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26.意地を賭けた勝負?

 バトル開始直後、「ドーン」とオレは手の動きに合わせながら言った。


 刹那、クロノスさんの足元から火線が立ち上がり、直後の大爆発が光の粒子と化したクロノスさんを掻き消した。

 全MPを注ぎ込んだ超火力火柱(ファイヤストーム)である。


[Winner ジン]


 とインフォが闘技場に鳴り響く。


 客席の最前列にニケさんと二式葉の姿だけがある。


 クロノスさんのアバターがそこに転送されたのが見えた。



「まだやりますかー?」


 結構、距離があるので大声で尋ねる。


 ニケさんが首を横に振るのが見えたので、メニューを操作し客席へ移動する。



「何だ? 今のは」


 二式葉が聞いて来る。


「全MPを使った最終兵器」

「何故、昨日は使わなかった?」


「え、使ったら試合にならないし」


 ドヤ顔で言ってやった。


 クロノスさんは、観客席で真っ白に燃え尽きている。

 ニケさんは、そっとその頭を撫でている。

 イチャイチャしないでくれるかーい?


「ほぅ、面白い事を言う。何ならもう一度立ち会ってみるか?」


 肩をすくめ、首を横に振る。


「こちらの手の内は全てバレている。

 もうオレに勝ち筋は無いと思う」


「どうだかな」


 二式葉は、ニケさんに向き直り「そっちの用事は終わったか?」と尋ねる。


 ニケさんは手を振ってそれに答える。


「よし、次はこっちの番だが……場所を変えるか」


 二式葉が、小さく溜息を吐きながら言った。



■■■



 闘技場をあとにした、オレと二式葉は近くにあった食事屋に入った。

 そして、個室で二人、メニューを睨んでいる。


「何故、ここを選んだ?」

「一番近かったから」


 メニューを捲りながら答える。よく見ず入ったが中華料理専門店だった。


「オレは、他人の目を気にせず会話できる所なんて、メシ屋の個室ぐらいしか知らない」


 まぁ他に、宿屋とか先程の闘技場とかあるけど、どちらもあまり会話をするような雰囲気の場所ではない。


「別に他人の目なんか気にする必要ないだろう。外で十分だったのに」

「あのね、どんな用件かしらないけど、外でイベントのトップ2が呑気に会話なんかしてたら、野次馬集まって大変だと思わない?」

「そうか?」

「そうなの。決めた。そっちは? 支払いは別々で」

「お茶だけでいい」

「わかった」


 餃子と炒飯、麻婆豆腐と、烏龍茶を二つオーダーする。

 すぐに店員が、テーブルの上にオーダーした品を並べる。



「いただきます」


 と言って、一人食事を口に運ぶ。

 変な鎖に口元を邪魔されること無く、食事が楽しめる! 素敵!


「で、用件って何?」

「あ、ああ、その前に飲み物を取ってくる。少し失礼する。イタズラするなよ」


 と言って、二式葉が目を閉じ、動かなくなる。



 『離席モード』。ログアウトせずに、VR(この世界)への接続を遮断する方法だ。飲み物を取ってくると言ったのは、リアルでの話か。



 一分もしなかっただろう。


「待たせた」


 と言って、二式葉が戻ってきた。


 右手をテーブルの上におき、左手で烏龍茶を右手に持たせるように動かす。


 『部分接続パーシャルダイブ』。

 思考に合わせ、現実世界での身体、仮想空間のアバター体両方が同じ動作をするようになる。


 今の二式葉は、現実の右手にも飲み物を持っているのだろう。

 烏龍茶を口に運び、一口。満足そうな顔をする。


 音声だけを同期させての会話も可能なはずだが、その場合、アバターの身体が一切動かないのでマネキンと喋っているような感覚になる。

 その辺は気を使ったか。



「ふぅ……そうだ。用件だったな」

「ああ」

「一ヶ月後のイベントだが、一緒に参加して欲しい」


 意外な提案だった。


 悪い話ではない。相手は闘技大会優勝者、その実力は折り紙つきだ。


「目標は?」

「優勝」

「他のメンバーは?」

「いない」

「アテは?」

「無い。と言うか、二人では駄目なのか?」


 問われて、腕組みをしながら暫し考える。

 次のイベントは、パーティバトル。通常であれば6vs6の戦いになる。

 二式葉はともかくとして、オレの方は手の内がバレている。【瞬間移動】も無い。

 そんな相手にオレだったらどう戦う?

 まず、速攻でオレに攻撃を集中させて沈める。そうなると6vs1だ。いくら二式葉と言えど、落とし様はある。


「厳しいな」


 二式葉が無言で睨む。どうも、納得していないようだ。



 オレは今組み立てた戦法を説明する。


「1vs6だろうが、勝つ自信はある」

「いや、そんなに甘く無いだろう。例えば、さっきのオレの呪文、アレを食らっても平気か?」


 クロノスさんの闘いを例に出す。


「……耐えるのは無理だな。受ける前に沈める」

「そこまで自信があるならオレじゃなくてもいいだろ。何なら一人で出ればいい」

「一人はダメだ」

「何故?」

「……ぼっちすぎる。余に惨めだ。だから君に声を掛けた」


 それは、まぁ、確かに。


「一緒に出てくれそうなフレンドはいないのか?」

「いない。ゲーム内まで人間関係でストレスを抱えたくないから極力作らないようにしている」


 まぁ、分からんこともないが。


「とは言え、オレの方もそんなにフレンド多くないしな」

「待て。人数増やす前提なのか?」

「さっきから言ってるだろう? 二人では厳しい」


 納得していない様子だ。


「何で二人にこだわるんだ?」

こだわっている訳ではない。ただ、弱い奴のフォローはしたくない。

 だから知る限りで一番強い君に声を掛けた」


 絶句。

 互いの短所をフォローし、長所を活かして戦う。それがパーティバトルじゃないのか?


「無理だな。諦めろ。それか一人で参加しろ」

「嫌だ」

「勝てない大会に参加しなくても、ソロ最強で良いだろ」

「優勝したい」

「無理だっつーの!」


 もう、一人で参加しろよ。面倒くさい。

 溜息が漏れる。



「飲み物を取ってくる」


 と言って二式葉は再度離席状態となる。


 この隙に逃げるか?

 会話の最中に、メッセージが届いたので、確認する。

 ニケさんから[さっきの対戦、動画撮ったんだけど他の人に見せてもいい?]と来ていたので、[どうぞ]と返信する。

 あ、もう戻ってきた。


「何で、そんなに優勝したいんだ?」

「お、出る気になった?」

「参加はしたいさ。オレも今の所、メンバーにアテがある訳じゃ無いから、悪い話だとは思わない。ただせめて、あと二人くらいは必要だと思う」


 そう。

 あと二人、盾役と回復役が居れば何とか体裁も整う。

 ある程度は、やれる気がする。


「理由か。

 意地かなー? 折角、優勝したんだから、次もそうしたいかな……」


 歯切れが悪くなった?


「他には?」


 まだあるはずだ。


「……賞品」


 こっちが本命か?

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