第14話 ラインバルドへ
【前回までのあらすじ】
早朝から牧場の手伝いをしたアルスは、帝都行きの馬車に乗ることになった。
レリーヌとは友達になり、牧場に別れを告げるのだった。
「ラインバルドまでは1時間ほどで着きますよ」
御者席に座るララが荷台に乗るアルスに振り向いて言った。
「私たちはお得意様を何件か回る予定があるから、街に入ったところで降ろしてあげましょう。
いろんなお店があるから、歩いて回ると楽しいですよ。
でも最近は兵隊さんが街を歩いてるから、気をつけてくださいね。
各地からいろんな商人や観光客が来ているから、警備を強化してるようなの」
「ラインバルドに着いたら、中心にあるお城には絶対近づかない方がいいな。
あのあたりは警備がどこよりも厳しいし、たとえ通りかかるだけでもマークされかねない」とラームズ。
「そうなんですか……」
と他愛もない返事を返したアルスだが、その城に用事があるとは口が裂けても言えなかった。
城は警備が厳しいらしい。
アシュヴァルトの長老様の手紙を見せたら、すんなり通してもらえるだろうか……。
「ララさんたちは、どんなお店にミルクを卸しているんですか? 」
「私たちはカフェやレストランにミルクを買ってもらってるの。
でも今日はいつもよりミルクが多いから、マーケットでも販売しようと思うの。滅多にないことよ」
ララはわくわくしているようだった。
「マーケットってどんなところですか? 」
「地元の人たちが畑で採れた野菜や果物などを販売しているところよ。
お店と違って安く買うことができるし、掘り出し物が見つかることもあるのよ。
また、いろんな人と仲良くなれる場でもあるの。
最近は顔を出せてなかったから、すごく久しぶりなのよ」
「こんなに喜んでるララさんをみてるとおらも嬉しいよ。
アルスさんは、もしかして神様だったりして」
ラームズは微笑みながら言った。
「神様?」
「ほら、日頃の行いがいいと、神様が現れるって話があるだろう。きっとそうだよ」
「僕は神様じゃないですよ」
「私たちにとっては神様と一緒よ」
ララがうふふ、と笑った。
(神様、か……。そういや、じーちゃんもそんなこと言ってたな)
アルスは遠くに見える山々の景色を眺めながら、旅立つ前のことを思い出した。
(じーちゃん、元気にしてるかな)
◇◇
やがてゆるやかな山道が平坦な道になった。
見晴らしがよくなり、遠くに尖閣のある街が見えた。
「あれが帝都ラインバルドだよ。
空にのびてるのはラインバルド城の塔だ。
東西南北、あらゆる国から物資が集まる大きな街だよ」
ラームズが前方を指差しながら言った。
「あれが……ラインバルド…… 」
「城の近くには、大きな教会もあるんだ。あそこも行ってみると面白いよ。
ラオンダールは太陽神ロレヌを信仰してるから、光が入るように設計されてるんだよ」
◇◇
城壁で囲まれた大きな街がだんだん近づいてきた。
街の入り口である門は大きく開けられており、両側に門番が2人立っているようだった。
「商人は通行許可証が必要なの。私たちは何年も取引しているから、顔パスできるのよ」
ララが得意げに言った。
その言葉の通り、馬車が門番たちを通過しても何も言わずに通してくれた。
地面が石畳にかわり、馬車もゴトゴトと揺れた。
まっすぐに伸びる幅の広い道は馬車や人が多く行き交っており、道沿いには露店が延々と連なっている。
鮮やかな色をした花を所狭しと並べている店や、見たこともない模様のじゅうたんを広げている店。
きらびやかな装飾の服を扱う店や、護身用に打ってつけの剣や防具を売る店。
「あいかわらず賑わってるわね。そうだ、そこの角のところで降ろしてあげましょう。
この先はもっと混んでいて、停められる場所がないかもしれないわ」
◇◇
露店からやや離れたところに馬車を停めて、アルスは荷台から降ろしてもらった。
「忘れ物はない?」
「はい。ありがとうございます。お世話になりました」
「いいのよ。また牧場にも顔を見せてね。レリーヌも、きっと喜ぶと思うわ」
ララが笑顔で言った。
「達者でな」
「はい、お2人もお元気で」
「ありがとう。それじゃあまたね」
ラームズが馬車を動かした。
アルスはララが手を振る姿が見えなくなるまで見送った。
「さて、と」
アルスは周りを見渡した。
「城へ行く前に、ちょっと街でも見てみようか。何か情報が得られるかもしれない」
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