第九話 龍臣の混乱
「龍臣どうしたんだい、腑抜けた面して」
「幼馴染みの急な告白に、頭が追いついてないんですよ、ずっと塔に戻ってからこうなんです。妨害するって約束でしたのに」
二人の声は聞こえてる。
あれからひとまず塔に戻って、策を練ろうと思った。
完全に美衣は警戒しているから。
美衣をまず妨害したいなって思っていたのだが、美衣は何が何でも登る気だ。
あれは、言っても聞かない顔だ。
彦を応援する気持ちが一切合切分からない、千湖を見る限りは彦は良くない奴なんだろう。
黒鳩も彦を良くない者の扱いをしていた。
――美衣からすれば、たった一人の味方で、たった一人の応援者なんだよな。
それなら、信じるのも当たり前だ。オレだって少なくとも千湖を疑ったりなんてできない。
じゃあ。
それなら。
あの時、行くなって言えたのに――オレはまたしても、言葉を見失った。
告白よりも、止められなかった自分の情けなさにずっと悔やんでいる。
(美衣の精一杯の告白を、どうしてオレは――真っ先に何かを、思わないんだ)
喜んだり、嫌がったりとか感情があってもいいだろうに。
それは、きっと、オレが――考えるのを嫌がって、また逃げているんだ。
言葉にできない、言葉を使うことへの勇気と同じで、今それを考えれば美衣との関係性が変わるのを畏れてるのもあると思う。
告白に、有難うや、ごめんなさいと言えてたら、あの表情は何か変わったのだろうか。
それとも、止められただろうか。
「龍臣、大丈夫だよ、まだ止めるチャンスはきっとあるさね――」
「……――うん。千湖、ねぇ聞きたいことが……――」
塔が揺れる。
一瞬何か圧迫される感覚がしたかと思えば、手すりに掴まって、塔の揺れから身を守るために千湖がオレを支えていた。
千湖の豊かではない胸の感触がする。
「何だい!? この揺れは――」
「あ~あ、大変だ、やれやれ塔主様はお忙しくなりそうだ」
黒鳩が窓の淵に立ち、何かを見つめている。
黒鳩が窓から退けば、カーテンを捲り、何に驚いていたのか見せてくれる。
地上から生えてくる、巨大な柱のようなもの。遠目に見れば柱そのものだが、他の近くにある建物の様子を見れば判る、あれは塔だ。
――新たな塔の出現。
「塔主様――どうかどうか」
新しく生えた塔は真っ黒で、美衣や忠臣の塔は真っ白だ。
一体どうなってるのか――。
「どうか、願いなさるな。他にも、塔主体験者が出ろ、と」
第一章終わり




