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光の杖のアルス  作者: 伏神とほる
第4章 レリーヌ牧場
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第11話 牧場の夜

【前回までのあらすじ】


故郷エルディシアで闇と対峙したアルスは、夕闇が迫る中ラオンダール帝国を目指すのだった。


 陽が暮れて辺りが薄暗くなった頃、下り坂の先に明かりのついた一軒家が見えた。


「あそこの人に、帝都ラインバルドへの道を聞いてみよう」


 二階建てのやや大きな家だった。

 木製の戸をノックすると、優しそうな女性が扉をあけてくれた。


「まあ、こんな時間にどなた? 」


「夜分にすみません。旅をしている者です。ラインバルドまでの道筋を教えていただきたいのですが……」


「ここからそんなに遠くはないけど。今日はもう遅いから、ここに泊まっていったらどう?

それにあなた、よく見たらまだ子どもじゃないの。ささ、あがってあがって! 」


「すみません、失礼します」


 家の中にあがらせてもらうと、奥にはキッチンがあり、手前には大きなテーブルがあった。

 壁も天井もぬくもりのある木で作られていた。

 奥の階段から2階へあがれるようになっていた。


「ちょうど今から食事にしようと思っていたの。よかったら食べていってね」


「ありがとうございます。僕はアルスといいます」


「私はララよ。もうすぐ、あの子たちも帰ってくると思うんだけど……」


 そのとき、「ただいまー」の声と共に、若い女の子と、2人の成人男性が入ってきた。

 皆それぞれ長靴を履いており、髪や服に牧草のようなものがついていた。


「え?ママ。……誰その人」女の子が開口一番に言った。表情はものすごく固い。


「旅のお方よ。帝都までの道を聞かれたんだけど、さすがに暗いでしょ。

だから一晩泊まっていってもらおうかと思って」


「えーうそ、冗談じゃないわ。マジでいってんの? ママやばすぎ…… 」


 女の子は茶色の長い髪を左右にくくっており、顔にはそばかすがあった。


「この子は私の娘で、レリーヌよ。この2人はレムとラームズ」


「どうも」と細身で長身のレム。

「よろしく」と大きな体格のラームズ。


「アルスです。よろしくお願いします」


「じーーーーー」


 レリーヌがアルスに顔を近づけてきた。


「あんた、あたしと同い年くらいじゃない? なんで旅なんかしてるの? お父さんやお母さんは? 」


「ちょっといろいろあって……」


 アルスは思わず目をそらしてしまった。


「ふーーーーん。ま、いっか」


「さあさ、ご飯ができたわよ。みんな座って座って〜」


 5人でテーブルに座り、ララが作った食事を食べた。

 暖かいクリームスープにパン、そしてサラダにチーズ。


「私たちは牧場を経営していてね。『レリーヌ牧場』っていうのよ。この子の名前をつけたんだけどね」


「ちょっとやめてよママ」


 レリーヌが不機嫌な反応を示した。ララは娘の小言には気にせずに話を続けた。


「この子たちはいつも牛たちの世話をしてくれているの。

私はラームズと一緒に、毎朝新鮮なミルクを帝都ラインバルドへ運んでいるのの。

もしよかったら、明日一緒に乗っていかない?途中で降ろしてあげるから」


「ありがとうございます。このあたりの道はよくわからなくて、困ってたんです。助かります」


「ここからだと一本道だしすぐ行けるでしょ」と間に入ったレリーヌ。「あんたって相当バカなのね」


「レリーヌ! なんてことを」


 ララがピシャッとたしなめる。アルスはあわてて続けた。


「いいんです。僕、あまりこのあたりに来たことがなくて……」


「あら、どこに住んでいらっしゃるの? 」


「えーっと……少し北の方、かな?」


 かくいうアルスも住んでいた地域のことをあまりわかっておらず、アバウトな表現でしか伝えられなかった。


「北の方? 北ってどこよ? まさかアシュヴァルト?

それかもっともっと北のゴルドヴァキア?」


「もういいでしょレリーヌ。

アルスさん、明日、よければ私たちの仕事も見ていかない?

うちの牛たちのミルクをしぼるのよ。早朝4時起きだけどね」


「ちょっと、ママ。何勝手に決めてんのよ」


「あら、いいじゃない。せっかくなんだし」


「何がせっかくよ。わけわかんない」


 レリーヌは早々に食事を終えると2階に上がり、自分の部屋にこもってしまった。


「ごめんなさいね、普段はあんな子じゃないんだけど。嫌な思いをさせちゃったわね」


「いえ、いいんです。僕の方こそ突然お邪魔してしまって。すみません」


「あなたは悪くないのよ。……あの子には、小さい頃からここの仕事をまかせてしまってたからね。

あなたのような同じ年頃の子とも遊んだことがないのよ。

だから、あなたへの接し方もどうすればいいかわからないんだと思うわ。

それでも、根は嬉しい子なの。それをうまく伝えられないだけなのよ」


「……あの、レムさんとラームズさんって」


「僕らはここで(やと)われてるのさ。牛たちが可愛くってね」


とレム。ラームズは食べることに夢中で、レムの話を聞いてはウンウンと首を縦に振っている。


「ララさんとレリーヌお嬢ちゃんの右手となり左手となり、おいしいミルクを届けるのが僕らの使命なんだよ」


「まあ、ありがとう。レム、それにラームズ……。あなたたちがいてくれて、本当に助かるわ」


アルスは食事を食べ終えると、立ち上がった、


「僕、レリーヌさんと仲直りしてきます。このままじゃいけないような気がして」


「そう。ありがとうね。レリーヌの部屋は、2階にあがって一番奥の右の部屋よ」


「ありがとうございます。

それとごちそうさまでした。とても美味しかったです」


アルスは階段を上がっていった。

食卓の3人は互いの顔を見てにっこりほほえんだ。


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