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ブラックな冒険者パーティを脱退した俺は自由気ままに誰かの役に立ちます~このレンジャー、いろんな意味で凄かった件~  作者: カワチャン
第三章 魔王軍との戦い、本当の意味での死地へ

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112話 因縁の終わり

悪しき因縁もここまでです!

 バアゼルホの大聖堂を支配していた狂乱の嵐が嘘のように止み、天窓から光が差し込んでいる。


「はぁ……っ、はぁ…………っ」


 俺と魔王軍の幹部の一角となったシェリーの戦いにピリオドが着いた。

 フォーペウロの王都にある大聖堂で勃発した死闘は俺の勝利に終わった。

 “破魔光の矢”を受けたシェリーは急所を穿たれたためか、漆黒の衣を纏ったその身体は今や力なく倒れ、指先ひとつ動かすことすら叶わない。


「はぁ……。っ、くっ!」

「リュウトさん!」


 極限まで張り詰めていた意識が弛緩した瞬間、猛烈な眩暈が視界を白く染め、膝が折れそうになったけど、何とかして踏みとどまり、それを見たメリスが駆け寄って来る。


「大丈夫ですか!?今、回復魔法を……!」

「平気平気。ちょっとクラッとしただけだから。それより……レイニース様たちは?」

「わたくしやレイニース様たちは大丈夫です。本当に大丈夫でしょうか?」

「大丈夫だって」


 シェリーとの戦いの中でどさくさに紛れて不意打ちを受けたメリスは傷ついていて、その戦いの中で隙を見つけては目ざとく狙っていた。

 戦場に卑怯もクソもないと言われても、されたらされたで不愉快になったのもまた事実だった。


「それにしても、魔王軍にはあのような武具を開発していたなんて……」

「ああ。何種類も保有や開発しているんだとしたら、相当に厄介だぜ」


 そう呟きながら、俺の視線は意識が今にも遠のきそうなシェリーの両腕に固定された二つのクロスボウへと向く。

 その威力や効果、汎用性、どれを取っても凄く、同時に脅威であり、それを最も実感しているのはやり合ったこの俺だ。

 一歩間違えれば、この床に転がっていたのは俺たちの方だっただろう。

 その事実がじわりと背筋を冷たく撫でた。


「シェリー・ベルローズ……」


 魔王軍の幹部の一人として相対する前から面識はあったものの、武具の性能を込みにすべきとしても、実力は相当高かった。

 思えば、俺が冒険者時代の時から現在に至るまで、シェリー・ベルローズの存在が俺や俺を取り巻く者に大きな影響や因縁をもたらしたと言っても大袈裟ではない。

 それがあったから俺は冒険者から騎士団の遊軍調査部隊に転職し、かつての仲間たちと再会し、勇者パーティの一人として魔王を打倒する旅に出ているって振り返れば、何とも皮肉な話だとも言えなくもない。


「……むっ?」


 思考を断ち切るように、シェリーの身体に変化が現れた。


「リュウトさん、あれって?」

「ああ。“破魔光の矢”を身体の中心に受けたんだ。直に死ぬだろう」


 シェリーの身体が末端から徐々に霧散しようとしていた。

 この現象を見るのは初めてではない。


「リュウトさん?」


 メリスの声をよそに、もう戦う体力や気力もないシェリーの下に俺が歩み寄る。


「……あぁ……」

「……」


 手が届きそうな距離まで行くと、シェリーは俺の方に顔を向けた。

 男を惑わせるような美しい瞳はもはや光を失いかけており、焦点も定まっていない。

 誰が見ても、その命は風前の灯火だった。

 俺は抜いた剣の柄を強く握りしめた。


「……シェリー。お前の過去や歩んできた道がどれほど険しかったのか、俺は知らない。だけど、同情するつもりもない。お前が魔王に魂を売った理由なんてどうでもいい。ただ、お前はフォーペウロを蹂躙し、俺の大切な仲間たちの人生を無惨に踏みにじった。死ぬこと以外で償う方法はねえ」


 正直、冒険者時代に俺がシェリーから直接的な被害そのものはほとんどない。

 だけど、かつて所属していた今はなき冒険者パーティ『戦鬼の大剣』の俺以外のメンバーであるリリナやアキリラにビーゴルに悪い意味で影響を及ぼし、リーダー格であったガルドスを弄んだ末に魔族に変え、最終的に命を落とす結果を招いた。

 いろいろあってパーティ自体は俺の決断で脱退したけど、それでも仲間だったし、楽しい思い出や苦楽を共有し合った。

 それをボロボロにするきっかけを作ったシェリーの顔を見ると、怒りが沸々と込み上げてくる。


「ふふふっ……」


すると彼女の唇が微かに動いた。 吐き出されたのは、血の混じった渇いた笑いだ。


「ふふふ……っ。引導を渡すのがリュウトだなんて……。笑えてくるわ」


 シェリーは自分がもう死のうとしているのに渇いた笑みを零した。

 自分の人生はここで終わりであることを悟っているようにも見える。


「人類なんて……所詮、私利私欲の塊……。傲慢で、醜くて……。自分の身が一番可愛いと本能で信じている愚か者……。私はそんな奴らにとっくに見切りをつけたのよ。こんな世界……いっそ、根こそぎ滅んでしまえばいいって……っ」


 それが彼女が見てきた真実であり、答えなのだろう。

 誰かに裏切られ、踏みにじられた果てに辿り着いた、絶望の結論。


「例え、私を殺しても……魔王軍を滅ぼしたとしても……。この世から悪なんて消えはしないわ……。また別の影が生まれて……牙を剥くだけ。あなたたちは永遠に……同じことの繰り返しを強要されるのよ……」

「……そうかもな。それでも俺は何度でも、大切な人たちのために戦うよ。何度でもな」


 俺は彼女を静かに見下ろしながら、断固とした口調で返した。

 握り締める剣でシェリーの身体を突き立てる。

 その時、身体が粒子となって霧散するペースが急速に早まった。


「……本当に、甘い男……。……ヘドが出るわ。……リュウト。そして、勇者パーティ……。その青臭い正義がどこまで通用するか……地獄の底から見守ってあげるわ……」


 その言葉を最後にシェリー・ベルローズの身体は完全に消え去るのだった。

 漆黒の魔弓も無へと帰っていく。


「終わった……のですね」

「あぁっ……」


 メリスの声に俺は深く頷いた。

 こうして、魔王軍の幹部の一角であったシェリー・ベルローズを討伐する俺たちなのであった。


 そして、俺や……『戦鬼の大剣』時代の仲間たちの間に刻まれた悪しき因縁に終止符を打ち、亡き友へと捧げる確かなケジメを着け終えた瞬間であることをしかと示す証を手にするのだった。

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