第178話 【Sideメリス】愛おしいから…
久しぶりにメリス視点のお話です!
メリスの根底にある想いが明かされていきます。
わたくしたち勇者パーティは魔王リザエラを打倒するためにここまで来ました。
人間と魔族の融和を願い、その過酷な運命に立ち向かうファミーナさんと彼女の忠実なる下僕であるカリュミノさんと共に。
「スクロールリリース!ビッグフラッド!」
「「「「「オォオオオッ!」」」」」
「サンダーボルト!」
「「「「「ゴギャァアアアッ!」」」」」
魔王城の暗くも広い大広間に響き渡るのはロリエさんが放つスクロールによる災害のような激流とそれに溺れる敵軍の頭上から紫電が容赦なく降り注ぐ。
「フゥウン!」
「ハァアアアッ!」
「「「「「ガァアアアアッ!」」」」」
ジャードさんの大剣による重厚な一撃とカリュミノさんの神速に近い剣閃が襲い掛かる魔王軍の雑兵たちの身体を次々と切り裂いていった。
「「「「「ワァアアアアッ!」」」」」
「ホーリーシールド!!」
背後から奇襲を仕掛けようとした雑兵たちの一撃をわたくしが生成した光の壁が阻みます。
金属が硬質の光に弾かれる鋭い音が響く。
「ブレイジングストーム!!」
紅色に輝く魔法陣からロリエさんによる紅蓮の業火を帯びた竜巻が放たれ、猛烈な熱風が広間を巡るように走り、魔王軍の雑兵たちを包み、焼き焦がしていく。
ふと視線を向ければ、ロリエさんの額には玉のような汗が滲み、呼吸も荒くなっていました。
「ふぅう……っ」
「ロリエさん!」
「あたしは大丈夫だから!メリスは自分のやるべきことに集中して!」
「……ハイッ!」
わたくしを安心させようとする彼女の強がりに近い気丈かつ力強い叱咤を受け止め、唇を噛んで頷きました。
わたくしが最後尾に立ち、バフを施されたジャードさんとカリュミノさんが力強くも合理的に立ち回り、すぐ近くのロリエさんがその強大な魔法で広範囲を殲滅していく。
これ以上ないほどに完成された陣形にもかかわらず、敵はまるで地面から湧き出す湯水のように次から次へと溢れ出してきます。
「勇者パーティを逃がすな!ここで一人残らず仕留めろ!」
「リザエラ様に、魔王軍に栄光あれ――!!」
功名心に駆られたような声が轟く魔王軍の雑兵たちの生きた洪水のような乱入。
それでも、確かな義務感に突き動かされながら、わたくしたちは終わりなきループのような激闘の中にいました。
「フィジカルアクティベーション!!」
「「うおっ!?」」
ジャードさんとカリュミノさんの肉体に、さらなる身体強化を上乗せします。
瞬時に筋肉が活性化するのを感じた二人はさらに苛烈な勢いで敵軍を蹴散らしていきました。
「メリス。あんたこそ無理をしてるんじゃないでしょうね?」
魔法の合間、ロリエさんがこちらを気遣うように声をかけてくれました。
わたくしは精一杯の微笑みを浮かべ、穏やかに返します。
「お気遣い感謝します。ですが、問題ありません。負けたくないのは……わたくしも同じですから!」
半分は真実だけど、もう半分は自分への言い聞かせ。
死線を共にする仲間たちに余計な不安や心理的な負担をかけたくない。
それはわたくし自身の剥き出しの本心でした。
あなたならそう言って、そう思いますよね。……リュウトさん。
わたくしは心の中で愛おしくて、今の自分を形作ってくれた大切な方の名前を。
この魔王城に乗り込むまで、いえ、ここに至るまでの過程において、リュウトさんの存在は自分自身にとって、そのあり方を大いに変えてくれました。
エレミーテ王国騎士団遊軍調査部隊の一員であり、優秀なレンジャー。
初めてお会いしたときはただ「頼りになりそうな方だ」という程度の認識でした。
ですが、同じパーティとして共に歩み、共に背中を預け合って死線を潜る中でわたくしの中の彼は少しずつ、確実にその存在が大きくなっていったのです。
聖女として引くべき一線。
それを超えてしまわんばかりの状態にわたくしは微塵の後悔も抱いておりません。
むしろ、彼を想うこの熱い痛みが、今のわたくしを支える力にさえなっているのですから。
「セイントストーム!!」
聖属性の魔力を帯びた白銀の嵐がわたくしの握るロザリオから展開した魔法陣から放たれました。
それは雑兵たちを滅ぼしていく。
「メリス!?」
「ちょっと、無茶はしない方が――!」
「いいえ!!」
ジャードさんやロリエさんの驚愕の声を、わたくしは毅然とした拒絶で遮りました。
向き合う敵軍から目を逸らさず、深く息を吸い込みます。
「ふぅううううっ……!わたくしは……まだまだ戦えます!この場所は、一歩も譲りません!」
様々な事情を鑑みた上で、この戦線を支える役割を引き受けたのはわたくし自身の意思です。
けれど、本心を言えば……。
リュウトさんと最期の瞬間まで、隣に立って戦いたかった。
リザエラを倒すためにはシャーロットさんやリュウトさんの力が必要不可欠であるのは間違いありません。
ですが、ファミーナさんの実の父であるギラドルス様から遺志を託された彼女が継母であるリザエラとの因縁に決着をつけたいという願いと純粋で痛切な決意を知ってしまったら、それを蔑ろにすることはできませんでした。
だからこそ、わたくしは何もかもを彼女たちに託したのです。
「はぁあああっ!」
歯がゆいような思いを抱きながら、歯向かう魔王軍の雑兵たちを倒し、食い止めていきます。
シャーロットさん、ファミーナさん、リュウトさんが先へ行く時、生きて戻って来て欲しいと叫びました。
全員に生きていて欲しいというその願いに嘘偽りはありません。
けれど、わたくしの心の心の奥の奥まで祈り続けているのはただ一つ。
「皆さん!」
わたくしは叫びました。
「必ず勝ちましょう!」
「「「オォオオオッ!」」」
ロリエさんとジャードさん、カリュミノさんは強い声で応えました。
どのような代償を払い、どれほどボロボロになったとしても、たとえ死の淵に足を踏み入れようとも、後になってどれほどの時間や魔力、労力を費やすことになってでも、五体満足まで癒すことをお約束します。
だから……どうか、無事に戻ってきてください。
生きて……わたくしにあなたの声を聴かせてください……。
……リュウトさん。
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