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ブラックな冒険者パーティを脱退した俺は自由気ままに誰かの役に立ちます~このレンジャー、いろんな意味で凄かった件~  作者: カワチャン
エピローグ

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第220話 今日もこれからも自由気ままに

本編はこれにて最終回となります!

「……よし!」


 エレミーテ王国騎士団遊軍調査部隊の隊舎近くにある寮の一室、朝焼けが部屋を朱に染める中で俺は愛用の装備を身に纏い、旅立ちの準備を整えて扉を開ける。


「んん〜っ! 絶好の外遊日和だな!」


 眩い朝日を浴びながら、俺は一歩を踏み出す。

 今日はエレミーテ王国の勇者パーティの仲間と共にかつて魔王リザエラ討伐に協力してくれた魔族の少女ファミーナが治める魔族領へと赴く日だ。


◇——


「もう行くんだな、リュウト」

「はい。行ってきます」

「しばらく顔が見られないと思うと、やっぱり少し寂しいものだな」

「とは言っても、せいぜい一ヶ月程度ですよ」


 穏やかな光が差し込むエレミーテ王国騎士団遊軍調査部隊の隊舎前。

 モーゼル隊長やソフィア副隊長をはじめ、仲間たちへ旅立ちの挨拶を交わす俺の元へ第六班のゾルダー班長とシーナ副班長が歩み寄ってきた。


「リュウト、どこへ行こうとお前自身を貫けよ!」

「帰ってきたら、美味しいお酒でも飲みながらいろいろと聞かせてよね!」

「もちろんです。楽しみにしていますよ!」


 二人の激励に微笑むと、今度はトロンとアンリが駆け寄ってくる。


「寂しくなりますけど……リュウトさんがいない間に僕はもっと強くなってみせます!」

「私も!次にお会いするときは、もっと成長してみせますから!」

「ふふ、二人とも……頼もしいな。期待してるよ」


 俺が二人の頭を撫でると、まるで尻尾を振る子犬のように無垢で晴れやかな笑顔を咲かせた。

 やがて出発の刻限が訪れる。


「では、行ってきます!」

「おう、気をつけてな!」

「無事の帰還と良き報せを待っているわ!」


 温かな言葉と視線に見送られながら、俺は一歩を踏み出し、慣れ親しんだ隊舎を後にした。


(どんなに遠くへ離れても、どんなに大きな肩書きを背負っても……あなたがあなたである限り、私はその背中を見失わずに追いかけ続けます。そしていつか、隣で肩を並べて戦えるくらい立派なレンジャーになることを諦めませんよ。リュウトさん)


◇——


「本日はお見送りに来ていただき、本当にありがとうございます」

「何のことはございませんよ」


 王都エメラフィールの城門前にはちょっとした人だかりができていた。

 ずらりと整列した騎士たちの先頭にはエレミーテ王国騎士団の頂点に君臨するシュナイゼル団長が威風堂々とした佇まいで控えている。

 そして、見送りの中心に立っていたのは――。


「この王国に、ひいては世界に新たな平和の歴史を刻まんとする勇者パーティの皆様をお見送りすることこそ、わたくしの果たすべき大切な役目ですわ」


 エレミーテ王国の第一王女殿下、セレーヌ様であった。

 王族ならではの確かな気品を漂わせる彼女と固い握手を交わしているのは勇者パーティのリーダーであるシャーロットだ。

 そのすぐ脇には俺とメリス、ロリエやジャードも並び立っている。


「そろそろ、出立のお時間になりますわね」

「はい! 行って参ります!」


 約束の刻限が迫り、俺たちはフォーペウロおよび魔族領との外交視察へ向かう馬車へと乗り込んだ。

 車輪が重々しく転がり始め、城門の風景がゆっくりと遠ざかっていく。


「いってらっしゃいませ! どうかご無事で!」


 セレーヌ様の言葉を皮切りに、一斉に胸へ拳を当てる騎士たちの美しい敬礼と集まった民衆からの温かい手振りが俺たちを包み込んだ。


「「……」」


 俺とメリスは窓枠に手をかけ、王都の景色が完全に見えなくなるまでずっと城門の方角を見つめていた。

 群衆の少し後ろ、目立たない位置に立っていた二人の姿。

 メリスの姉であるセアラ様と俺にとってかけがえのない仲間であるリリナ。

 立場上、直接言葉を交わす時間はほとんど持てなかったけれど、視線を交わした一瞬で伝わってきた。

 「気をつけてね。必ず元気な姿で帰ってきてね」という無言の祈りが今も胸の奥を温かく満たしている。


◇――


 馬車は舗装された街道を抜け、青々とした木々が連なる街道沿いの森林地帯へと差し掛かっていた。


「……」

「どうしたの、リュウト?さっきからずっと外を眺めているけれど……何か見えた?」

「ええ。何だか、じっとあの森林を見つめていらっしゃいますね」


 隣に座るシャーロットとメリスがどこか興味深そうに顔を覗き込んできた。


「いや……馬車からあの森林を眺めていたら、ふと思い出しちゃってさ。エレミーテ王国騎士団遊軍調査部隊に入る直前の俺を」

「「え?」」


 シャーロットとメリスが綺麗に声を重ねて目を丸くし、向かいに座っていたロリエとジャードも興味深そうに身を乗り出してきた。


「それって、あんたが冒険者を辞めた直後のことかい?」

「ああ、そうだよ」


 ロリエの問いかけを皮切りに、脳裏に怒涛のように過去の記憶が蘇ってくる。

 冒険者パーティ『戦鬼の大剣』に六年間在籍した末、当時のリーダーだったガルドスたちとの埋めようのないすれ違いの果てに俺はパーティ脱退を決断した。

 路頭に迷いかけた俺に手を差し伸べてくれたのは顔見知りのギルド受付嬢であるリサさんであり、彼女の紹介を経て、俺はエレミーテ王国騎士団遊軍調査部隊へと転職したんだ。

 アンリやトロンと初めて出会ったのも、まさにあの森林だったんだよな。


「部隊に入ってからは本当に驚きと試練の連続だったよ。いろんな意味でな」

「ふん、察するに余りあるな」


 ジャードが腕を組み、豪快かつ気さくに頷く。

 冒険者時代とはまるで異なる「組織としての騎士の仕事」に新鮮なやりがいを覚えつつ、俺は新しくかけがえのない仲間たちを得た。

 大型魔物の調査クエストだけではない。

 負の感情に支配された末に魔族へと堕ちてしまったガルドスとの壮絶な決着。

 『戦鬼の大剣』時代の元仲間であったアキリラやビーゴル、そしてリリナとの和解。

 加入して間もないというのに、死線を潜り抜けるような濃密すぎる日々だった。


「それからなんだよな。シャーロットたちと出会ったのは」

「そうね……あの遠征が始まりだったのかもね」


 部隊で平和な日々を過ごしていた頃、俺は勇者パーティのシャーロットたちと運命的な出会いを果たした。

 伝説の神武具セレスティアロを手にするための遠征に同行した際、魔王軍幹部の一角であり、俺の前任レンジャーであったクラークを再起不能に追い込んだ因縁の宿敵のギルダスと激突。

 死闘の末に勝利を収め、導かれるようにその神武具セレスティアロが俺の手に収まった時の衝撃はまさに天地がひっくり返るような心地だった。

 同時に明かされたのは俺の中に流れるシャーロットと同じ初代勇者の血脈。

 それが決定打となり、俺は正式に勇者パーティの一員として迎え入れられたのだ。


「わたくし……いえ、わたくしたちにとって、リュウトさんと出会い、共に旅をすることになったのは……間違いなく神のお導きでしたわ」

「そうかな?」

「ええ、絶対にそうです」


 メリスは胸にそっと手を当て、愛おしそうに瞳を細めた。

 勇者パーティに加わってからの旅路は本当に厳しかった。

 死と隣り合わせの魔王軍との戦いや過酷な自然環境、時には仲間の心が折れそうになるほどの苦難。

 だが、その度に俺たちは手を取り合い、背中を預け、互いを励まし合って乗り越えてきた。

 だからこそ、俺たちは魔王リザエラを打倒し、世界に平穏を取り戻すことができたのだ。

 魔王の義理の娘でありながら、人間との共存を切望していた魔族の少女ファミーナの夢を叶えるための架け橋となる役目をも俺たちは担うことになった。

 自分を取り巻く、あまりにも劇的な変化と今の立ち位置を思い返し、俺は思わず苦笑交じりにぼやいてみた。


「もしも、以前のパーティを脱退したばかりの頃の今の俺を見たら、『随分と偉そうに出世したもんだな』って皮肉られるかもしれないな。……なんてね!」

「「くふっ。アハハハハッ!」」

「ハッハッハッ!」

「うふふふふっ」


 おどけてみせると、シャーロットとロリエが弾けたように笑い、ジャードが腹を揺らして豪快に笑い、メリスが上品に口元を抑えて微笑んだ。

 自分で言うのも変だが、『戦鬼の大剣』を脱退したあの日、もしもそのまま失意の中で冒険者を続けていたら……今の俺は絶対に存在しなかった。

 自分が何のために戦い、誰のために生きるのかさえ分からないままに生きていたかもしれない。

 あの日味わった絶望と挫折があったからこそ、俺は今の温かい居場所と誇れる仲間たちに巡り会えたのだって思う。


「だったらさ!あたしたちの手でこれからもっと新しい時代を切り拓いていくってのも面白そうじゃない!?せっかくの機会を得たようなもんなんだしさ!」

「それも悪くないな!」


 ロリエが不敵に口端を上げ、ジャードが太い腕を鳴らす。

もちろん、メリスもシャーロットもその瞳には強い意志の光が宿っていた。

 

「どれほど過酷な道のりであっても、わたくしは最後まで務めを果たす所存ですわ」

(リュウトさんが隣にいてくださるのなら……わたくしはどんな修羅場へでもお供いたします)

「私も全力で走り抜けるわ!生きるのも死ぬのも、いつだって一緒よ。リュウト!」

(恋の決着を着けるまで、絶対にあなたから離れるわけにいかないんだからね!)


「……ああ!」


 俺たちの旅や歩むべき物語もここで終わりじゃない。

 頼もしく、優しく、どこまでも真っ直ぐな仲間たちと共に同じ未来を目指して歩んでいけること。

 俺が手を差し伸べることで誰かの暗闇を照らす光となれるように、これからも続く果てしない道の中で己の誇りを胸に歩み続けながらこう思う。


 今日もこれからも自由気ままに誰かの役に立つ。……と。

最後までお読みいただきありがとうございます。


『ブラックな冒険者パーティを脱退した俺は自由気ままに誰かの役に立ちます~このレンジャー、いろんな意味で凄かった件~』の本編はこの話をもって最終回とさせていただきます!

不定期かどうかは分かりませんが、最終回の後やその前後で起きているだろう後日譚のようなお話も投稿できればと考えています。


評価はページの下にある【☆☆☆☆☆】をタップして頂ければ幸いです。


『面白かった』『続きが読みたい』と思っていただけましたら、下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします!


面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、コメントやレビューを頂ければ幸いです。


今後も応援いただければ幸いですので、よろしくお願い申し上げます!

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