第3話 痛い転校生が来た。
転校生イベです。
そしてその後記憶が飛び、いつの間にか校門の前に着いた。
『あれ、また飛んだ。』
いつものことなのでもう驚かない。
魔法陣を見た後まだ2時間くらい時間があったのにいつもより30分以上も遅刻している。
こんなんでも無遅刻無欠席の優等生なのだ。
『怒られるのもあれだし帰ろうかな。病院にも行きたいし。』
そんな男がはじめてのサボりを決意し、引き返そうとした瞬間
『コラ、待て!』
男に呼び止められた。アズマだ。
『遅刻した上に堂々と帰るとはいい度胸じゃないか』
大分でかい声で言われた。
『どうも!生徒会、お疲れ様です!』
そのまま家路に着こうとしたが、
『大里先輩に言いつけるぞ』
いつもの調子で言ってきたので、
『今のアズマは生徒会のアズマなので、部活の先輩であるオオサトこと野蛮な猛獣に言うのは違うと思います。』
はい、論破!と心の中でドヤった。
『部活云々の前に大里先輩はうちの学校の生徒じゃないか』
『……』
ぐうの音も出なかった。
『しかし、戦士が遅刻とは珍しいな』
アズマに問われた。
『そういや、授業開始時間だろ。生徒会だからってそこまで外にいるのおかしいだろ。』
遅刻をはぐらかすように質問を返した。
『なにやら転校生が来るらしくてな。その手続きで開始が遅れるらしい。』
『…まじ?』
俺の時代の到来か?
『お前のクラスらしいよ。』
『てか、戦士ってやめろ』
千田のセンと大志のシを取って戦士。
誰が付けたんだこんな名前。
遅くないかと苦笑いするアズマ。
『転校生は沢山来るのか?』
タイシは訪ねた。
『いや、1人だけらしい』
『1人で遅らすのかよ。石油王でも転校してくるのか、こんなど田舎まで』
タイシは続ける
『てか、なんでついて来たんだよ。校門の方はいいのか』
『戦士を待っていただけだから』
と満面の笑みで答えた。
これだからホモと間違われるんだよなぁ。
ここはうまく逃げよう。
『アズマ、トイレに行くから先行っててくれ。』
『いいよ、待ってるよ。』
また、満面の笑みで言われた。
狙われてるんじゃねーか。と頭によぎる
『え、なんで』
返答内容では付き合い方を変えなければ
『帰るかどうか心配だからね』
『良かった。』
『何が…?』
アズマと別れ教室に向かうとクラスの目立つ連中がガヤガヤしていた。俺はインキャなので全く関係なし。
席の方に行くとすでに机が置いてあった。
俺の後ろかよ。イケメンくんなら泣くぞ。
席に着くとかつてのオタ仲間の高野くんが近づいてきた。
『千田くん、転校生来るの聞いた!?
女の子かな女の子かな!!転校イベントって燃えるよね!こういう時は大体幼なじみとかが好みだけど、天然っ子でもいいよね!ツンデレでも!ヤンデレでもいいなぁ、多分、千田くんの席の後ろだからフラグ建てられるよね!ほんと羨ましいな!』
とても早口なので、俺じゃなきゃ聞き取れないだろう。
声が大きいのでいろんな人がこっちを見ていた。
そんなことは気にせず、
『千田くんはどんな子がいい?どんなフラグを建てる!?』
お前、ゲームじゃないだぜ。と思いつつも
『高野、お前は勘違いをしている。どんなに可愛い子が来たとしても、俺は鈍感主人公を自負しているからフラグ建てても、建てられても気づかず、なるようにしかならない。』
嘘だけど、女の子と仲良くなりたいと常に思っているけど。
『それ言ったら鈍感じゃなくない?』
『それもそうだな。』
そんなやりとりを5分ほどしていると、
『席に着いてください。』
担任が来た。なんか声裏返ってるだけど
『今日、転校して来た生徒を紹介します。入ってきて下さい。』
入ってきたのは女の子だった。
黒髪ロングに整った顔立ち。いわゆる、清楚系美少女だ。可愛い、友達になろう。
『私の名前は、アマギツグカです。天の城に次の花で天城次花です。よろしくお願いします。』
『では、窓側の1番後ろに座ってください。』
よし、俺の後ろだ。
『よろしく。』
『どうぞよろしくお願い致します。』
近くで見ると可愛いし、いい匂い。
話しかける気満々だ。
しかし肝心の授業間の休み時間は女子やイケてる男子に囲まれ全く話せなかった。
女子にもとても明るく、男子にも愛想良く。
授業中も答えまくるし、体育の授業でもとてつもない運動神経を見せた。
完璧超人かこいつ。
ただ、それ以上に不思議な感覚を感じた。
隙が全く無い。
言うなれば敵がいつ襲ってきてもいつでも対処できる。そんな感じだった。
そんな彼女が自習の時間に小声で話しかけてきた。
『ここ最近、ふと急に記憶が飛ぶことありませんでしたか?』
話も診察もせずに最近悩んでいる病状を当てるとは、名医だと確信した。
『大いに有ります。日の半分以上は飛んでます。先生どうにかなりませんか?』
と尋ねた。第一印象はその後の人間関係を築く上でとても大切だと思うし。この人話しやすそうねと思われたいし。
そう考えていると
『それ私のせいなの、ごめんね。あと、気を使わないでタメ口でいいわよ。』
『先生ではなく患者の方だったか。』
大志を無視して天城は続けた。
『あなたの体を使っていろいろ準備させてもらったの。』
なんのと聞く前に天城は続けた。
『'こっちの世界'に来るための準備をね。』
なにを言ってるのか分からないがもしかしたらこの人はかつて自分がハマっていた深みにハマっているのだと直感した。
『そっちの世界は魔物とかいるの?』
するととても驚いた顔で答えた。
『あなた理解力すごいのね。あれだけの会話で?"やっぱり正解"だったなー。』
危ない。同族だったからと口から出かけた。
『もしかして魔法陣も、天城さんが?』
『そうよ。ほんとにすごいわね。』
この子、天城ちゃん、大分重傷だ。
『なるほど。高野くんとかと仲良くできると思うよ。これからよろしく。』
『そうね。あなたとも仲良くなれそう。これからよろしくね。』
惚れた。
そして、美しい顔から放たれたその言葉に俺は心の中で勝利宣言を高らかにした。