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ブラックな冒険者パーティを脱退した俺は自由気ままに誰かの役に立ちます~このレンジャー、いろんな意味で凄かった件~  作者: カワチャン
第三章 魔王軍との戦い、本当の意味での死地へ

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第113話 【Sideシャーロット】荒れ狂う戦場

「ガァアアアアッ!!」

「フンッ!」


 魔族と魔物の軍勢を食い止めるために戦っているのは私とジャードとロリエ、フォーペウロ騎士団の連合軍だ。

 鼓膜を震わせる魔物の咆哮と肉を断つ不快な衝撃音。

 フォーペウロ北方に広がる荒野はいまや吐き気を催すほどの血臭と砂塵に埋め尽くされていた。


「オラァアッ!」

「ブレイズジャベリン!」

「「「「「ギャァアアアアア!」」」」」


 ジャードが振るう剣が迫りくる魔物の頭蓋を叩き割り、ロリエが魔法を的確に操りながら倒していく。

 魔族や魔物以外にもキメラと言われる魔王軍が生み出した合成生物が数体いるのもあり、拮抗状態になっていた。


「うわぁあああッ!?」

「ひ、怯むな!槍を……ぐぁぁっ!」


 騎士たちの悲鳴が荒野に響く。

 戦況を塗り替えたのは狂戦士と化した魔物たちの異常な変質だった。

 魔王軍幹部メルミネの魔鞭によって強化された魔族や魔物はもはや生物としての力を存分に引き出し、痛覚すら忘れて肉体を駆動させている。

 荒れ狂う魔族や魔物が突然のパワーアップを遂げたことで騎士たちを次々と傷つけていく。

 身体に傷を負っても、腕を斬り落とされてもなお、狂ったように突っ込んでくる魔族や魔物の光景に騎士たちの顔にも焦燥が伝播していく。


「オォオオオォッ!!」

「ドラゴンブレス!」

「「「「「ギャァアアアアア!」」」」」

「大丈夫?」

「動ける奴は負傷者を抱えて後退しろ!」


 ロリエが突き出した杖の先から猛烈な紅蓮の炎が渦を巻いて放たれ、文字通り龍の吐息のように迫りくる魔物の一団を飲み込む。


「……はぁ、はぁ。大丈夫か、ロリエ!?」

「どうにかね」


 ジャードが盾で強引に敵の波を押し返し、背後のロリエへ声を飛ばす。

 どうにかその場を凌いだものの、窮地を脱したとは言い難い。

 メルミネが施した強化は魔族や魔物たちに死さえ厭わぬ狂気を与えていた。


「クソッ。あの魔王軍の幹部のパワーアップはあんなに効くもんなのかよ」

「言えてるわね。正直、冗談じゃないわ……」


 ロリエは額の汗を拭い、険しい表情で自身の状態や魔力の残量を確認する。


「ジャード、もっと強力なのを叩き込むわ。……だから、もう一分。いえ、あと三十秒だけ時間を稼いで」

「三十秒だと?この乱戦の中でかよ……!」


 ジャードは血に汚れた剣と盾を握り直す。

 一対一ならともかく、狂った魔物の群れを相手にする三十秒は永遠にも等しい時間に感じられるだろう。


「……ハッ。無茶苦茶な要求だが、お前の魔法がなきゃ全滅確定だ。やってやるよ、任せな!」

「信じてるわよ」


 その中心になろうとしているジャードとロリエは再び奮起するのだった。


((どうか、勝ってくれよ!シャーロット!))


◇———


「アッハハハハハッ!ほらほらほらぁッ!もっと踊りなさいよ勇者様ぁ!!」

「ぐぅっ!」


 鼓膜を直接蹂躙するような、耳障りな高笑いが荒野に響き渡る。

 ロリエたちが戦う喧騒から少し離れた岩場で私は魔王軍の幹部の一角にして、軍勢を率いた中心人物であるメルミネと交戦している。


 彼女の振るう赤黒い魔鞭が振るわれるたび、シュパッ、という鋭い風切り音の直後に大気が爆ぜる。

 地面が易々と抉れ、雷鳴じみた破裂音が私の全身を震わせた。


「どうしたの?どうしたの勇者様!さっきまでの威勢はどこへ行ったのよ!?ちょっとあたしがパワーアップしただけで防戦一方じゃない!」

「くっ……!」


 メルミネの表情はもはや正気のそれではない。

 血管が浮き出たような禍々しい鞭は魔族や魔物の能力を底上げする道具であると同時に、使い手自身にも爆発的な力を与える禁忌の道具だ。

 自身の魔力を強制循環させているその肉体は一回り大きく見えるだけでなく、眼球はどろりとした赤色に染め上げ、捕食者のような気迫を剥き出しにしている。

 私も間隙を縫って斬撃を数度入れているものの、痛覚まで飛んでいるのか、メルミネは肉を裂かれても愉悦に浸った笑みを崩さない。


「ハァアアッ!」

「イィイイッ!」


 エクスカリバーによる鋭い横薙ぎが、踊り狂う魔鞭の隙間を縫ってメルミネの頬を深く切り裂いた。

 だが、彼女はその傷を気にかける様子もなく、裂けた頬から血を撒き散らしながら、袈裟斬りの軌道で鞭を叩きつけてきた。

 私は反射的に地面を統べるように紙一重で回避するも、その直後、背後の大きな岩が爆発したかのように粉々に砕け散った。


「……」


 私は握りしめたエクスカリバーに伝わる振動から、彼女の異質さを読み取る。

 鞭という獲物は剣や槍と違って軌道が一点に定まらない。

 放たれた一撃は空中で不規則に折れ曲がり、死角から頭を、あるいは足首を執拗に狙ってくる。

 肩の入り方や目線の動き、体幹や呼吸の揺らぎ、踏み込んだ足の指先の力加減など、それら全ての予兆を脳内で演算し、リズムを合わせなければ命取りになりかねない。


「ここだっ!」

「おっとぉ!」


 暴風のごとき連撃が一瞬だけ止まる。

 鞭がしなりの限界を迎え、引き戻されるそのコンマ数秒の空白、私は爆発的な勢いで地面を蹴り、一気に懐へと潜り込んだ。

 最短距離で放つ鳩尾への刺突。

 だが、メルミネは身体を捻り、刺突の刃を際どいところでやり過ごした。


「ヤァアアアッ!」

「ぐぅっ……!?」


 空振りした刺突の勢いを強引に回転エネルギーへと変換し、私は即座に追撃の逆袈裟を叩き込む。

 黄金の閃光がメルミネの胸元を斜めに斬り裂いた。

 流石に堪えたのか、彼女は血飛沫を撒き散らしながら後方へと大きく跳び退く。


「……はぁ、はぁっ……。やっぱり、あんたら勇者パーティって本当にウザいわね。あたしたちの……魔王様の邪魔をするのがそんなに楽しいわけ?」


 メルミネはその顔から一時的に狂乱の笑みが消え、底冷えするような憎悪が滲ませる。


「楽しいかどうかなんてどうだっていいわ。魔王軍の侵攻や暴挙を止めるのが私たちの使命よ。当然でしょう」


 私はエクスカリバーを中段に構え直す。


「おしゃべりは終わり。その歪んだ情熱ごと、ここで断ち切らせてもらうわよ」


 そう言い切った私は光の出力を静かに高めていく。


 分かる。決着の時は……すぐそこまで近づいている。

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