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二話 「転生者のいらない社会」
テーブルに置かれたカップからは湯気が立ち上り、紅茶の香りが広がった。
季節は春。今日の気温は高くはなく、家に入ると影になるからか、カナデは少し寒く感じた。彼女はカップを手に取って、紅茶を口にする。茶葉の香りが鼻腔をくすぐる。
「あ、これおいしいですね。やっぱり、この世界のものって、ハズレもあるんで心配だったんですけど」
「そうだよね。そのお茶は王侯貴族にも出されてる、由緒正しいものらしいよ。交渉に行った先の農家から買った」
「それじゃあ、交渉は上手くいったんですね」
「どうにかね」
コウジは自信なさげに言った。
革命軍の旗印にもなっているコウジの役割は、王国の産業を支える人々と交渉し、革命派へと参入してもらうこと。今回の茶畑は王国の一次産業では大部分を占めている産業であり、茶畑農家との交渉が成功したことは、革命にとって大きな意味を持つ。
「また近づいたんだ……転生者のいらない社会の形成に」
「まだまだだよ。魔王のこともあるからね、慎重にしないと」
コウジはカップを手に取ってお茶を飲んだ。