聞くとまぁそんなもんかなという気もする。
「ふふ。私からしてみれば団栗の背比べ。五十歩百歩もいいとこよ」
「誰もどんぐりの話なんかしてねぇぞ奈々!」
なぜかずっと広場で待っていた奈々が話に入ってきたのでいたって普通のツッコミをする。龍華がまた引いた顔してるけどたぶん気のせいだ。
「奈々ちゃんはこう言いたいんだよ。54万ポイントも8000ポイントも自分から見れば一緒だって」
「そんなわけなくね?」
「うん。たぶんいい点とれたから自慢がしたくて残ってたんだろうね」
「あなた最近口が悪いわよ……?」
「謝るわよ。さすがは龍華さんと言ったところね」とボソボソと言い、奈々はスマホの画面を見せてきた。
「73万2000ポイント! これが私の成果よっ!」
「やっぱ自慢じゃん……」
勝ち誇った奈々のドヤ顔を見せられ、思わず言葉が漏れてしまう。
「でもすごいよ。あのテストで732点もとれるなんて信じられない」
「元々A組に入るはずだった女の能力よ。舐めないでもらいたいわ」
「あれ? Bじゃなかったっけ?」
「点数的にはね。……ただ私、どうしてもケアレスミスしちゃうのよ……。だから100点が当たり前のテストは苦手だわ……。自己採点だったら満点だったのにどうしてZ組なんかに……」
さすがは意外とドジっ子奈々ちゃん。でもそれだけいい点数がとれたってことは。
「俺たちも5月からA組ってわけだなっ!」
「それは難しいんじゃないかな」
「5000万はあくまで4月分で1位になれるポイントだものね」
……言っている意味がわからない。すると付き合いも長くなり俺のことをわかってきたのか、龍華が説明をしてくれた。
「問題です。前のテストで5000万点を獲得したクラスは次のテストで何点とれるでしょうか」
「そんなのやってみないとわかんないだろうが」
「法則でいくと5000万だよね」
「なんで無視……ああそういうことか」
ようやくわかった。俺たちがズルで手に入れた5000万はJ組なら普通に稼いでいて、5月分もおそらく同じくらいのポイントを獲得できる。だから合計1億ポイントになっていて。
「俺たちが1位になるにはまた5000万ポイントを借りなきゃいけないってことか……」
だったらあの取引は何だったんだ……。どうせ1位になれなかったんじゃん。
「じゃあまたZ組……野宿続行か……?」
「それはないんじゃないかな。結局ほとんどみんなギャンブルにハマって借金抱えちゃったけど、5000万はやっぱり強いよ。たぶん真ん中くらいにはいるはず……」
そう言うと龍華はスマホで順位を確認する。俺もアプリを開いてみるとリアルタイムで状況が更新されていて、今も尚順位が上下している。確かイベント終了が夜8時だったからまだ変わっていくな。さて、1位は……。
「A組っ!?」
たった5人しかいないクラスが。総額2億ポイント以上を獲得し、圧倒的ではないが首位に輝いていた。その下はB組、C組、D組と続き、少し飛んでF組。最初1位だったJ組は上から9番目に収まっていた。
「なんで……」
「わたしたちと同じだよ。先輩からポイントを借りたりしたんじゃないかな。ほら、今考えるとこのイベントって先輩と後輩の仲を繋ぐためのイベントだと思わない? ちゃんとできる人はちゃんと部活動にも入ってるんだよ」
なるほど、部活か……。Z組はヤンキークラスだけあって部活に参加している人が少ない。そう言う面でも後れをとっていたのか。
「で、Z組は……」
どんどん下にスクロールしていくが、Z組が見当たらない。……おかしいな。5000万ポイントのラインはとっくに通り過ぎたのに……。
「これ、どうなってるの……!?」
事態の異常さに気づいたのは3人同時。だが唯一龍華だけは。さらに深いところに焦点を当てていた。
「斬華……」
Z組総ポイント額、-2437万ポイント。
そして同時に、翠川斬華のポイントが-7000万ポイントになっていた。




