第三幕 9
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シュアナの回復力は目を見張るものがあった。
二度目の集中治療が行われたその日には、傷は完全に塞がり、翌日にはベッドから出て動き出していた。今日はそれから三日目。一応リハビリという名目で入院は続けられているが、はっきり言ってもう入院は必要ないだろう。僕はシュアナをすぐに退院させるように、病院に頼み込んであった。
ところで、シュアナが動けるようになって、困ったことがあった。彼女は、暇だよー、と言いながら、病院中に探検に出掛け、あちこち歩きまわって、所構わず入り込むものだから、病院としても厄介者というか、邪魔者なのだった。だから、病院としても、シュアナの早期退院には乗り気の態度なのは有難かった。
実際、その日のうちに、外出許可という名目で、通院検査を条件に入院しなくともよい、という決定がなされた。僕は、そのあまりに役人らしい言い回しに苦笑を禁じえなったが、そんなことはどうでもいい。
早速僕はシュアナを外に連れ出し、軍人墓地へと来ていた。
「すごい数のお墓だね……?」
シュアナがキョロキョロ辺りを見回しながらつぶやいた。
手にはサーベルが、不似合いに握られている。
「うん。いつか世界中が墓に覆われそうだ」
ここだよ、と言って、まだあまり古ぼけていない墓石の並ぶ一画で立ち止まる。
「右二つの墓が、レミちゃんの両親の。隣の二つが、レミちゃんと、ミコチのだよ」
僕はシュアナに、新品の墓石を二つ、手で示しながら説明した。
「そっか……。ミコチもここに埋めてあげることにしたんだね……」
「うん。ミコチの故郷に返してもらおうかな、とも思ったんだけれど。ミコチの両親は彼女が軍人になることを望んでいたらしいし、軍人墓地でレミちゃんの隣で眠る方が良いかな、と思って」
「うん。それが良いよ……」
シュアナが入院しているうちに簡素な葬式が執り行われていた。葬式というよりも、ほとんど事務手続きに過ぎない短いものだったが。そして直ぐに埋葬も済み、僕たちは簡素な墓石を眼前にしている。
『反乱軍との戦闘に於いて殉死』、墓石にはこう彫られていた。彼女たちは官軍として死ぬことが出来たようだ。これで良い。彼女たちは、逆賊として死ぬことがなくて、本当に良かった。そう、思った。
「また帝都に来ることがあったら、絶対にお墓参りしようね……」
シュアナが静かに口を開いた。
「うん。きっとまた、来ることになる……」
僕は独り言のように答える。
シュアナがおもむろに、持ってきていたサーベルを、二つの墓石の間に橋を架けるように、そっと置いた。
「二人とも、本当に仲が良かったよね……」
「うん。毎日のように隣同士でくっついて眠っていたっけ」
「ちょっと……。こんな時に何言っているの?カイン君のエッチ……!」
「いや……」
シュアナが言う。
「これからもずっと、永遠に、隣同士……」
僕が答える。
「うん。もう、二人の間に入る人は誰も居ない」
「連れてって……、君の街へ」
シュアナが僕を見た。
僕もシュアナを見る。
「うん。これから君の街にもなる」




