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ブラックな冒険者パーティを脱退した俺は自由気ままに誰かの役に立ちます~このレンジャー、いろんな意味で凄かった件~  作者: カワチャン
第五章 突入。魔王城!

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第175話 短いようで長いような合流

勇者パーティ全員が合流します!

「うぉっと……!?」


 足元が大きく揺らぎ、俺は思わずグラついた。

 視界を支配していた漆黒の膜に無数の亀裂が走り、巨大な鏡が粉々に砕け散るような耳障りで不吉な音が周囲に反響した。


「亜空間が……崩れていくのか?」


 魔王軍の幹部の一角であるバリオルグと俺は勇者パーティのロリエやジャードを含めた戦いを勃発させていた。

 その激しい戦いの末、俺たちはその一戦を制したのだった。

 すると、その直前まで覆っていた黒い亜空間がボロボロと崩れていき、その先に映っていたのは……。


「シャーロット!メリスにファミーナも!」

「リュウト……!?ロリエ、ジャードも無事なのね!?」


 分断されていたシャーロットたちの姿を見つけた瞬間、張り詰めていた心の糸がふっと緩みかけたのを感じた。

 ついさっきまで激しい戦いを繰り広げていた俺にとっても、いや、生き残った俺たちにとっては時間にして一晩にも満たないはずなのに、互いに死線を潜り抜けた今、その再会は数年越しの邂逅であるかのような重みを持って迫ってくる。


「……あぁ!こっちはどうにかな!」


 俺がそう言うと、駆け寄ってきたシャーロットの顔に安堵の色が広がった背後でロリエが少しだけ誇らしげに鼻を鳴らし、ジャードが笑みを浮かべる。


「結構苦戦したけど、何とか勝てたわよ。あのババリオルグってヤツ、本当に洒落にならない強さだったんだから」

「魔王軍の最高幹部ってのは伊達ではなかったな。俺の盾がなかったら、今頃全滅だったぜ」


 二人の軽口に一行の間に束の間の和やかさが流れる。

 だが、俺の視線はある一点で止まった。


「メリス。大丈夫か? 顔色が少し……いや、かなり悪い気がするんだが」

「えっ?あはは……大丈夫ですよ、リュウトさん。このくらいは何とも――」


 メリスは無理に微笑んで見せたが、その頬は土色になりかけては血の気が引いている。

 自分の限界を無視して、シャーロットたちのために力を注ぎ込んだのは明白だった。


「ロリエ。魔力回復ポーション、予備があったよな?できれば一番効き目が強いやつを」

「わかってるわよ。はい……」

「サンキュー、助かる!」


 俺はロリエから受け取った小瓶を彼女に手渡した。


「ロリエさん、リュウトさん……ありがとうございます。すみません、お言葉に甘えさせていただきますね」

「別にいいのよ。というか、あんたたちだってボロボロじゃない」


 ロリエの指摘通り、全員が満身創痍同然だった。

 幸い、周囲に敵の増援が迫る気配はない。

 魔王城の深部ではあるが、シャーロットの提案で周囲を警戒しつつ、俺たちは広間の隅で短い休息を取ることにした。

 俺たちは互いの戦報を共有した。


「なるほど……。そのバリオルグという幹部、そこまでの怪物だったのね……」

「あぁ。正直、これまで出会ったどの幹部よりも強かったって断言できる」


 俺の言葉を引き継ぐように、ジャードが愛用する盾のメンテナンスをしながら重々しく口を開く。


「本人の魔力や膂力はそうだが、グレイブによる斬撃や棒術の練度が非常に高かった。あれは武の研鑽だけに捧げた達人の業だったよ。俺自身、打ち合っていて背筋が凍る瞬間が何度もあったよ」

「ジャードがそこまで言い切るなんて、本当に本物だったのね」


 聞いているロリエが静かに呟く。

 思い返せば、パワーはもちろん、ヤツが得物としている漆黒のグレイブから繰り出される技の数々の練度が達人のように洗練されていた。

 ロリエの魔法でも中々大ダメージを与えられない黒い甲冑による防御力の高さもあって、相当に厄介だったな。

 自分で魔王軍最高幹部って言っていたけど、それらを鑑みれば、本当にそうかもしれないって改めて思わせる。

 俺はシャーロットにも話を聞いてみた。


「シャーロットたちの方はどうだったんだ?確か、メーディルと言ったか」

「ええ……。彼女もまた、恐ろしい女だったわ」


 シャーロットの隣でファミーナが静かに話し始める。

 ファミーナの語るメーディルの強さはバリオルグのそれとは質の異なる、底知れない闇の深さを感じさせた。


「そっちも……壮絶な戦いだったんだな」


 十数秒かかった沈黙の中、彼女がゆっくりと立ち上がる。


「メーディルとの戦い……そして、リュウトさんたちのお話を聞いて、改めて確信しました」


 彼女の双眸に宿るのは、一切の揺らぎを排した決意の光。


「魔王リザエラを討たない限り、人類との融和を夢見る魔族はおろか、この世界そのものに明日は訪れない。あの方はもはや、私が知っている存在ではない……。邪悪な器となってしまったあの人を止めることが私の……そして私の義務なんです」


 その言葉には義務感からでも、使命感からだけでもなく、目の前の少女が背負った過酷な宿命に共に立ち向かわかんばかりの意志が一つに結びついていく。


「だったら、尚のこと負けるわけにはいかないな。リザエラを止めて、全部終わらせよう」


 俺がそう言い切ると、シャーロットたちも腹を括ったような顔つきになった。


「ええ。これはもう、最初から決められていた使命だけの話じゃないわ。ファミーナたちが守ろうとしている本当の意味で平和を願う魔族たちの未来を切り拓くための戦いよ」

「そうよね!人類と魔族がいつか本当の意味で笑い合える礎をあたしたちが築くなんて、ちょっと英雄譚っぽくて悪くないじゃない?」

「ははっ、ロリエの言う通りだ!俺たちが新しい歴史の橋渡し役を担うってのも乙なもんだ!」

(シュナイゼル団長が見てたら、顔を真っ赤にして説教してきそうだがな)


 続くようにロリエとジャードも言葉を重ねる。

 それからメリスも言う。


「わたくしも勇者パーティの一員として、ここまでの旅路を歩んで来ました。今のような結果になるなんて思いもしなかったと言えば、嘘ではございません。ですが、本当に良い意味で新しい歴史を刻んでいくことも、なくてはならない役割だと思います。それを決めたのはわたくし自身です。天地神明の意で誓います!」


 仲間の言葉のその一つ一つが疲弊した身体に新たな熱を灯していく。

 それを見ていたファミーナが堰を切ったように言葉を零した。


「皆様……本当にありがとうございます。私はこれまで……人類との融和を目指していたお父様の遺志を受け継ぐことを自分の存在理由にしてきました。でも、どこかで……それを名目にして、自分たちの保身だけを考えていた。戦うことから逃げ、誰かが変えてくれるのを待っていただけの臆病者だったんです。でも、皆様と出会い、共に戦って、ようやく気づけました」


 彼女はぐっと顔を上げ、先の道を見据えた。


「今の私には守るべき仲間がいる。託してくれた命がある。……だから、もう二度と逃げません。リザエラを……私の母だったものをこの手で斃し、その悪しき野望を終わらせてみせます!」


 その言葉に、もはや揺らぎはなかった。

 俺たちは確信した。


 この絆がある限り、どんな絶望が待ち受けていようとも……俺たちは何度でも立ち上がれる。

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