↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/20

朝

湖から戻るころには、陽が木々の向こうへ傾き始めていた。


リズは釣り竿を肩に掛け、一匹だけ釣れた魚を提げて小屋へ向かった。


木々を抜けても、外に出してある椅子にアルゲンの姿はなかった。


扉を開けると、卓の脇にアルゲンが座り込んでいた。足元には本が落ち、右手で口元を押さえたまま、身体を折るように咳き込んでいる。


指の間から血が落ちていた。


「じじい」


リズは魚と釣り竿を入口に落とし、駆け寄った。


アルゲンは顔を上げたが、また咳き込んだ。


「待ってろ。医者を呼んでくる」


立ち上がろうとしたリズの腕を、アルゲンが掴んだ。


「やめろ」


「だって、こんなに血が出てる!」


アルゲンは答えず、荒い息を繰り返していた。やがてリズの腕を放し、袖で口元を拭う。


「わかっていただろう」


リズは何も言わなかった。


咳が収まると、アルゲンは卓へ右手をついた。身体を起こしかけたところで力が抜け、再び床へ腰を落とす。


「肩を貸せ」


リズは横へ入り、アルゲンの右腕を自分の肩へ回した。


腰へ腕を添えて立たせると、その重さに足がよろめいた。アルゲンも床を踏み、二人でゆっくり寝台へ向かった。


途中で何度か足を止めながら寝台までたどり着くと、リズはアルゲンを腰掛けさせ、そのまま身体を横たえた。


寝台に横になっても胸は大きく上下していたが、呼吸は少しずつ静かになり、そのまま眠りに落ちた。


リズは寝台の脇に座った。入口には魚と釣り竿が落ちたままで、床にはアルゲンの本も開かれている。窓から入る光が薄れ、小屋の中が暗くなっても、リズはそこを動かなかった。


夜が深くなったころ、布の擦れる音がした。


「じじい……?」


アルゲンは目を開けていた。


寝台の脇にいるリズへ目を向けた。


「ガキ……」


アルゲンは右手を持ち上げ、リズの方へ伸ばした。


リズは寝台へ身を寄せ、その掌に自分から頭を預けた。


アルゲンの指が白い髪に触れ、ゆっくりと後頭部へ回る。リズはそのままアルゲンの胸元へ寄った。


小屋の中に静寂が流れた。


「死ぬ気になったか?」


リズはアルゲンの胸に頭を置いたまま、すぐには答えなかった。


「……わからなくなった」


アルゲンは何も言わず、リズの髪をゆっくり撫でると、静かに息を吐いた。


「それでいい」


リズは頭を上げなかった。アルゲンの手も白い髪に触れたまま、二人はそれ以上何も言わなかった。


窓の外が白み始めたころ、リズはアルゲンの胸に頭を置いたまま、一人で朝を迎えた。

一章はここで終わりです。二章からはリズの物語になります。骨組みや細かい設定は作ってますが、反応があれば続きは書こうかなと思ってます。

今のとこは、とりあえずエピローグをちょっと出そうかな・・・くらいです


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。