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槍と氷で頑張ります!  作者: 鹿鹿
1章 新しい人生
9/29

9話 新たな不安と奴隷商

ーーーSIDE 王城ーーー


コンコン。


「何だ?」


「例の依頼の男が戻りました。」ドア越しに報告する。


「入らせろ。」


ガチャ、扉を開いて盗賊のリーダーの男が入ってくる。


「依頼が完了したんで、報告に参りました。」軽い口調で言う。


王は書類に目を通すのをやめ、リーダーの男の目を見る。

「確実に殺したんだな?」


「えぇ、間違いなく殺しましたよ。」そう言って、持ってた袋から焼けただれた頭を取り出し、王に渡す。


王は頭を受け取ると、全体を確認し、耳についてるピアスを見て納得したのか、リーダーの男に声をかける。


「確かにあやつの頭だな。しかし、炎斧を使うほど手こずったのか?」王は少し意外そうに聞いてくる。


「まぁ、腐っても召喚された奴ですしね。何やら武術もやってたみたいで。面倒なんで全力でやりました。」頭をポリポリ掻きながら言う。


「まぁ、よい。これで憂は1つ消えた。分かってると思うが、他言無用だぞ。」威圧感たっぷりに言う。


「もちろん、まだ死にたくないんで。関係ないんですが、城の女が随分変わりましたね?」圧に耐えるのがキツイので、別の話題に変える。


「分かればよい。前の女共は使い物にならなくなったのでな、全部売って、新しいのと変えたのだ。」これが当たり前のように王が答える。


うわぁー、エゲツない使い方したんだろうな。この城の奴らはちょっとイかれてるしな、俺も気をつけないと、すぐ殺されちまうな。リーダーの男は内心でヒヤヒヤしながら思う。


全くエリスの奴も無理を言ってくれる。死体を誤魔化す方の身にもなって欲しいもんだ。まっ、逆らった所で死ぬからあの場所での選択権は無かったんだけどな。そう思っていると、また扉をノックする音が聞こえる。


今度は何だ?王も少しウンザリしながら答える。

しかしこの来客は特別な物だったらしく、その人物が入ってくるなり上機嫌になった。


「久しぶりだなぁ。リューネ王。」王にタメ語で話すこの男を見て、リーダーの男の背筋が凍る。


それに気づいたのか、黒い鎧に身を包んだ白髪混じりの男性が声をかけてくる。


「んっ?お前キールの坊主か?久しぶりだな。王と仕事してるなんて偉くなったもんだ。」懐かしい顔にあって嬉しかったのか、無邪気に聞いてくる。


「お久しぶりです。ギルバートさん。小さい仕事ですが頂いてます。」

リーダーの男が今までに無いくらい畏まって答える。

それを聞いて、そんなに畏まらなくていいと、キールの肩を叩きながら言う。


「久しぶりだな、ギルバートよ。ずっと待っておったぞ、あの時の誓い果たしてもらうぞ。」王は目に力を込め、ギルバートを見る。


「分かってるよ、今回は最後まであんたに協力するさ、その為に来たんだからな。」ギルバートは悲しさを抑えこみ、王を見返す。



なにこれ?どうゆう事なの?何でこの男がここに来たの?突然の来客に驚き、怯えながらも1つの答えに辿り着く。まさか……。


「四滅を殺しに来たんですか?」

キールは意を決して聞いてみた。


「ちげぇーよ。あいつらは何もしなきゃ手を出してこないしな。今ん所は害はない。」


違うのか、なら尚更分からない。この世界で最強の男がなぜ王と手を組むのか。


「お前には関係ない。報酬を受け取って帰れ。」

考えていると王から声がかかる。


確かに深入りしても身を滅ぼすだけだ、キールは王とギルバートに挨拶をして、部屋から立ち去る。最後にもう一度釘を刺されながら。


「ここで聞いた事は他言無用だぞ。ギルバートが居る事もな。」


キールは頷く。


部屋を出た後、残りの報酬を貰い、城を後にする。門まで行くと2人の男が声をかけてくる。


「兄貴どうでした?がっぽりでしたか?」

見知った2人を見て落ち着いたキールは笑顔で言う。


「おー、がっぽりだったぜ、帰って祝杯をあげよーや!!」

2人の男は大きく返事をする。







ーーーSIDE 北の小国ーーー



泣き疲れて寝てしまった俺は、数時間後に目を覚ます。

目が覚めて辺りを見渡すとルーンがコクン、コクンと首を上下に振っていた。


「あの、ルーン。」

俺が声をかけるとビクっとして、目を覚ます。

「ぜっ、全然寝てないですからね。ちゃんと起きてましたから。」

苦しい言い訳だと思いつつ、笑うのを堪えながら大丈夫ですよと言った。


「起きたら呼ぶように言われているので、エリスさんを呼んできますね。」

そう言ってルーンは部屋を出ている行った。


正直に言えば、会うのは恥ずかしい。自分の感情をさらけ出して挙句泣いてしまったのだから。そんな事を思ってるとドアが開いてエリスが入ってくる。


「とりあえず出掛けるから3分で着替えろ。着替え終わったら下にこい。」

俺の気恥ずかしさ返せ!そう思ってしまうほどにサッパリしていた。


「3分は無理です、片腕だけで着替えるの慣れてないんで。」ちょっと悔しかったから反抗する。しかしこれがダメだった。


「確かにそうだな。なら私が着替えさせてやる。」そう言ってエリスは俺の服を破く勢いで脱がせ、あっという間にパンツ一丁にさせ、強引に服を着せる。

俺は乙女の純情を奪われたのだ!!


もう一つ問題があった。俺は3日寝てたらしく、上手く歩けなかった。それを伝えるとお姫様抱っこで下まで運ばれた。


ここに来てからの俺は完全にヒロインポジションにいるのだ!

それもこれも凛々しすぎるエリスが悪い!


下の階に行くとルーンが待っており、少し顔を赤らめてこっちを見てくる。


「まだ夜には早いですよ。程々にして下さいね。」

なんて言葉も付いて来た。


「あのー、エリスさん、このまま出掛けるんですか?」流石に無いと思いながらも聞いてみた。


「当たり前だろ?」何言ってんの?って感じで聞いてくる。


「自分で歩けるんで下ろして下さい。」このまま外に出るくらいなら、根性で歩く。そう伝えると下ろしてくれた。


「それで、何処に行くんですか?」ソファーに下ろしてくれたので、そのまま聞いてみた。


「色々買い物だ。お前のパートナーとかな。あとルーンと同じような話し方でいいぞ。」


パートナーって?武器の事かな?


エリスからお許しも出たのでタメ語で話す。

「じゃ、普通に話すわ。これからよろしく、エリス、ルーン。」

改めて言う。2人も頷いてくれる。




歩くのにも慣れたので、出掛けるタメに外に出る。

ドアを開けると、大きな庭になっていた。

てっきり宿屋に居ると思っていたが、普通に一軒家で驚いた。


森の中に大きな公園があるような場所で、一番端に家があり、大きい庭を挟んで林道がある。

こんだけデカイ庭があれば何でも出来るなーと思いつつ、林道に向かって歩いて行く。


林道を抜けると街に繋がっていて、抜けた先は住宅地らしい。住宅地を少し歩くと大きい道にでて、右に行くと、門や転移石、ギルドや武器屋などがあるらしい。


転移石はそのままの意味で、この石を使うとワープ出来るらしい。ただし、大きい街や、それこそ王城などは専門の番兵が居て、許可がないとダメらしい。ワープ自体は出来るがその先の番兵に捕まるのがオチだとか。


左に行くと、宿屋や飯屋、雑貨屋など多様な店が多いらしい。あと、この国の城も左に行く道にある。


「どっちに行くの?」俺はエリスに尋ねる。


「とりあえず左だな。付いて来い。」


エリスはそう言うと左に歩いて行き、少し行った所の大きい建物の中に入って行く。

看板などは出てなかったので、何の店か分からなかったが、付いて行く。



「いっらっしゃいませ。おやおや、こちらに戻られてたんですね。」

顔見知りらしく、エリスに親しげに話している。


「あぁ、ちょっと前にな。良いのは入ってるか?」

魚でも買うんだろうか?

でもこの男性が魚を売ってるとは思えない。

タキシード姿に白い仮面を被ってるからだ。しかも仮面には天秤が描かれている。


ってかこの世界仮面率たかいよなwシャイな人が多いの?ルーンを見ながら考えていると、何かを感じ取ったのか言ってくる。


「別に趣味で仮面被ってる訳ではないですからね。」

確信する。ルーンはエスパーだと。

アホなやり取りをしてると、エリスから声がかかる。


「こいつは奴隷商のテンビンだ。好きなの買ってやるから選べ。」


2つの意味で衝撃だった。顔に名前が書いてある奴隷商にも、その奴隷商から奴隷を買うことも。


「なんで奴隷買うの?」テンビンの方はスルーして聞く。


「ギルドの仕事は1人じゃ大変だからな。それにお前は適当にパーティ組んで仕事すんのも無理だろ?だから、奴隷だ!」

ドヤ顔で言ってるよこの人。


「ギルド入るのも初耳なんだけど?それにエリスとルーンが居るじゃん。」

そもそもこの2人が居れば負ける事はないと思うし。


「見捨てないとは言ったけどな、ずっと一緒に居てやる事も出来ないんだよ。私達もやるべき事があるし。」エリスはちょっと申し訳なさそうに続ける。


「だから絶対に裏切らない仲間を与える。お前なら奴隷だからって酷い事しないだろ?

ギルドに入るのは金の為だ。稼がなきゃダメなのは何処も一緒だろ?」


確かにその通りだな。エリスもルーンも強いから、仕事は多いのだろう。それに知らない人とのパーティなんて絶対無理だしな。

一度信じるって決めたんだし、従う事にしよう。


「ずっと一緒じゃないのは寂しいけど、分かったよ。最高のパートナー探すよ。」


エリスとルーンが頷く。



「それではこちらへどうぞ。」

テンビンがそう言って部屋の奥へ案内してくれる。

驚いた事に奴隷達はみんな綺麗で、ちゃんとした身なりをしていた。

エリス曰く、テンビンが売る奴隷は一級品で、買った人からの評価も高いのだと。しかし誰でも買える訳ではなく、正しく天秤にかけられる。名前と仮面と理念が一致した完璧な奴隷商らしいw


そんな事に感心しながらも奴隷達を見て行く。そして一際目を惹く奴隷を見つける。


身長190cmほどの筋骨隆々なまるでゴリラの様な奴隷を。


「お目が高いですね。そちらゴリラの亜人でして、戦闘に関して言えばピカイチですよ。」


まんまやないけ。確かにゴリラの耳見たいのが付いてるけど、さすがにゴリラと四六時中一緒に居るのは辛いので、スルーする。

エリスとルーンは目を輝かせながら見ていたが。


一通り回って端まで行くと、扉があったので、開けて中に入ってみる。


「あっ、そちらは。」テンビンから焦った声が聞こえる。


中に入るとどこかで見たような顔まで隠れたローブを着ている人が座っている。


ローブの人も気づいたのかこっちを見て目が合う。


「どしました?大丈夫ですか?」

追いついたエリスとルーンが声をかける。


だが俺には声は届いてなかった。


胸が締め付けられる。


ローブの人は俺のせいで酷い目にあった、王城に居た女性だった。

明日は投稿出来ないかもしれません。

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