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エピローグ

「これで、オレが悪魔と言われた話はお終い。人類は、不老不死という願いも、オレが別の願いを上書きしたから、オレと同じ人種の、〝人間〟に戻れたから、悪魔だった事件も、お終い」

「そうか、それでこの宝くじでどうしろっていうのだ、龍臣?」


 己は、昔出会った事件より年を取った龍臣から受け取った宝くじを見つめ、睨み付ける。

 スベテ、記憶を、取り戻した。


「少なくとも、お前にとっては――否、人類にとってはアノ月日は、許せない事件であろう、どうして記憶を取り戻させた?」

「オレは正直に言うとね、アンタと千湖だけは最初からずっとずっと味方だったから、何かしらアンタの願いは叶えたかったんだよ――××」


 不思議でもなく馴染みのよい名前に、耳がじんわりと喜ぶのが判る。

 それでも、何と言葉が発されたのか分からないのが、塔からの影響なのだろう。

 前世の名が判らぬという。

 宝くじを握りしめ、宝くじの意味を察する。


「あんなに許せないって顔をしていたのに」

「アンタの働きに対しての、報酬だ。塔に願って当てた。奥様のみっちゃんには史上最悪の馬鹿扱いされたけど。ああ、ついでに皆に会ってきなよ。旅をするといい、皆に出会う旅を――」



 龍臣は語り終えると、長時間座りすぎて痛めた腰を摩り、遠ざかっていった。

「道中お気を付けて」

 と、聞こえたが、次の瞬間にはロングヘアーの黒髪美女に抱きつき、黒髪美女と笑い合っていた。

 あれは、美衣か――。


 美衣と目が遭うと、美衣は、ニヤァっと笑って、ピースサインを向けてから二人仲むつまじく去って行った。




 ――まずは、宝くじを換金しようか。






 宝くじを換金した後に、風邪にかかり病院へ向かう。


 医者は――忠臣がなっていた。

 忠臣の話によれば、実家は忠臣が継いで、龍臣と美衣は駆け落ちしたんだとか。


 己の顔を見るなり、大爆笑し診察室に呼び寄せられ、龍臣の話をすれば表情を濁らせた。

 忠臣は腕がきちんと元通りついており、健康体そのものだ。

「兄さんはね、塔に願ったんだよ、自分で最後の塔主になるようにって。塔も承知したよ」

「……――理解できないのじゃよ、忠臣。あんなに忠臣は怒っていた、それでも、己に話しかけて、記憶を取り戻させた目的が」

「兄さんの、鬼になりきれなかった部分と、貴方に会えた嬉しさのあまりじゃないんですかね。何せあれからずっと貴方が産まれるのを待っていた、探していた。誰よりも親切にしてくれていた貴方に記憶がないのは、それこそ兄さんにとっての罰じゃないでしょうか。誰が好き好んで自分に罰を与える神がいるってんですか」

 診察と体調相談を終えれば、忠臣はメモを一つ渡してくれた。

 メモには住所が描かれていた。


「さぁ、此処からスタンプラリーです。諦めても構いませんが、次からはヒントはないですよ。この住所の人物に会ったら、その人からメモを貰いなさい。そこから、次次とヒントのメモを貰いなさい。そうすれば、貴方が本当に会いたい人がどこにいるか判る」



 メモの住所は今度は北海道だった。

 北海道の牧場を経営している牧場主の娘と、その幼馴染みに出会う。


 娘の名は、千湖。幼馴染みの名前は、彦といった。


「××! 久しぶりじゃあないかぁ! あたしだよ!」

 千湖と彦は、己と同じ十八才の姿であった。

 あの月日から十八年が経っているのだと、判る。

「面倒なやり方するよね、あいつも。再会パーティーするなら、呼んでくれれば会いに行くってぇのにさ! そんなにあたしたちが信用できないのかな」

「違いますよ、千湖。僕は判りますよ、本当に心から会いたいと願うのなら、訪ねてきてほしいという気持ち。寂しがりは特にそう願います」

「まぁでも粋なことをするよ、あの日身体がなかった人間は皆同じ誕生日なんだ」

「そのお陰で僕も、また千湖と出会うこともできましたし、前世の千湖の行方知れずだった、腹の子の孫になれました――幸せです。美衣さんの親戚ってのが気に入らないですけれどね」

「こいつ、美衣ちゃんに虐められるんだって愚痴るけど、絶対可愛がられてると思うんだよねぇ」



 千湖と彦の元夫婦漫才を聞き終えたところで、次のメモを貰う。

 メモには映画の名前が書いてあった。


 映画のDVDを借りて見れば、ドキュメンタリー映画で、通行人として刃鐘が写っているのが判る。

 映画の舞台となった場所、海外へと脚を運ぶ。

 海外に脚を運び、人が少ない里へくれば、そこには刃鐘と斉がいた。


「よう、ご先祖様」


 刃鐘はにぃっと笑いかけ、血清を子供に与えていた。

 子供はハブに刺されて、泣き喚いていたが、刃鐘からの血清により、更に泣き喚く。


「泣くなっての。これがなきゃ死んでたんだっつの」

「無理だよ刃鐘、子供には理屈はきかない。……久しぶりだね、××」

 二人は放浪しながら、医者の真似事をしているらしい。

 正確には、医者がいない地域にいき、命を救おうと必死だと。


「――沢山、悪いことしたからな、龍臣はオレ達に罰はくれなかったんだよ。だから、自分自身で考えた精一杯の償いが、今だよ」

「忠臣さんから手紙きたときはどきってしたよね、〝和解旅行お幸せに〟って」

「龍臣はやっぱり、何もかも救ってくれた――あいつは、あいつだけは絶対に悪い思案なんてしないと思っていた。忠臣だと、あいつ豆腐メンタルの予感がしたからな。……龍臣は、ぶん殴られて一度凹んでも元に戻るスライムみたいなやつだ」

「……ああ、そうだ、最後のメモはこれだよ。もう予測ついてると思うが、貴方の大事な人の行き先ですよ。場所は――アメリカ、有名な歌姫をされてるよ」



 アメリカの有名な歌手だという、一人の女性のチラシを見せてくれた。

 チラシには、近日十八才を迎える誕生日ライブをすると書いてあった。

 ――流石にどうやって出会うか悩んでしまう、ボディーガードが多いだろうし、何よりあんな別れ方だ、娘は自分に会いたくないのでは、と。


「神様に祈りなよ、オレが見守り続けた新しい神様にさ。出会わせてくれーって」


 刃鐘の冗談には、笑えなかった。



 まずは親を説得し渡米し、住居を借り、オーディションを沢山受けた。

 どれもこれも落ちるが、気にせず、目的の為に努力し続けた。

 ある日、テレビ番組で歌手のオーディションがあると聞き、審査員に娘がくると聞いた。

 目的が叶わなくても、出会いだけでも出来るかもしれないとオーディションを受けた。



 ――オーディションの日。決勝まで勝ち進み、審査員の目の前で歌う日を迎えられた。


 司会者に呼ばれ、とびきりの衣装で審査員の前に立つ。


「――名前は?」

「上総介、です」

「――××……――そんな、まさか……」

「どうされました、ああ、同じ日本人なので親近感がありますか、雫ちゃん」

 白鴉は涙して呼んでくれた。大観衆が見ている最中。

 上総介に駆け寄り、熱い抱擁と。



 長年、呼ばれたかった名称を。


「とと様――!!!!!! ととさまぁあああ!!!!」


 泣いたから化粧がどろどろになったが、それでもこの娘は、世界一可愛い自分の娘だとようやく実感が持て、ようやく体中に血や色素が通っている愛娘を抱き締めた――。









「悪人面してる」

「いや? 悔しいもんだよ、罰を与えたのに乗り越えたから」

「嘘吐き。黒鳩自体は、嫌いじゃなかったんでしょう? 白鴉のことだって、自分を見てる感覚だったんだろ?」

「みっちゃんは相変わらず聡い」

「白鴉も必死だったもんなぁ! 黒鳩に自分を見つけてほしいからって、世界的に有名な歌手になっちまえるところがすげぇよ」

「――それほどに必死じゃなければ、黒鳩の記憶を許すつもりもなかったよ、オレは。教えに行くつもりも最初はなかった。けど、オレに言葉を取り戻してくれたのは、あいつだったから切っ掛けは」


 塔の頂上にて、龍臣は美衣と二人で、焼きたてのパンを食べる。

 二人は頂上に小さいけれど家を作り――可能な程には広かったので――、時々はこうして地上に行き、二人きりの生活を楽しむ。


 塔に願えば、塔は願いを確かに叶え続けはするものの、一人きりでいろとは誰も願わなかったようで。

 だからか、美衣の受け入れが可能であった。



 神になった塔主は、塔の淵から地上を見つめる。

 星々のように灯りが瞬く、地上を。



「みっちゃん、オレね、誰も許す気なかったんだよ、最初は」

「龍臣」

「オレを聖人扱いしていた刃鐘さんも、忠臣を傷つけた白鴉も、刃鐘さんを塔主にした斉さんも。――先祖であり全ての原因である、黒鳩もさ」

「うん、そうね、それは……しょうがないかも」

「でも、さ。そうやって皆、誰かしら誰かを許さなかったから負の連鎖ができたんだよなって思った。一度許すのは難しいけれど、――誠心誠意何かするのなら、許してもいいやってなったんだ」

「――つくづく、食えねぇ奴だよね、龍臣って」




 雲が塔を覆い隠す――誰にも見えない、しかし、確実に存在する塔を。

 塔はこれからも願いを、龍臣の願いを死ぬまで叶え続けるだろう。

 しかして、龍臣はいつも心に誓うのだ。


「自力で全部が自分次第や、時の運で叶えられますように」


 龍臣は、目を瞑り、ごうごうと揺れる雲に紛れ、過去に千湖や彦が歌っていた歌を美衣と歌う。

 塔からの歌は、塔で繋がった者だけが聞こえ――歌声に安堵するのだ。


 今日も、世界は、龍臣の願いのお陰で「日常」を迎えられると――。





視点が纏まった奴をいつかまた改稿したいものです。

最後まで読んでくださり有難う御座いました、またどこかでお会いしましょう。

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