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ブラックな冒険者パーティを脱退した俺は自由気ままに誰かの役に立ちます~このレンジャー、いろんな意味で凄かった件~  作者: カワチャン
第三章 魔王軍との戦い、本当の意味での死地へ

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第111話 明暗を分けた一矢

決着の時です!

 バアゼルホの大聖堂で戦闘を続ける俺と魔王軍の幹部の一角であるシェリー。

 今も繰り広げるこの戦いは佳境を迎える。


「シュッ!」

「くぅう……ッ!」


 俺はセレスティアロから放たれる二本の弓矢を放ち、一瞬で弓を背負い、抜き放った剣を握り一気に距離を詰めた。

 シェリーは辛うじて身を翻したが、その回避行動には先ほどまでの流麗さは欠片もなかった。


「ハァアアッ!」

「ふんっ、しつこいわよ……!」


 二つのクロスボウから放たれる矢の数々を加速した俺の意識の中では、それらはもはや脅威と感じなくなっていった。

 矢が空気を震わせる微かな揺らぎを見切り、剣の腹で受け流し、あるいは最小限の身のこなしで回避する。

 剣の間合いへと強引に踏み込む俺に対し、シェリーは飛ぶような勢いのバックステップを刻んだ。

 だが、彼女の唇から余裕を帯びていた薄ら笑いは完全に消え失せている。


(馬鹿な……。どうなっているのよ、この男!?いくらセンスや技術が突出しているからって、この二つの連射に完璧に対応できるなんて、あり得ない。それに――)


 隙を突くように矛先をメリスたちに変えようとする仕草を見せても、そんな狡猾な悪意が彼女の脳裏をかすめるたび、俺の身体は考えるよりも早く反応していた。

 彼女の指が引き金を絞り込む前に、鋭い牽制の斬撃が彼女の狙いを次々と粉砕していく。


(私がやろうとしていることを瞬時に止められる……!ついさっきまで翻弄されていたはずなのに、何なのよ、この変わり様は!?)


「ここだっ!」

「ぐぅうううっ!!」


 数メートルの空間が開いた刹那、俺は再びセレスティアロへと持ち替え、“轟雷の矢”を放ち、その一矢がシェリーの右腕を深々と貫く。


「ああああああっ!!」


 稲妻がその身体と神経を焼き、全身を猛烈な麻痺が駆け巡る。

 数刻前まで優位に立っていたはずのシェリーが徐々に戦況を覆され、追い込まれていることを示すように頬が汗を伝い、焦りの色を見せ始めている。

 戦況の天秤は、音を立てて逆転していた。


「ふぅう……」


 深く、長く息を吐き出す。

 研ぎ澄まされた集中の世界の中、周囲の音が遠のき、ただ自分の鼓動と大気の中を流れる魔力の粒子だけが鮮明に感じられる。

 分かる。俺の中で眠っていた何かがこの極限の戦いを通じて殻を破り、羽化しようとしている兆候が。


「ふざけるなぁあああッ!」

「ッ!?」


 醜い怒りと絶望が入り混じったような絶叫を挙げながら、シェリーは鬼気迫る表情で俺を睨みつける。

 細い外見ながら、魔族の力を得た彼女のタフネスは常人の数倍あるのは間違いない。

 右腕を焼かれながらも、血走った眼で俺を見据え、折れない殺意を剥き出しにする。


「やっと……やっと私は力を手に入れたんだ!ここまで来て……お前なんかに邪魔されてたまるものかぁあああッ!!」


 彼女が残った左腕を高く天井へとかざし、強大な魔力が漆黒のクロスボウに収束していく。


「はぁああああっ!!」


 放たれたのは莫大な数の黒矢であり、それらは一旦天へと昇り、俺やメリスたちの方角へと降り注いでくる。

 その時だった。


「斜め上から来るぞ!」

「「ホーリーシールド!!」」


 俺がそう叫ぶと、メリスとレイニース様が光の壁を展開する。

 アルフラド団長も盾を掲げて彼女たちを庇うように立った。

 少し回復したのか、メリスの瞳には再び強い光が宿り、矢を弾き返していく。


「「ぐぅうううっ!!」」


 雨のように降り注ぐ矢の数々を凌ぎ切れている。

 すると……。


「むっ……!?」


 俺はシェリーの不穏な動きを気取ると、何かを感じる、いや、あってはならない光景が脳内に映った。


「隙ありよ……」


 シェリーは動かせないはずの右腕を赤黒い血を流しながら強引に前へと突き出し、放たれた二つの矢は完全に無防備となったメリスとレイニース様の胸元へと吸い込まれていく。

 聖女を討ち取ったと確信するようにシェリーは微笑を浮かべている。


 その攻撃が二人の命を奪う……。


「ハァアアッ!!」

「「ッ!?」」

「なっ……!?馬鹿なっ!!」


 ……ことはなかった。


 俺は一瞬の跳躍で彼女たちの前に割り込み、一本を左手のセレスティアロの端で叩き落とし、もう一本を右手の剣で弾き返した。

 ハッキリと確信した。瞬間的に()()()()()()()()()()のは俺のスキルであると……。

 次の刹那、俺は剣を手放し、咄嗟に“破魔光の矢”を番えて弦を引く。

 セレスティアロが歓喜に呼応するように、俺の身体と矢を神々しいまでの淡い光が包み込んでいく。


「私は……私が敗けることなど、あってはならないんだぁあああッ!!」


 敗北や屈辱を心から拒絶するような叫び。  

 シェリーもまた、左腕の魔弓に全ての魔力を注ぎ込み、漆黒の大矢を形成する。


(何のために……何のために私はあの時、悪魔に……。魔王様に魂を売ったと思っているの!?敗けたら私は……また、あの惨めで弱かった自分に……!)


 対する俺は心臓の鼓動を内側から感じながら、集中力を磨き上げてられる剣のような集中力を研ぎ澄ましていく。

 メリスとレイニース様も既に防御態勢を取っている。

 後は……俺が打ち勝つだけだ。

 一点を見極めろ。


 その思念を信じ抜きながら、俺は“破魔光の矢”を、シェリーの漆黒の矢を放つ。

 互いの中間地点でぶつかり合う。

 そこで一秒も満たない時間が経ち……。


「うぁ……」

「……終わりだ」


 空を裂いた光の一矢がシェリーの身体の中心を真っ向から貫いた。


「あっ……あぁ……」


 それを受けた彼女の身体は後ろへ地面に崩れ落ち、大の字となって力なく倒れ伏せる。

 戦場と化していた大聖堂に静寂が戻っていく。


 勝負ありだ。

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